「女性管理職のロールモデルだ」会社は手のひら返し…育休復帰で「部下37人→0人」にされた社員が選んだ行動
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誰にでも裁判沙汰になる可能性はある。社用チャットに職場の愚痴を書き込んでいたIT企業の女性は、会社側からテレワークの禁止とオフィス勤務を命じられたことをきっかけに、会社と争うことになった。また、外資系の大手企業に勤める部長職の女性は、育休明けに部下のいない電話営業を指示されたことで、裁判を起こすことになった。それぞれのエピソードを紹介しよう――。 ※本稿は、日本経済新聞「揺れた天秤」取材班『まさか私がクビですか? なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』(日経BP)の一部を再編集したものです。
「会社を辞めたほうがよいかと思います」社長からのメール
在宅勤務という新たな働き方は、互いの姿が見えない故にトラブルの火種もはらむ。社用チャットに職場の愚痴を書き込んでいたことを会社に知られた女性。テレワークの禁止とオフィス勤務を命じられ、応じられないとして退職した。出社命令は無効だと提訴した女性に対し、会社側は在宅での勤務報告に虚偽があったと訴え返し、双方の主張は真っ向から対立した。
会社を辞めたほうがよいかと思います――。2021年3月。午後3時半ごろ、いつものように自宅で仕事をしていた女性のもとに勤め先のIT(情報技術)会社の社長から1通のメールが届いた。添付されていた1枚の画像。開いてみると、自身と同僚がチャットツール「スラック」で交わしたメッセージの画面だった。
周囲の目の届かない環境が不満をエスカレートさせたのだろうか。「有休消化という概念はこの会社にはないんですかね」「育て方、下手ですよね」「馬鹿なの」。従業員規模300人ほどの社内で当時、女性の周りだけでも5人以上の社員が相次いで離職していた。高まっていた職場や社長への愚痴が当事者しか見られないダイレクトメッセージで飛び交った。
同僚の退職でスラックが社長の目に触れた
だが、やりとりをしていた同僚も退職することになり、会社にパソコンを返却。社長が中身を確認し、予期せぬ形で本人の目に触れた。「辞めるつもりはない」という女性に、社長は「これでどうやって信頼関係を築けばいいのか」とにべもない。その日の夜、「管理監督」を理由にテレワークを禁じ、オフィスでの勤務を命じる通知文が届いた。
女性はデザイナーとして営業資料などの作成を担っていた。フルリモート勤務で、20年5月に転職してからオフィスに出向いたのはわずか2回。夫婦共働きで子どもを保育園に送迎していた上、当時は妊娠中だった。埼玉県の自宅から東京都内の職場まで電車で片道1時間半かかる。女性は命令を拒んだ。
2週間後、会社側は無断欠勤が続いたとして女性を退職扱いとした。その後、自ら退職を申し出た女性は、出社命令は無効だったとして退職までの賃金支払いなどを求めて提訴。会社側は逆にこれまでの在宅期間を遡り、勤務時間の報告に虚偽があったとして給料の一部返還を求める反訴を起こした。