「購入した商品が翌日届く」は維持できなくなる…物流業界にはびこる「デジタル嫌いの老害」という足枷
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物流業界の人手不足が深刻化し、これまでのサービス水準を提供するのが難しくなっている。物流ジャーナリストの坂田良平さんは「限られた人手で今以上の生産性向上を実現させるにはデジタル化が不可欠だが、50~60代の経営陣やドライバーが足を引っ張っている」という――。
当たり前が当たり前ではなくなる未来
トラック輸送は、私たちの日常を支えている。
EC・通販で購入した商品が、翌日には私たちの手元に届くのも、スーパーに新鮮な肉・魚介類・野菜・果物などが毎日並んでいるのも、トラック輸送の賜物だ。
ただし日本社会は今、トラックドライバー不足に起因する物流クライシスに直面し、トラック輸送に支えられた私たちの日常の維持が危ぶまれている。
もちろん、物流業界の心ある人たちは物流クライシスを防ぐべく、さまざまな対策を打ち始めているのだが、ここにきてある障害が注目され始めている。
それは、業界を蝕む老害である。
デジタル化の意義を理解しない老害経営陣
「紙と鉛筆が大好きで、ITに触れようとしてこなかった旧世代の運送会社の社長や役員たちが、偉そうに『システム導入をするならば費用対効果を出せ!』と言って、私たちの物流DXを妨害してくる。負けずに私たちはDXに取り組みましょう!」
中堅運送会社の役員がこのように挨拶をすると、大きな拍手が沸き上がった。
物流スタートアップのアセンド(東京都新宿区)が開催した「運送業DX勉強会」の懇親会でのことだ。
同勉強会では、運送会社の社内業務を大幅に効率化したDX事例を紹介した後、DX推進に悩む運送会社同士によるグループディスカッションを行った。
「デジタル化の有用性については理解しているものの、取り組み方法が分からない」といった悩みとともに、参加者の多くが吐露したのは、システム導入費用を承諾させるべく必要な社内説得に関する悩みだった。
「システムなんか導入しなくとも、今までどおり事務員さんたちにがんばってもらえばいいじゃないか?」
「システムがない今だって、特に不自由は感じていない」
ある参加者は、「運送業務のバックオフィス業務は年々増加していて、現状の事務員たちが処理できる業務量も限界を迎えつつある」と危機感を募らせる。
別の参加者は、「システム導入を社内提案すると、社長を含めた3名の役員が揃って反対する。この3名分の仕事なんて、システムでたやすく代替できるのに」と嘆く。