「コメが足りない」日本のために三菱商事が立ち上がった…世界規模の"主食の奪い合い"に勝つために組んだ相手
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食料供給網の不安定化が促す業界再編の動き
3月28日、三菱商事は、米穀物メジャー、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)と戦略的業務提携の覚書締結を発表した。ADMはプレスリリース(米国時間27日)で、三菱商事との協業は世界の食料事情の変化に対応するためと述べた。
近年、ウクライナ戦争の長期化や食料備蓄を増やす中国、トランプ政権の関税政策の影響で食料やエネルギー供給網が一段と不安定になっている。特に、トランプ政権の関税政策の行方は予測が難しく、三菱商事、ADMのような大手企業でさえ単独でのリスクテイクは容易ではない。
そうしたリスクに対応するため、穀物関係の有力企業同士の提携の意義は大きい。今回の提携で三菱商事は、大豆やトウモロコシ、小麦の輸出で世界シェア24.5%を誇るブラジルでの事業基盤を整えることになる。その意義は大きい。
現在、ADMの業況はやや不安定だ。そのため、ADMはリストラを実施している。今回の提携を機にADMは、三菱商事から中国やアジア新興国の情報を得ることができる。それによって、激化する貿易戦争の中で効率的に需要を取り込む体制を構築することも目指す。両社の提携は、世界の食料品事情の変化の中で、両社にとって円滑な業務運営に必要な要素になるとみられる。それだけ、世界の食料品事情が大きく変化しているということだ。
「ミサイルから即席麺まで」特異なビジネスモデル
元々、総合商社は、ミサイルから即席麺までといわれるほど取扱商品の範囲が広い。特に、エネルギー、鉱山、食料などモノの輸出入を担う能力は高い。三菱商事は、世界各国に駐在員事務所を設け、経済、政治、安全保障などの動向を調査し、需要と供給を迅速に結びつけ収益を上げてきた。
その特異なビジネスモデルや割安感を評価し、オマハの賢人と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は三菱商事をはじめ総合商社への投資を増やした。日本の総合商社は、世界の中でも特異なビジネスモデルといえるだろう。
第1次オイルショックが発生した1970年代、三菱商事は金属やエネルギー資源、穀物の仲介を主力事業に育て上げた。主に、供給者と需要者をつなぐこと(トレーディング)関連の取引手数料は増えた。2000年代以降、総合商社のビジネスモデルは投資を重視する姿に変身した。天然ガスの輸出基地、食糧貯蔵施設、洋上風力発電やデータセンターと幅広い分野で出資やプロジェクトへの参画は増えた。