「高校無償化」で公立の約半数が定員割れ…「大阪モデル」が地方の教育現場にもたらす"悲惨な現実"

「高校無償化」で公立の約半数が定員割れ…「大阪モデル」が地方の教育現場にもたらす"悲惨な現実"

公立・私立を問わず、所得制限なしに、高校の授業料が無償化されることになった。教職員団体の山内省二さんは「無償化を先行実施している大阪府では、公立高校の定員割れと統廃合が進行している。機会均等のための政策というが、結果として教育の『二極化』が進んでしまうのではないか」という――。

「高校授業料無償化」で保護者は喜ぶが…

所得制限なしの「高校授業料無償化」が、突如4月から始まった。公立高校の現場では怒りと諦めが交錯する。保護者は家計が助かると喜ぶ。両者の格差が著しい。なぜか。

保護者が喜ぶのは当然だ。高校進学を控える子供がいるならなおさら。無料ただなのだから。公立/私立どちらを選ぶか。「設備が良い」「制服がかわいい」などは有力な選択肢になる。無論、私立に分がある。「総合的な探究の時間(総探)」で環境問題に取り組んでいるから公立を選んだ、なんて話はまず聞かない。そもそも「総探」が何なのか、認知度が低すぎて選択肢にすらならない。

「スクールバスでの送迎」――これも選択肢のひとつだ。筆者が住む福岡県内には、7路線でバスを走らせている私立高校もある。公共交通機関がない所にも送迎、と至れり尽くせりだ。

生き残りをかけ、私立高校の生徒募集は熾烈だ。少子化の厳しい中を戦う経営姿勢には恐れ入る。

私学系団体の猛烈な「ロビー活動」を目の当たりにしたこともある。

毎年11月頃、東京の自民党本部で次年度「予算・税制等に関する要望」の会合がある。同党組織運動本部と団体総務局が、衆参議員や省庁関係者とともに、複数の団体と意見交換を行う。私学系団体が多数参加。豊富な資料を基に、要望を伝える。

私学の猛烈なロビー活動と「地方公立の危機」

日本私立中学高等学校連合会が「経常費助成費」や「ICT環境の整備」などの拡充強化を要望していた。「就学支援金」に関して「教育の実質無償化は道なかば」と強く訴える場面にも遭遇した。3年前だ。

「高校授業料無償化」は、民主党政権下で2010(平成22)年に始まった。高校での学習機会の均等化を図るため、授業料を公立高校は不徴収、私立高校に同等額を就学支援金として補助する。年11万8800円×生徒人数分が国庫から私立高校に振り込まれる。当時、「理念なきばらまき」と批判したのは自民党だった。

自公政権となって所得制限を設け、低所得世帯への支援を厚くした。ところが20(令和2)年に大幅改定。4月入学の私立高校生の場合、年収590万円未満世帯に、年39万6000円の給付となった。

この改定で福岡の公立高校の志願倍率は1.15倍(前年比0.04減)に。中でも筆者の住んでいる筑豊地区は0.85倍(同0.11減)で、地区内11校中9校が定員割れを起こした。一方、福岡県私学協会は、「私立高校授業料実質無償化」と銘打ったテレビCMを連日放映し、私学専願は1477人と大幅増、多くの私立高校が推薦段階で定員を満たす。

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2025.04.07

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