収入は増えないのに物価は上昇し続ける…国民にだけ我慢を強いる自民党政権の「無責任」を許していいのか
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物価上昇の影響で国民は厳しい暮らしを強いられている。戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんは「政府は物価高を上回る所得増政策をアピールしているが、現実には物価高対策として機能していない。こうした政府の責任をなぜかメディアは追及せず、国民に工夫と我慢を強いるばかりなのはおかしい」という――。 ※本稿は、山崎雅弘『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
同じ日に報じられたニュースの“矛盾”
自民党政権が、一般国民の暮らしを本気で守る気があるのかどうか。そんな疑問をさらに深める二つのニュースを、NHKは2024年9月2日に報じました。
一つ目は、「食品の値上げ 今月は1300品目余 5か月ぶり1000品目超に」という値上げのニュース。二つ目は「4〜6月 国内企業の経常利益 35兆円余 四半期で過去最高」という、日本の大企業の業績が絶好調だというニュースでした。
ニュース番組やネット記事では、こうしたニュースは別々に報じられるので、いくつかの関連ニュースを頭の中で組み合わせて全体の状況を俯瞰するという思考の習慣(いわゆる「メディア・リテラシー」)がないと、これの何がおかしいか気づかずにやり過ごしてしまうでしょう。しかし、実はこの二つは国民が組み合わせて考えるべき内容です。
なぜなら、物価高による国民生活の圧迫と、増進し続ける大企業の利益という対照的な状況は、自民党政府が誰のための政治をしているかを如実に物語っているからです。
値上げの要因の一つは「賃金の引き上げ」
一つ目の値上げのニュースで、NHKは、冷凍食品などの「加工食品」757品目と、アイスやチョコレート製品などの「菓子」169品目、ウイスキーやコーヒー飲料などの「酒類・飲料」135品目を含め、計1392品目が同月に値上げされると伝えました。
値上げの要因については、調査を行った帝国データバンクの分析として、異常気象などに伴う原材料高や物流費および包装資材にかかる費用の増加、そして「最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加」などを列挙しました。
この最後に指摘された「最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加」という値上げの原因は、きわめて重要な意味を持っています。なぜなら、岸田首相が国内での物価高への対策として、繰り返し語ってきたのが「賃金の引き上げ」だったからです。