「親が楽しそうに学ぶ姿こそ最高の教育」学び、知る楽しみをまずは親が伝えよう

「親が楽しそうに学ぶ姿こそ最高の教育」学び、知る楽しみをまずは親が伝えよう

2022.03.25

Profile

小宮山利恵子

小宮山利恵子

スタディサプリ教育AI研究所所長

スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院准教授。「教育におけるICT利活用をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。早稲田大学大学院修了後、衆議院、ベネッセを経て2015年株式会社リクルート入社。同年12月より現職。 著書に『教育AIが変える21世紀の学び』(共訳、北大路出版、2020年)、『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA、2019年)、『新時代の学び戦略』(共著、産経新聞出版、2019年)など。

子どもが楽しく学び続けるために、親ができることとは?リクルートのスタディサプリ教育AI研究所所長・東京学芸大学大学院准教授である小宮山利恵子さんの連載コラム第6回。

この記事を読んでくださっている読者のみなさんは、子育てや教育に関する情報に敏感で、子どもの才能や個性を育むために時間やお金をかけていることもあると思います。

 

では、自分自身は普段から好奇心を持って何かを学ぼうとしているでしょうか。

子どもに望む姿は、まず親が体験してみせる

親はスマホでゲームや動画ばかり楽しんでいるのに、子どもには習いごとやプリントをやらせて「できる子」になることを期待しても、子どものやる気は起きません。自分もゲームをしたいと思うでしょう。

画像1
※写真はイメージ(iStock.com/Hakase_)

どんなに子どものためを思って子育てや教育に力を入れても、親自身に好奇心や学ぶ姿勢がなければ、子どもは「やらされ感」が強まっていくだけ。知らないことを知る楽しみや、わからないことを理解する喜びは、親が体験して伝えていくなかで、子どもも興味を持つものです。

総務省統計局の「平成 28年社会生活基本調査」によると、社会人が「学習・自己啓発・訓練」に充てる時間は1日当たり平均6分間です。

グラフィック1

もちろん1日6分間だけでも集中して本を読んだり、語学の勉強をしたり、新聞を読み続ければ1ヶ月で180分くらいは学んだことになるでしょう。

ところが学習レベルには5段階あり、「意識」「意欲」を持っている人は多いのですが、「実践」「継続」「発信(アウトプット)」まで進めて「価値ある学び」の習慣を身につけている人は非常に少ないのが現状です。

グラフィック2

そのように、大人でさえも学びのハードルは高いのです。ですから子どもの「知りたい」「やってみたい」「学びたい」と思う意識、意欲を引き出したいなら、親が普段からその気持ちを持ちましょう。

そして親がまず目の前のことに興味を持ち、子どもにも興味を持たせるような会話を心がけましょう。

たとえば親子でテレビを見ていて、どこにあるのか知らない国の名前が出てきたら、子どもと一緒に地図帳を開いて「ここにある国だね! 日本はここだから遠いね」などと会話のネタにするのもいいでしょう。

画像2
※写真はイメージ(iStock.com/Choreograph)

子どもから「あれはなに?」と聞かれたら、名前を教えるだけでなく、図鑑やインターネットで調べて写真を見せてあげると喜びます。

動物や魚だったら、動いている姿の動画を一緒に見ながら、「どんなところに住んでいるんだろうね?」「何を食べているのかな?」と楽しくおしゃべりしながら生態について教えてあげると、理科の勉強にもなりますよね。

画像3
※写真はイメージ(iStock.com/JokoHarismoyo)

親が伴走することでやる気を引き出し、質問することで価値ある学びにする

自分で体験したり覚えたり実践、継続する学びも、幼児期から低学年までは親が伴走して、「一緒にやってみよう」と促してあげると子どもの「やる気」につながります。

そのあとは親のほうから質問して、学んだことを子どもに説明させるとアウトプットできるので、深く理解する「価値ある学び」になるのです。

私は小学生低学年まで勉強はほとんどせず、毎日男の子と外を駆け回って遊んでいました。木登りして大怪我をしたりゲーム機が壊れるまでゲームをしたり、相当やんちゃだったのですが(笑)、母から頭ごなしに叱られたことはありません。

ただ、勉強の成績がいつも悪く、そのうえ悪戯をして遊んでいたので、担任の先生からよく呼び出されていた母は泣いていました。そこで、勉強嫌いの私に少しでも勉強を好きになってほしいとの思いから、毎日朝と夕食後に母が隣で一緒に勉強してくれたのです。

私は妹もいますから、母は家事や仕事で忙しかったはずなのに、「勉強しなさい」と口で言うのではなく一緒に勉強してくれたことで、私はだんだん勉強が好きになっていきました。

画像4
※写真はイメージ(iStock.com/staticnak1983)

中学で両親が離婚したあとは経済的に大変でした。それでも母の「教育は機会を与えてくれる。学べば学ぶほど選択肢が増える」という言葉を励みに猛勉強しました。そして、成績優秀者枠で給付型奨学金をいただいて高校に進学することができました。

あのとき私に寄り添って、学びの意義や希望を教えてくれた母の存在が、私自身の子育ての指針にもなりました。息子が小さい頃、リビングのテーブルで宿題やプリントをやっているときは、私も側で勉強をみながら本を読んでいました。

気になったテーマの本はまとめて10冊ほど買って読んでいますし、語学力のレベルを維持するために朝4時起きで英会話の勉強も続けています。

大人になってからも学び続けてきたおかげで、自分が得意なことや好きなことの「タグ」も増えて、仕事の幅もどんどん広がっていきました。

画像6
※写真はイメージ(iStock.com/Ivan Pantic)

学びは楽しい!ということを日々、会話でも行動でも示してきた母親の背中を見て育ったせいか、中学生になった息子は「勉強が楽しい!」と言うようになりました。

これから先、人生は長く、良くも悪くもいろんな経験をすると思いますが、学び続けている限り何があっても前進できます。私自身そのことを実感しているので、子どもに学んでほしいときはまず親が学ぶ姿勢を見せてあげてほしいのです。

Profile

小宮山利恵子

小宮山利恵子

スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院准教授。「教育におけるICT利活用をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。早稲田大学大学院修了後、衆議院、ベネッセを経て2015年株式会社リクルート入社。同年12月より現職。 著書に『教育AIが変える21世紀の学び』(共訳、北大路出版、2020年)、『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA、2019年)、『新時代の学び戦略』(共著、産経新聞出版、2019年)など。

コラムカテゴリの記事

教育を親の自己満足にしてはいけない。教育虐待になりうるハイパーペアレンティングの恐ろしさとは

教育熱心はどこまで?

この連載を見る
不安定な社会情勢やSNSなどを通じて得る過剰な教育情報によって、子どもの教育に奔走し、過干渉な子育てをする親が増加しています。行き過ぎた「教育熱心」が及ぼす危険性とは?そして子どもを疲弊させないために、親はどうあるべきかを専門家に聞いていきます。
【レポート】KIDSNAアンバサダー生誕2周年記念インスタライブ

2024年3月1日に開催したKIDSNA STYLEインスタライブ。お忙しい時間帯にもかかわらず、たくさんのアンバサダーのみなさまにご参加いただき、本当にありがとうございました!参加が難しかった方も多いと思うので、インスタライブの様子を簡単にご紹介いたします。