平均30歳で会社を立ち上げ、42歳で億万長者に…「令和時代に大金を稼いでいる日本人」の共通点
Profile
日本経済が復活する可能性はあるのか。ジャーナリストのリチャード・カッツさんは「縮小しつつある大企業を優遇するだけでなく、成長力と雇用創出力がある創業5年未満の企業を支援することが必要だ」という。著書『「失われた30年」に誰がした──日本経済の分岐点』(早川書房)の序章より、一部を紹介する。
いまの人には「選択肢」がある
よいニュースがある。一世代を経てようやく、日本はストーリーを書きかえる力を蓄えた。表面上は、経済はどうしようもなく停滞し、政治はがっかりするほど反応が鈍い。しかし水面下では、6つの大きな潮流が生まれ、さらに市民社会で地殻変動も起きていて、希望がもてる。
大きな潮流には、世代交代に伴う考え方の変化、既存企業と新規参入企業のパワーバランスを変えるテクノロジーの変化、ジェンダー関係の変化、人口構成の転換による影響、グローバル化から受ける効果、そして経済成長の停滞に起因する政治的な緊張がある。
「祖父の世代はとても貧しい子ども時代を送っていたので、大企業で安定した仕事につければ天国でした」と、日本産業推進機構(NSSK)の代表取締役社長の津坂純は語る(2018年6月のインタビュー)。同機構は、東京に本拠をおく株式未公開会社で、中小企業の事業承継と経営向上を手がける。
「父の世代になると、サラリーマンは退屈でストレスがたまる仕事でした。でも、安定した生活を願うなら、ほかに選択肢はなかった。いまの人たちは、有名な大企業を離れ、積極的に新しい会社で新しい仕事をして、もっと充実した人生を送ろうとしています」
企業と社員のマッチングが課題に
最近億万長者(訳注/資産10億ドル以上)になった日本人、南壮一郎は、先にあげた大きな潮流の3つを体現している。世代の変化、テクノロジーの変化、グローバル化だ。
南は、インターネット通販の大手企業楽天の創設者である三木谷浩から、ビジネスは社会問題を解決する手段だと教え込まれた。そして、日本の終身雇用制度は成長を阻害すると考えた。
終身雇用制のもとでは、有名企業は中途採用をしない。そのため、大企業を退職して「新参者」の会社を立ち上げたり、そうした会社で仕事を見つけたりすることは、リスクが非常に大きくなる。新しい会社で失敗すると、前の仕事ほど実入りのよい仕事を新たに得られることはめったにない。これが、日本に革新的な新しい企業が少ないことの大きな理由だ。
それでも、能力が高い社員、とくに20代、30代の社員で進路変更を望む人が増えていて、中途採用に積極的な企業も増えている。問題は、そうした企業と人が知り合う機会をつくることだ。