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【#私の子育て】大渕愛子 〜仕事時間と育児時間を徹底的に切り替えこなすママ弁護士
Profile
KIDSNA編集部の連載企画『#私の子育て』。#06は弁護士の大渕愛子氏にインタビュー。タレント業、育児グッズの企画販売もこなす彼女は現在、3児のママ。法律の専門家という責任の大きな仕事をこなしつつ子育てを楽しむ彼女は、どのように育児と仕事を両立しているのだろうか。
「起こることすべてが楽しいと思えたことで、両立の苦悩から卒業できた」
「子どもが必要としている時には子どもといる、という覚悟を決めた」
こう語るのは、弁護士の大渕愛子氏(以下、敬称略)。タレント業、育児グッズの企画販売も行っている。
大学在学中に司法試験に合格。大手弁護士事務所への入所を経て、2010年に独立。現在はアムール法律事務所の代表弁護士を務める。弁護士タレントとして2011年から2016年まで「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)に出演。
3度の出産を経た現在は弁護士業を中心に仕事をこなし、プライベートでは4歳・2歳の男児と0歳の女児を育てる3児のママ。
企業や人々の相談に真摯に向き合う責任の大きい弁護士の仕事量は計り知れない。一方で、3人の育児は子どもの年齢が低いほど時間も手間も取られがちだろう。多忙な業務をこなしながら、どのように育児と仕事を両立しているのだろうか。
育児に対する想いをベースに築かれた彼女の仕事への考え方、日常の過ごし方について聞いた。
理想と現実に迷い、もがいた日々
責任の大きい多忙な仕事をこなしつつも、大渕愛子氏からは3人の子育てを全力で楽しんでいる印象を受ける。事前に答えていただいた質問シートからは、明確でわかりやすい答えを導き出す弁護士らしい一面が見られた。
子育てと仕事の両立について話を始めると「どうすればうまく両立できるのかを考えては、その難しさを思い知り、仕事の在り方を考る。繰り返しますよね、そういう気持ち」と語る。
弁護士という職業柄、時間やタスクの管理をしっかりとこなされている印象を持つが、仕事と子育てを同時進行する難しさは、他のママと変わらず感じ続けてきたという。すべてが中途半端になることが許せず、苦しみながら無理を続けた時期もあった。そして今、彼女は、そういった悩みから完全に解放されているという。
どのような経過をたどり両立への迷いを解消してきたのだろうか。
間違いから学んだ本質的な働き方
弁護士事務所の代表弁護士ともなれば、責任の重さや細かな業務の量は必然的に多くなる。それでも大渕氏は「両立の悩みからは卒業した」と語る。どのような心境を経てその想いまでたどり着いたのだろうか。
子育てをして初めて気づいた両立との葛藤
ーー現在は育児と仕事の両立で悩むことはないとのことですが、何をきっかけにその想いまで至ったのでしょうか?
「1人目の時に、間違った両立の方向に進んでしまったからですね。独身時代の働き方を引きずって、無理をしてでも同じように働こうとしていました。その失敗を振り返っては反省し、2人目、3人目で修正しながらここまできた、という感じです」
ーー失敗から学ばれたのですね。「間違った方向」とは、具体的にいうと?
「子どもを産んだからといって仕事を諦めなきゃいけないとは思いたくなかったし、周りにも思ってほしくなかったんです。『産んだら変わるよ』とよく言われましたがそんなはずはないと思っていたし、働き方を変えてしまうから女性が育児と仕事の両立をしにくくなっていると思っていて。
独身時代と同じように働ける方がいいし、それを実践できれば『子どもを産んでも働ける』と世の女性たちに感じてもらえる。その間違った考えが先行して、1人目の時は敢えて、出産前から出産後のスケジュールを入れていました。
産後3カ月くらいで復帰し、テレビの仕事にも時間を割き、大阪出張も毎週のように泊りで行っていて、休日に子どもと過ごす時間もあまりとれなかった。
そうやって出産前と変わらない働き方をしていると、周囲にもそういう人として扱われます。周りの声に応えようと頑張っていると、子どもといる時間が少ないな、身体がキツいなと気づく。でも一度入れたスケジュールは履行しなければいけない。
出産前に入れていたスケジュール通り働いているうちに、私が産む前に思っていた考え方は果たして正しかったのかなと思い始めました。働き方が変わることを前提に考えた方がよかったのでは、と気づいてからは、本当に苦しんだなぁと思います」
自分のために、働き方を変えると決めた
ーー子どもと過ごす時間が少ないと、子どもが寂しがっているのではと自責の念にもかられそうですね。
「そうですね、子どもの気持ちももちろん気になります。でも私の場合は、私の気持ちの方が耐えられませんでした。子どもはパパに懐いていたし『私がいなきゃダメだ』とは思いませんでしたが、私がそれで良いのかというと、良くないなと。
子どもが0歳、1歳の貴重な時期に傍にいなくてどうするんだろうと。取り返しがつかなくなる恐怖を感じました」
ーーその想いから、働き方を変えると決められたのですね。
「そうです。自分のために変えました。
初めての子育てに対面する働きたいママさんたちも、悩むと思います。働き方を変えた先のミライが保証されていないと怖いし、仕事が楽しければ変えたくないですよね。だけど、時間ではなく質や内容を考えて働くことはできる。私は今の働き方でも十分仕事を楽しめています。
子どもがいれば働き方が変わるのは当然だと、今になって思います。変わったからといって諦めたり犠牲になったことは何もなくて、むしろ良い働き方に変えられた。最初からそうやって考えておけばよかったなと。
子どもを産むと変わること、同じように働こうとしなくていいということを、これから産休、育休に入るママさんたちに伝えたいです」
割り切りでパフォーマンスを上げる
ーー仕事のやり方、具体的にはどのように変えられたのですか?
「仕事をする時間を、子どもを園に預けてからお迎えに行くまでの日中の時間と、子どもが寝た後の22時以降のみ、と決めました。それ以外の時間は子どもと過ごしているので、電話も出ないしメールも見ません。お客様にもそう伝えています」
ーーそう決めるにあたって、不安はありませんでしたか?
「緊急に対応してほしいというニーズはあるので、それに対応できないことでお客様の信頼を失うのでは、という不安はありました。新しい仕事を受けるチャンスがきたら取らなきゃという焦りも、自営なので常にありましたね。
ただ、無理に対応しても結果が悪いと、一層信頼を失ってしまいます。子どもの相手がしたいのに、と思いながらやる仕事は、パフォーマンスも成果物も悪くなりがちです。お客様のためにも自分のためにも、仕事量の制限は大事。
テレビのお仕事も、活き活きと楽しく出演させていただくものであって、悩みながら出るものではないですよね。そう考えてからは、日中の時間帯以外の出演依頼をいただいても、お断りできるようになりました。
ただ、そう割り切れるようになったのは最近のことで、3年くらいは迷いながらやっていました。1人目の時の失敗があったからこそ方向転換ができたのだと思います。まだ迷っていたら、育児も仕事も中途半端になっていたかもしれない。
大きく失敗したから、変えていこうと自分のために決めることができたのだと思います」
子どもとの時間を仕事に奪われない心構え
ーー責任が重く業務量も多い仕事をされていると、子どもと一緒にいても仕事のことを考えてしまう瞬間もあるのでは?
「基本的に、園に子どもたちを送り届けるまでは仕事のことは考えないようにしています。
とはいえ、やらなければいけないことは浮かんでくるので、ひとまず頭の中の引き出しに押し込んでいる感じです。考えることが常に溜まっている状態。だから、子どもたちを預けた瞬間に頭の中にあふれ出してきます」
ーー子どもと一緒にいる間は考えない代わりに、頭の中が常に満杯なのですね。そこまで徹底しようと思った理由は?
「これも1人目の時の失敗から学びました。
1人目の時は育児中に仕事のことが気なったり、仕事中に子どものことが気になったり、混乱しているところがあって。子育て中に仕事のことを考えだすと顔つきが怖くなってしまったり、子どもが話しかけてくれても上の空。心ここにあらず。
でもそれって、子どもにとってはすごく切ないですよね。園に預けていたりとただでさえ一緒に過ごせない時間が長いのに、これでは絶対にダメだと思いました」
預け先確保は「どうしても」の時のみ
ーーお1人目の時は土日でも仕事があったとのことですが、子どもの預け先はどのように確保していますか?
「1人目は1歳半頃まで、必要に応じてオフィスの傍にあった託児所に預けていました。決まった園に通い始めた後も、託児所のほかにも私の親やシッターさんなど何カ所か候補を持つようにしていました。
今でも同じように複数候補を持っていますが、子どもが病気になることも想定して予定を組んでいるので、基本的には私が対応できるようにしています」
ーーご主人は俳優業で、スケジュールは流動的ですよね。ご夫婦でどのように予定を組まれているのですか?
「Googleカレンダーで常にお互いのスケジュールを共有しています。夫の場合、ドラマの撮影などが入ると丸々1カ月不在になることもしばしばなので、仮でも予定が出たらすぐにスケジュールを入れてもらう。そういう情報はいち早く共有するように夫婦で決めています。
夫のスケジュールが入っている期間、私は仕事時間以外に予定を入れない。でもお互いのスケジュールが被ってしまうこともあるので、その場合は預け先の手配をすぐに進めます。
夫と私のスケジュール管理とシッターさんの手配は、常にセットで動いていますね」
仕事はプロセス、細く長く過程を楽しむ
ーー子育て優先で仕事の時間を組まれているなかで、今後のキャリアについて考えていることはありますか?
「仕事はプロセスだと思っていて、続けていくことが大事だと考えています。コツコツと今手がけていることを細く長く続けながら、その過程を楽しんでいくことにフォーカスしていきたいですね。
若い頃は、日々の単調な仕事に退屈して何か派手なことを成し遂げたい、すごい成果を出したいと思うところもあり、仕事に対して飽きっぽい部分もありました。歳を追うごとにそういう刺激よりも、積み上げてきた小さな喜びが繋がっていくような仕事の仕方ができることを、楽しいと思えるようになりました。
年齢と経験を重ねたからこそ感じられる想いだなと思っています」
1人目の子育てで体験した両立のための葛藤や苦しみは、結果として彼女自身の意思を強め、3人の子どもたちに「ママとの時間」を時間の許す限り与えられる結果へと繋がった。子どもを想い悩むことは、親子の絆を深めるきっかけにすぎないのかもしれない。
育児も仕事も時間で切替!大渕愛子氏の一日
子どもと過ごす時間と仕事の時間をしっかりと区切り、瞬間的に頭を切り替えている大渕愛子氏はどのようなスケジュールで1日を過ごしているのだろうか。
時間で区切る育児時間と仕事時間
ーー「仕事」と書かれている時間以外は仕事のことを考えることもしない、とのことですが、時間的に不足を感じることはありますか?
「時間が足りない、と思ったら、眠る時間を削って仕事をしています。基本的には日中の時間帯に主な業務は行っていますが、子どもたちが寝た後、翌日までにやらなければいけないことや、その日にやりきれなかった仕事を片づける、という感じです。
本当は朝方にしたかったのですが、どうしても仕事が終わらないことが多くて夜型のまま過ごしています。その日の仕事の進行具合にもよりますが、2時くらいまで仕事をしている日が多いですね」
ーー睡眠時間は比較的短いですね。
「そうですね。3人目を産んでからは、夜4時間くらい睡眠時間を確保して、ときどき日中の移動時間などに仮眠を取りながらやっています。割と4時間睡眠でも、慣れてしまえば大丈夫ですよ。
ただ、今日は疲れてるなぁと感じる時もあるので、そういう時は子どもたちと一緒に21時に寝てしまいます。残した仕事は諦めて一緒に眠って、翌日はスッキリ。無理に起きて仕事に向かうより、その方が結果的に効率的です」
3年先まで見越した計画性
ーー「3人分の課題に対して親としてできる一つひとつのことを取り組んでいきたい」とブログに書かれていましたが、お子さんたちがそれぞれ2歳差だと、取り組む教育のタイミングも異なりますよね。
「本当に!そこは考えるところです。その子の個性に合った習い事などを見つけたり、足りないことを補えるように取り組んでいってあげたい。
長男が4歳になってからは個性をより感じるようになり、苦手な分野などを考えるようになりましたね」
ーーそこに対応するには、今よりさらに子どもとの時間を工夫する必要がありそうですね。
「今は長男のことを中心に考えていますが、これが2年後になると2人分になる。さらに4年後は3人分。この先、今以上に考えることが増えるのは絶対で、子どもの意思がハッキリしてくる小学校以降のほうが、私は早く仕事を終えたいと思うようになるんじゃないかな、と予測しています。
学童に行きたがらないという話もよく聞くので、子どもに『早く家に帰りたい』と言われたらどうするのかな、と今から考えています。子どもの意識が高くなればなるほど、親の悩みのレベルも複雑になる。それを今から想像して、その時に子どもに寄り添えないと後悔しそうだなぁと思ったり。
だから、子どもと向き合える時間を持つことが私の中で第一優先であることは既に決まっていて、そのためにも、今から2年後、3年後まで考えて仕事を組んでいかなければいけないと感じています。
弁護士の仕事は一度仕事を引き受けると2年~3年先まで続くので、慎重に考えて仕事の予定を立てています。その時になって無理だと思っても、一度抱えた仕事は手放せませんからね」
どのような状況にあっても「子どもが必要としている時には子どもといる、という覚悟を決めている」と語る彼女は、その覚悟があることで心が落ち着くという。やり方を変えても仕事へのプライドと熱意を失うことはなく、綿密に予定を立てたうえで子育てを優先して考える大渕式仕事術は、働くママたちにの参考となりそうだ。
育児と仕事と家事、両立のためのマイルール
働いているママにとって、家事との両立も日々の課題の一つだろう。「家事は苦手」と語る大渕氏は、どのように家事のタスクをクリアしているのだろうか。
できないことを補い合う、夫婦のカタチ
ーー大渕さんが家事が苦手な一方で、ご主人の金山一彦さんは料理本を出すほど家事が得意だとか。実際ご自宅でも、ご主人が食事を作られているそうですね。
「食事は基本、夫が作っています。夫が不在の時期は私が簡単に作るか、お惣菜で対処しています。私の場合、料理をしていたら子どもと過ごす時間が本当になくなってしまうんです。
しっかり料理をして、キレイに盛り付けもできるママは本当にすごいと思うし、羨ましい。でも今の私には無理なので諦めました(笑)。
帰宅したら洗濯機を回して、準備を始める前から『ご飯だよ』と子どもたちに声をかける。おしゃべりをしながら10分以内に夕飯を用意して出す。この流れが夫がいない日のルーティンです」
ーー子どもと一緒に過ごす時間は子どもに当てることを、仕事意外でも徹底されているのですね。
「そうですね。幸い夫は初めてのデートで『僕は炊事洗濯、全部得意です。全部やります』と言ってくれたので、私は家事をほとんどやりません。その代わり、子どもと遊ぶのは私の役目。この役割分担は結婚するときに夫と一緒に決めました」
ーー苦手なことに対しご主人の理解があると、気持ち的にも助かりますね。
「本当に。無理に頑張らなくてもいいと思えたことはすごくありがたかったです。仕事に対しても心配しながらも応援してくれていて、私が夜遅いから、夫が私より朝1時間早く起きてご飯を炊いてくれていたり。家にいるときは率先して炊事も掃除もしてくれる。
お互いにないものやできないことを補い合える関係で居続けられていることは、精神的にも救われている部分が大きいです」
「母親の仕事は絵本を読むこと」
ーー潔く諦めることもバランスを保つためには大切ですよね。家事を諦めきれなくてストレスに感じているママもいると思います。
「しっかりやらないと”ダメなママ”と認定されてしまう、という怖さはありますよね。私も、”おふくろの味”みたいなものは子どもにとって大事かもしれない、と考えることはあります。
でも働くママなら余計に、子どもと一緒に過ごす時間の方がもっと大事だと思うんです。その時間を優先するためには、多少の諦めはあってもよいと思いますよ。仕事をして家事もして子どもと過ごす時間も確保するなんて不可能に近いし、頑張りすぎたら壊れてしまう。
ある程度、力と気持ちを抜きながら、手作りご飯は週末にしっかり作るなど自分なりのルールを決められれば、それでいいと思っています」
ーーそれでいいよ、という背中を押してくれる言葉は、心強いですね。
「育児の講演会に行くことがあるのですが、そこで『育児に必要なのはご飯を作ることではない。母親の仕事は絵本を読むこと』と言われたことがあって。私はその言葉にすごく共感しました。
それ以来、積極的に時間を作り、他の何よりも絵本の読み聞かせを優先しています。読むと子どもたちはすごく喜んでくれるし、読み終わると『ありがとうございました』と言ってくれるんです。それがすごく可愛くて、ついつい『もっと読みたい!』となっています(笑)」
パパの理解がストレス解消のカギ
ーー常に仕事のこと、子どものことを考え続けていると、疲れてしまうこともあると思います。ストレスはどのように解消していますか?
「特に何かしている、というのはないのですが、夫に話し合いを求めて絡んでいくことはあります(笑)。夫は聞き流していると思いますが、その場にいて聞いているフリをしてくれるだけでも、かなりストレス発散になっていると思います」
ーーエステや友だちと飲みに行くなど外で発散するママも多いと思いますが、大渕さんの場合は家庭内で完結されているのですね。
「私が甘えているのでしょうね。夫は私が疲れてイライラしている状態を察知してくれるので、絡んでいくと『またきた』と感じながら対処してくれていると思います」
大渕氏は、できないことは無理してやらず、外へ何かを求めることもない。それらに対する家族の理解と協力もしっかり得ている。だからこそ、子どもたちと過ごす時間を何よりも最優先する生活スタイルがブレることなく定着しているのだろう。
子育てのターニングポイント
常に頭を切り替えながらフル回転で子育てを続けてきた中で感じたターニングポイントについて聞いた。
「子どもが、というよりも私事なのですが、2人目を出産して体調を崩したことも、働き方を変えようと決意する大きなきっかけになりました。
1人目の出産後、子育ても仕事も中途半端なうえに、圧倒的に子どもと過ごす時間が少なくて、悶々と悩んでいる時に体調を崩し入院しました。”子宮頚部高度異形成”の診断が出てすぐに手術をする決意をしたのですが、無理をしたからかなと反省したり、ただでさえ子どもと過ごす時間が短いのに情けなく思ったり。
体調が落ち着いた頃に2人目の妊娠がわかり、子どもがもう一人できるならなおさら、これまでの仕事の仕方ではダメだと思いました。優先順位を明確につけられるようになったのは、その頃からですね。
さらに2人目妊娠中や出産後も体調が悪かったこともあり、自分がいつも元気とは限らない、体力的な限界もある、それなら子どもとの時間をもっともっと大事にしたいと強く思うようになり、もう無理はしない、と決めることができました」
ママは自分のことは後回しになりがちなうえに、実際に体調を崩すと子どもの相手ができない自分を責めてしまうこともある。そんな時こそ、自分が本当に大切にしたいこと、守りたいものに気づく機会なのかもしれない。
起こることすべてが「楽しいこと」
1人目の時には育児と仕事のバランスに葛藤し、自身の病気では情けなさと反省を痛感してきた。それらの苦悩を経て今、彼女は「素晴らしい毎日を過ごしている」と語る。
ーーブログを拝見していても、子育てをすごく楽しんでいる印象を受けます。
「大変なことは確実にありますが、すごく楽しんでいることも確かです。
限られた時間でいい仕事をしようと頑張ったり、夜中まで仕事をしなきゃいけないこともよくあります。子どもが言うことを聞いてくれなくてみんなが暴れていることもある。大変な状況ですが、それを『大変だ』と捉えてしまったらすごく損だと思うんです。
だから常に、なんて幸せで楽しい時間を過ごせているのだろう、と思いながら毎日を生きています(笑)。
仕事に関しても、そう思える仕事しかしていません。今取材していただいている時間もそう。心から面白い、好き、楽しいと思いながら過ごせていれば、その気持ちは子どもや家族にも必ず伝わると思っています。
起こることすべてが楽しいこと、と思えたことで、仕事と育児の両立が大変だ、という想いから、私は既に卒業しているんです」
葛藤や苦しみが吹っ切れ、自分にとって大切なものを見極められたことで、さまざまな悩みから解放されたのだろう。彼女のように大変な状況を「楽しい」と思う強さを持てれば、どんな困難も子どもの笑顔を見ながら乗り越えられる気がする。
長年の価値観を変えた子どもとの生活
最後に、子どもたちと過ごす毎日の中で変わっていった大渕氏の価値観について聞いた。
「家に帰りたい、と常に思うようになりましたね。
独身の時は仕事にもたくさんの時間を割いていたし、家には寝に帰るだけという感じでした。引っ越し癖もあり、1年に一度くらい引っ越しをするなど落ち着かない人生を歩んでいたんです。
今は、ずっと同じ場所にいても移動したいとは思わないし、すごく落ち着いています。すぐに家に帰りたくなって、実際、仕事以外では本当に出かけません(笑)。
子どもができる前は土日に旅行や遊びの予定を入れて、それを楽しみに過ごしていましたが、今は土日に予定が入っていなくても、週末がすごく楽しみです。3人の子どもたちは可愛いし見ているだけで面白くて、何をするでもなくただ一緒に過ごせることが楽しみ、と感じられることを、幸せだなぁと感じています」
ーーお子さんたちもそれぞれ下の子を可愛がったりと、仲良しで微笑ましいですね。
「自分のお菓子を自ら分け合ったりしていますね。自分のおもちゃを奪われても取り返したりせず、妹が飽きるまでじっと待ってくれている。
先日家族で行った旅行でも、みんなで助け合った、という感想が一番強いですね。子ども同士は3人でじゃれ合い、私たち夫婦も一緒に子どもたちを見ないといけない。バラバラになる瞬間がなく、家族全員が団結している、という印象を受けました。
家族が増えるごとに、家族としての絆が深まっていったと感じています」
編集後記
テレビで拝見していたはつらつとした笑顔や明確な回答は健在で、大きな笑顔で気さくに話してくれる様子からは、3人の子育ても仕事も家族との生活も、すべてを楽しんでいると感じられた。
1人目の育児では何度も泣いた、と語ってくれたように、大渕氏が見せる明るさからは想像していなかった葛藤と苦悩があり、その経験があったからこそ、今の生活スタイルを築いた彼女がいるのだろう。子どものために悩んだ苦しみは決して無駄にはならず、家族の絆へと繋がっていくと感じられた取材だった。
KIDSNA編集部