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5~6歳の子どもに「なぜお金が大切なのか」をちゃんと伝える方法
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一般社団法人金融学習協会・認定インストラクター
一般社団法人金融学習協会・認定インストラクター
一般社団法人金融学習協会にて、小学生から大学生まで幅広い金融教育プログラムの企画立案を担う。前職はアウトドアインストラクター、前々職は金融機関のシステムエンジニア。自身がインストラクターを務める小学生とその保護者向けのプログラム「HAPPY×PROJECTSCHOOL」(ハピスク)は、参加した保護者の93%が「参加してよかった」と回答する人気講座。
「お金は大切」という言葉を、みなさん一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。でも、もし子どもから「どうして大切なの?」と聞かれたら自信を持って答えることができるでしょうか?そこで今回は「お金の大切さを子どもに伝える方法」を考えてみました。
お金が「大切」な理由
お金が大切な理由は、大きく2つです。
・お父さんお母さん、保護者が働いて得たものだから
・生きていくのに必要なものを得るためのツールだから
とてもシンプルな回答ですが、なぜこの2つなのでしょうか。そして、お金を大切にする子になるには、何が必要なのでしょう。子どもに伝える方法とあわせて、一つずつ考えてみます。
<お金が大切な理由その1>
生きていくのに必要なものを得るためのツールだから
お金は「もの」もしくは「サービス」と交換することができます。
この仕組みを、みなさんはどのように教わりましたか?おそらく実際に教わった人は少なく、大人がお金を使う姿を見たり、おつかいを頼まれたりするなかで、自然と理解した人がほとんどではないでしょうか。
つまり、お金の使い方は、日常生活で目にするうちに身につくものなのです。
だからこそ、この仕組みを理解する時期は、育った環境によって差が出てきます。最近、耳にした事例としては、
・スーパーで買い物をする際、子どもをパパに任せ、ママがひとりで会計していたため、お金を支払うという認識を子どもがしていなかった
・インターネットで買い物しているため、子どもは「パソコンから注文すれば(お金がなくても)欲しいものが手に入る」と思っていた
といったものがありました。
最近は、現金ではなくクレジットカードやICカードを利用する人が増えているため、ものを得るにはお金が必要だと気づいていない子どもも多いように感じます。
何を、どのように子どもに伝えるのか
この理由を理解するために伝えたいのは、
・ものを手に入れるにはお金が必要である
・お金があるから日々の生活が成り立っている
ということです。
お店で買い物をする際に、現金を支払う様子を日常的に見せることで、ものはお金と交換で手に入れられることを認識し始めます。
子どもが興味を持つようであれば、普段のあそびに「お店屋さんごっこ」を取り入れると、より自分ごととして理解できるようになるのでおすすめです。
<お金が大切な理由その2>
お父さんお母さん、保護者が働いて得たものだから
家庭にあるお金は、お父さんお母さんが働くことで得たもので、だからこそ限りがあります。
これがお金が大切なものである理由の2つ目ですが、
日常生活の一部である<理由1>が、子どもにとって比較的理解しやすい一方で、伝わりにくいのが<理由2>。
そのため、具体的に説明をしていない家庭も多いかもしれません。
ところが、<理由1>だけ理解した状態は、思わぬ事態を招くことも。
みなみちゃん(仮名)の場合
これは知人のお子さん、みなみちゃんのお話です。
みなみちゃんは、家の近くの幼稚園に通う年中の女の子。いつもニコニコしていて、友だちに気配りができる優しい子です。
ある日、みなみちゃんのお母さんが家事をしているところに、幼稚園の先生から電話がかかってきました。用件を尋ねると「みなみちゃんがお友だちにお金を配っています」とのこと。
「どうして!?」驚いたお母さんは、帰宅したみなみちゃんに事情を訪ねました。
すると、みなみちゃんの回答は
「みんなにお金をあげたら、みんながほしいものを買えると思って」
どうやら、みなみちゃんは友だちを喜ばせたくて、お母さんが空き箱に貯めていた小銭をこっそり持ち出していた様子。
「勝手にお金を持って行かれたら、お母さん困っちゃう」と伝えたところ、みなみちゃんは不思議そうな顔をしていたそうです。
みなみちゃんの事例から見えること
この話を読んで、どうお感じになりますか?
みなみちゃんは、お金があればほしいものが得られることを知っていて、友だちのためを思ってみんなにお金を配りました。お母さんはお金の使い方をみなみちゃんに伝えたことはなかったとのこと。みなみちゃんの観察力と優しさに、思わず感心してしまいます。
一方、この騒動で知人は、みなみちゃんが「お母さんのお財布からはいくらでもお金が出てくる」と思っていることに気付いたそうです。みなみちゃん曰く、
「お母さんのお財布にはたくさんお金が入っているから、お友だちにあげてもいいと思った」とのこと。
みなみちゃんの行動は、よくある事例ではないかもしれませんが、「子どもはお金の使い方は自然と理解するが、お金がどこから来るのかは意識しづらい」ということを示す好例です。
お金は無限にあると考えている子どもが多いのも事実です。
何を、どのように子どもに伝えるのか
そこで、子どもにもちゃんと伝えておきたいことは、
・お金は働くことによって得られる
・お金は無限にあるわけではない
ということです。
これらを伝えるために効果的なのは、お父さんやお母さんが働いている様子を見せることです。家族を想って働く親の気持ちとは裏腹に、子どもはお父さんお母さんの頑張りが生活につながっていることを意識できないことが多いです。
親が苦労しているのを見せたくない、と考える人もいるかもしれませんが、家族のために前向きに仕事をする姿を見せることは、働くことやお金への意識向上につながります。
職場見学の制度がある会社にお勤めの場合はそれを利用するのもよいですし、それが難しい場合は、仕事の成果物を見せるのもよいと思います。
スーパーで働いているお母さんであれば、お父さんや身近な大人といっしょに職場に来てもらうと、働いている姿を見せることができそうですね。
日常の中に、お金とかかわる瞬間を
お父さんやお母さんが一生懸命働いているから、お金をもらえる。お金があるから、食べるものや欲しいものが買える。
その因果関係、つまり「お金の入口と出口」を感じることで、子どもは一層お金を大切にできるようになるはずです。
今回紹介した方法は、いずれも日常の中で自然に取り入れられるものばかりです。子どもは、両親の日頃の行動や言葉から多くを学ぶもの。そのことを生かして、ぜひ身近なところから、お金と関わる機会をつくってみてくださいね。
執筆:島田綾 (一般社団法人金融学習協会・認定インストラクター)
同協会にて、小学生から大学生まで幅広い金融教育プログラムの企画立案を担う。前職はアウトドアインストラクター、前々職は金融機関のシステムエンジニア。自身がインストラクターを務める小学生とその保護者向けのプログラム「HAPPY×PROJECTSCHOOL」(ハピスク)は、参加した保護者の93%が「参加してよかった」と回答する人気講座。