いまの日本人のDNAは「大陸から来た渡来人」が9割…最新のゲノム研究でわかった日本人の意外なルーツ
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日本人はどこから来たのか。国立科学博物館の篠田謙一館長は「縄文時代から先住していた人たちのDNAは、現代日本人には1~2割程度しか残っていない」という。篠田館長に雑誌『プレジデント』の星野貴彦編集長が聞いた――。(前編/全2回) ※本稿は、YouTubeチャンネル「プレジデント公式チャンネル」で公開中の動画【9割は「外来種」日本人のDNA】の内容を書き起こし、再編集したものです。
縄文人と弥生人は何が違うのか
【星野】先生の研究では、「現代日本人のDNAの80~90%は、後から渡来した集団に由来する」という衝撃的な数字が示されていますよね。
【篠田館長(以下篠田)】これはゲノム解析の結果から見えてきた事実です。縄文時代から先住していた人たち(縄文人)のDNAは、今の日本人には1~2割程度しか残っていない。逆に言えば、私たちの大部分は弥生時代以降に大陸から入ってきた人々の子孫だともいえます。世界的に見ると、農耕民が狩猟採集民をゆるやかに吸収していくケースは多く、日本列島の歴史もその一例だと考えてください。
【星野】そう聞くと、日本人はむしろ“外来DNA”の塊という感じですね。
【篠田】私たちは純粋に一系統で続いてきたのではなく、いろいろな集団が混ざり合ってできたハイブリッドな存在なんです。そこが、DNA研究で明確になってきたポイントですね。
【星野】よく「縄文人と弥生人は違う種なの?」と疑問を持たれますが、そもそもどう捉えればよいのでしょうか。
【篠田】ホモ・サピエンスという同じ種のなかで、文化・形質・遺伝特性が異なる集団と考えてください。稲作が本格的に導入されるのが今から約3000年前の弥生時代ですが、このとき大陸から来た人々が、すでに列島にいた縄文人に比べて格段に人口を増やした。結果として、彼ら(弥生人)のDNAが主流を占めるようになったのです。
特に骨や遺跡から抽出した古代DNAを詳しく分析すると、弥生期のDNAは現代日本人によく似ている。一方、縄文DNAは10~20%程度しか現代に残らない。これはゲノムの観点から見ても、「弥生系が優勢だった」ことを示す代表的な証拠です。