皇室が「悠仁天皇だけになる」よりマシだけど…「旧宮家を養子に迎える案」で起こり得る「憲政史上初の異常事態」
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安定的な皇位継承に向け、旧皇族の男系男子を養子に迎える案が各党の間で議論されている。皇室ライターの中原鼎さんは「皇位継承資格を持たない旧宮家を養子に迎えると、憲政史上初めて、天皇にならなかった『天皇の父親』が登場する余地が生まれる。安定的な皇位継承のためにも、この問題を軽視しないほうがいい」という――。
「旧宮家」からの養子案
令和7(2025)年3月10日、衆議院議長公邸に各政党・各会派の代表者たちが集まった。旧宮家の男系男子を「安定的な皇位継承」確保のために養子に迎えるという案をめぐって、協議の場が持たれたのである。
旧宮家の皇籍復帰案に対しては、民間人として長く過ごしてきたことから、国民に受け入れられにくいのではないかと懸念する声もある。
政府の有識者会議が「養子となって皇族となられた方は皇位継承資格を持たないこととすることが考えられます」と過渡的措置を提案しているのも、そうした意見への配慮に他ならない。継承資格を認めるのは復帰後に生まれてくる子世代からにしようというわけである。
皇籍復帰に前向きな勢力には自由民主党、公明党、国民民主党、日本維新の会などがあるが、3月10日に衆参両院が公開した資料によると、これらの党も継承資格を認めないという方向でおおむね一致している。実現するとしても、やはり継承資格が即時与えられることはないだろう。
さて、継承資格を与えないということは、万一その系統に皇位が移ることになってしまった際には、憲政史上初めての状況が生じる可能性がある。すなわち、一代飛ばすことによって、今まで登場する余地のなかった「天皇の父親」たる皇族が現れるという事態だ。
養子に継承資格を持たせないことを前提に議論するのであれば、まともに考慮されてこなかった皇父という存在について再検討したほうがよいだろう。