なぜ本屋に行くと運が上がるのか…グーグル勤務で気づいた「アマゾンより本屋に足を運ぶべき」納得の理由
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効率重視の時代にこそ、偶然の出合いが必要だ。本屋で運を上げるセレンディピティ活用法を聞いた。
30分間を過ごすだけでも膨大な知識とすれ違える
セレンディピティ(Serendipity)とは、予期せぬ出合いや偶然の発見がもたらす幸運のことです。休日にいつもと違う道を歩いて見つけたカフェがお気に入りの場所になったり、期待せず参加した飲み会で気の合う仲間が見つかったりした経験は、皆さんにもあるのではないでしょうか。
セレンディピティが生んだ発見や発明は数多くあります。実験中の副産物から生まれたX線、粘着力の弱い「糊の失敗作」から誕生したポスト・イットなどは、偶然を受け入れる柔軟さが新しい価値を生み出した事例といえるでしょう。しかし、日々を忙しく過ごしていると効率を優先してしまい、偶然や幸運を見落としてしまいがちです。
私が以前勤めていたグーグルでは、いつも膨大な情報の中から利用者に最適な情報を最短距離で提示する技術に力を注いでいます。アマゾンやネットフリックスも同様で、私たちが日常的に使っている情報サービスは、無駄をなくして効率を高めることを追求しています。生活は格段に便利になりましたが、一方で自分の興味のある情報ばかりが目に入ってくるようになり、日々の発見が少なくなってしまいます。
現代社会では、仕事で扱う専門性だけではなく、日常生活や幅広い分野での気づきを仕事に生かすことが求められます。だからこそ私は、「いつもと違うこと」をして、セレンディピティに出合う試みを提案したいのです。
私のおすすめは「書店」に行くことです。本は、企画から出版までに半年から数年かかります。著者が気づきを得て、編集者とともに練った知識や発想が、一冊の本に凝縮されています。
30坪ほどの小さな書店でも約5000冊の本が並んでいるので、計5000年分(1冊あたり1年でつくられた場合)の時間と知識が並んでいるのです。30分見て回るだけでも膨大な知識とすれ違うことができるでしょう。書店は「セレンディピティの宝庫」です。