フジ問題は中居正広の悪事だけで終わらない…テレビ局の常識になった「接待文化」「献上文化」の深すぎる闇
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フジテレビと親会社が設置した第三者委員会の報告書で、元タレント・中居正広氏による性加害が認定された。なぜこのような問題が起きたのか。元テレビプロデューサーの北慎二さんの著書『テレビプロデューサーひそひそ日記』(三五館シンシャ)から、テレビ局で続いてきた接待文化の一幕を紹介する――。
「性接待はある」元テレビマンの告白
某週刊誌の知人から、「芸人さんの遊びについて取材させてほしい」という連絡が来た。
2024年の春ごろのことだ。彼は、私がプライベートでも大阪の芸人と親しくしていたことを知っている。きっと松本人志氏のスキャンダルをきっかけに芸人の遊び方を記事にしたいということだったのだろう。
2025年に入ると、今度は中居正広氏をめぐって、フジテレビのプロデューサーが介在した性接待疑惑が持ち上がった。そのタイミングで再び同じ知人から「テレビ局員として知っていることがあれば教えてほしい」というメールがあった。
今、テレビ業界の裏側、そしてテレビプロデューサーの裏の顔が世間の注目を集めている。
週刊誌用にコメントを短くまとめられたのでは私の意は伝わらないし、友だちとの思い出を売るようなことはしたくないので、彼からの依頼は丁重にお断りした。だが、実際にネタはいくらでもある。
私は1980年代に、大阪のテレビ局「テレビ上方※」に入社して以来、プロデューサーとして情報番組や報道番組、バラエティー番組などの制作に携わった。その中で多くのタレント、芸人とも知遇を得た。
芸人と一緒に飲んでいると、先輩の指示で、後輩が女の子をナンパしに行くことがよくあった。しばらくして後輩は女の子を連れてきて、先輩に“献上”する。そこからどうするかは先輩の腕次第。先輩が逃してしまった女性を、先輩の目を盗んで後輩がこっそり“お持ち帰り”なんてシーンも目にした。
当時、心斎橋筋2丁目劇場の出演者たちは、グリコの看板で有名な通称「ひっかけ橋」でナンパをしまくっていた。それはファンのあいだでも有名だったから、ナンパされにくる女の子もたくさんいた。その中には「昨日、○○とHしてん。笑うぐらい下手くそやったわ。××のほうが全然うまかった」などと自慢している子もいた。あっけらかんとしたものだった。
芸人の悪さばかりが追及されるが、芸事の磁場に引き寄せられ、彼らに誘われたいと熱望していた女の子がたくさんいたのも事実で、現在の価値観で断罪することに意味があるとは思えない。
「接待」といえば、某タレント事務所の女性社長が、自社の女性タレントをスポンサー筋にあてがう現場も目撃した。
そして、そうした芸能界と二人三脚で疾走してきたのがテレビ局だったのだ。
※筆者注 登場するテレビ局名や番組名、タレント名については一部を仮名にしている。またプライバシー保護の観点から、登場人物の特定を避けるため、キャラクターを改変したり、脚色を加えた部分がある。