こうしてSNSが日本の政治を動かすようになった…選挙報道を勝手に"自主規制"したテレビにもう後はない
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2024年は衆院選に加えて東京都知事選、兵庫県知事選など国民の注目を集める選挙が続いた。メディアコンサルタントの境治さんは「SNSが選挙結果に与える影響力が大きくなり始めている。その背景には、テレビが選挙報道を自主規制し始めたことがあるのではないか」という――。
「勝者」がいないのに敗北宣言
11月17日の兵庫県知事選挙は、メディアウォッチャーとして非常に興味深いものがあった。今年はSNSが影響を及ぼす選挙が続いたが、この時は初めてSNSが斎藤氏に勝利をもたらした。SNSはもはや、政治を動かすメディアとなった。
奇妙だったのは、翌日のテレビ局が一斉にSNSの力を伝えただけでなく、マスメディアがSNSに負けたと言い出したことだ。いや、負けたと言ったキャスターもいれば、負けてないと返したコメンテーターもいた。誰もマスメディアに対して勝利宣言したわけでもないのに、まるで誰かにそう言われたかのようにマスメディアの人々が自分たちは負けたの負けてないのと言い出した。こんなに滑稽なことはない。
マスメディアの側が勝手にSNSとの対立構造を作り、自分たちの側の影響力の低下に危機感を増大させた。だが何を焦っているのかと思う。YouTubeの動画が100万回再生されても、視聴率で見ると単純に計算すれば1%にも満たない。テレビの視聴率は特にコロナ禍以降地滑り的に下がっているが、それでもそのリーチ力は絶大だ。本気を出せば負けようがないはずだ。
自主規制を「縛り」と思い込んでいる?
しかし一連の選挙で、マスメディアが影響力を発揮できなかったのは確かだ。なぜならば、マスメディア、特にテレビは選挙報道をほとんどしない。SNSに大敗を喫したのは、選挙報道をしなかったために結果に影響を与えられなかったせいだ。自滅もしくは不戦敗と言ってもいい。選挙報道をきちんとやっていれば、負けにならなかっただろう。
ここで言う「選挙報道」とは、公示日以降の選挙期間中の選挙関連の報道のことで、テレビ局はこの期間になると急に選挙報道を大幅に控えてしまう。
これについて何人かのアナウンサーやキャスターが、テレビ局は縛りがあるからと言い訳を述べていた。だが選挙報道についてマスメディアを縛るものは何もない。あるのは、自主規制だけだ。それなのに縛りがあると言うのは、ひょっとしたらそう思い込んでいるのだろうか。だとしたら大きな誤りだ。