子どもに夫にイライラ!怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」【藤本美貴×精神科医 藤野智哉】

子どもに夫にイライラ!怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」【藤本美貴×精神科医 藤野智哉】

2022.06.30

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予測不能な社会状況、SNSの幸せ自慢などのあふれる情報や人間関係のストレスなどから悲観的に考えるクセがついていませんか。「KIDSNA TALK」第7弾では、タレントで3人のお子さんのママでもある藤本美貴さんと精神科医の藤野智哉先生にメンタルヘルスや自身との向き合い方についてお話いただきました。第1回は、イライラや怒りといった感情をコントロールする「アンガーマネジメント」についてです。

001

「怒り」は人間にとって必要不可欠な感情

加藤
加藤

藤本さんは、仕事やプライベートで最近怒ったことはありますか。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

子どもに対して怒りと言うよりも「自分ではない他人なので、思い通りにいかない」というモヤモヤがあります。

仕事は比較的、大人と行うことなので怒ることはほとんどありません。しかも、子どもが産まれてからは特に、天使のように怒らなくなったと思います。(笑)

もともと私は、16歳のときから大人のプロフェッショナルの中で仕事をしてきました。だからこそ、できてあたりまえに思っており、「できない」ということの意味がわかりませんでした。

ですが、母になって「赤ちゃんは眠くても眠れない」。つまり、眠るきっかけをつかむのが苦手ゆえに「寝ぐずり泣き」をする。でも「それが人間」っていうことがわかったことで優しくなれた気がしています。

加藤
加藤

すごいですね。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

でも、逆に思い通りにいかないからこそ、子どもに対して「早くやったらいいのに」とかちょっとしたイライラは日々、あります。

藤野先生
藤野先生

「怒り」って、イメージとして持つことがダメな感覚がありますが、人間なので「怒り」という感情は当然、生まれるものです。

「怒り」自体が悪いわけではなく、どう怒りを外に出すかが重要です。

だから藤本さんのように、モヤモヤしてはいるけど爆発せずにいられるのであれば、良いと思います。

ただ、怒りになりやすいパターンである「●●●するべき」ということを押し付けてしまいがちな気もします。

「もっとこうしたらいいのに」とか「こうするべきなのに」という感情は、先ほど、藤本さんもおっしゃっていましたが、お子さんも他人ですので押し付けようとするとやはりトラブルになりやすいと思います。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

そうですね、すごいわかります。ところで先生も怒ることがあるのですか?

藤野先生
藤野先生

もちろん僕も人間なので、当然怒ります。

加藤
加藤

怒らなさそうです。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

やさしく「怒っています」って言葉でいいそうです。(笑)

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藤野先生
藤野先生

怒ること自体は、ストレスが減るなら怒ってもいいんですが、怒りの持続時間が問題です。悪い怒りは、持続時間が長く強度が強いと言われています。

だから、藤本さんのようにどこかで怒りを消化して、「これは仕方ないよな」というところに落とし込めれば、まったく悪い怒りではないと思います。

ただ、僕もなるべく翌朝まで持ち越さないようにしていますが、なかなかうまくいかないですね。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

私の怒りは確かに短いかもしれません。言いたいことを一度言えば、「はい、終わり」っていう感じです。

加藤
加藤

すごい、うらやましいですね。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

おかあさんと喧嘩をしたときもおかあさんは翌日もグチュグチュ言ってくるんですけど、私は「昨日話して終わりましたけど、続けますか?」と聞きます。「続けるなら続けますけど、どうしますか?」と聞くとたいてい、「続けません」と返ってきて終わりにします。

加藤
加藤

藤本さんは小さいときからそんな感じだったんですか?

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

そうですね、それに貯めません。嫌なことがあったら自分の考えを相手に伝えるので「爆発」というのはあまりないです。

藤野先生
藤野先生

「怒り」は相手の行動で起こっているようにどうしても思いがちですが、実は自分のコンディションによっても「怒りの程度」が違ってきます。

加藤
加藤

確かにそうですね。

藤野先生
藤野先生

同じ出来事でも調子がいいときだったら怒らないことも、自分がイライラしているタイミングでのことだと「カチン」ときますよね。だからこそ、相手というよりは自分の方を見直してみるというのが大事かなと思います。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

私も自分が疲れているときやイライラしている状態のときには「ママはいま、疲れていてイライラしているから気を付けて」とか「あんまりいま、かかわらない方がいいよ」ということを子どもに伝えるようにしています。

加藤
加藤

お子さんは察するんですか?

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

察します。その「察する」「空気を読む」ってことも「家庭で磨くことができる感性」かなと思っています。

藤野先生
藤野先生

藤本さんのように自分の状態を把握して、相手に感情や状態を正直にきちんと伝えることは、イライラをためないためにもとても大事なことです。

藤野流「アンガーマネジメント」怒りのコントロール法

加藤
加藤

さきほど、藤本さんは「怒ってもあまり長くない」っていう話があったと思うのですが、そうは言っても世の中のみなさんはなかなか消化できない人も多いと思います。そういうときはどうすればいいんでしょう。

藤野先生
藤野先生

自分の中で切り替えるスイッチを決めておく」ということがひとつです。

よくいうのが、「嫌なことがあった場合には、何かひとつご褒美を用意しておく」です。

あとは「その怒りが本当に怒ることなのかどうか、振り返ってみる」ことが大事です。

怒ったあとになって、なんとなく「あそこまで怒らなくてもよかったのに」って自分のなかでモヤモヤすることってあると思うのです。

でも、引っ込みがつかなくて怒っていることを引きずってしまう。

だから、普段から自分で「このくらいのことはこのくらい怒ってもいい」というラインや基準を決めておきます。イライラ具合をリスト化して点数化しておくといいです。

例えば、トイレットペーパーが切れているのに、代えていなかったらプチイライラ状態ですよね。その点数を決めておいて、今回起きたイライラはその表でいうと何点だろうと。

そしてこの怒りは、「●●よりは低いな」って思えばそんなに怒るべきことじゃない、って思えますよね。よく、「怒るときに6秒数えて」といいますが、怒っているときには数えられないと思いますので、考えることで一呼吸置きますよね。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

確かに、6秒数えることできないですよね、怒っていますから。

藤野先生
藤野先生

知識を色々入れておくことで一瞬、その考えに意識がいくだけでも「怒りのボルテージ」が下がると思います。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

確かにそうですね。そして、ご褒美はいいですね。「嫌なことがあったけど、いいおやつを食べよう」っていう感じで。(笑)

加藤
加藤

自分の中のスイッチもそうですよね。私は怒ると引きずってしまうので、そういうときは人に話すようにしています。

藤野先生
藤野先生

それはすごく大事ですよね。

加藤
加藤

人に話して客観的に「それって怒ること?」って言われると、だんだん鎮静化していきます。そういうクッションって大事だと思っています。

藤野先生
藤野先生

自分で自分を客観視することができないときは、人の手を借りることはとても大事です。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

子どものことに関していうと、社会に出たら理不尽に怒られるということもあると思うので、それも子どもにとっては社会勉強だと思っています。だからこそ、人間としてのイライラや怒りの感情は、ある程度隠さなくてもいいのではないかな、と思うんです。

また、想像以上にイライラして怒ってしまったときには、子どもと話し合います。「ママも怒ったけど、あそこまで怒らなくてもよかったと思っているの、ごめんね」と謝ります。

そうすると、子どもの方も「僕も●●●●だったからごめんね」となって、お互いに和解できます。

加藤
加藤

素敵な関係ですね。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

「親だから」とか「大人だから」ではなく、ダメだったことは大人も反省する。そして、よかったことは子どもも大人を褒める、というありのままを見せることが大事だと思っています。

藤野先生
藤野先生

子どもとの関係も、すべて人間関係です。喧嘩したら、お互いにフィードバックをして「ここはこうだったよね」と話し合いを持つことが大切で、それが家庭でできているのはすごくいいことですね。

怒りはフィードバックして、それが正しかったか否かを考えることで次につながります。

加藤
加藤

藤本さんはご自身もですが、お子さんともちゃんと向き合っていると思います。

藤本 美貴さん
藤本 美貴さん

まあ子どもにイライラすることが多いですけどね。(苦笑)

「ママはいないものだと思ってください」っていうときもあります。「疲れているから、ママはじっと目を閉じるからここにいないものだと思って自分のできることだけをやってください」っていうと「はーい」って言ってやってくれます。

藤野先生
藤野先生

「怒り」はエネルギーなので、そのエネルギーをどこにぶつけたらいい方向に向かうか、そして目標は何か。という方に切り替えていけるかが大切です。上手にプラスに転換することで、自分の未来や人生を大きく変えることにもつながると思います。

加藤
加藤

藤本さんは、お子さんとの関わり合いの中で上手に「アンガーマネジメント」をされていると感じました。何より、親子関係のなかで自分の所有物と考えがちなお子さんのことをきちんと他人として接していること。また、自分が疲れていることやイライラしていることもさらけ出す良好な人間関係を築けていることがとても素晴らしいと思います。そして、とても見習うべき点が多いと感じました。

また、子どもに対して怒る自分に対して嫌悪感があったのですが、「人間なので怒りの感情が生まれることは当然」と藤野先生に言っていただいたことで気持ちが大変軽くなりました。そして怒りのエネルギーをプラスに変えるようにしていきたいと思います。

次回の更新は、7月7日(木)予定です。お楽しみに!

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2022.06.30

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