好奇心を育む「知識の翼」と「根っこの学び」【探究学舎 宝槻泰伸②】
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“受験も勉強も教えない教室”として話題の探究学舎代表 宝槻 泰伸(ほうつき やすのぶ)さんにお話を伺う『KIDSNA TALK』。第2回目は、子どもたちが「もっと知りたい!」「やってみたい!」という興味や探究心を生み出す「魔法の授業」についてです。
私たちは、“子どもたちが夢中になる姿を作り出す”というブランドを約束しています。
つまり、三ツ星レストランのブランドが「このお店に行ったらおいしい料理が食べられる」ということなら、探究学舎は「わが子が夢中になれるところ」と思って保護者の方はお子さんを連れてきます。
どんなふうに夢中にさせるのですか。
ひとことで言うと「驚きと感動」です。探究学舎で“驚いたり感動したりする体験”をすることで子どもたちは夢中で学び始めます。
ゲームや映画の世界でも驚きや感動は感じられ、心はときめきます。それも素敵なことではありますが、フィクションです。
「フィクションの世界に夢中になったとしても、人生は変わらないぞ」と保護者は思っています。だから科学や数学、アートなどのノンフィクションの世界に驚き感動し、夢中になる姿を見ることで「この子の人生、変わるかも」と思うんです。
だからこそ私たちは、子どもたちにはたくましく豊かな時間を過ごしながら育ってほしいと願い、覚えることや正解することよりも、驚いたり感動することを大事にしています。
探究学舎さんの学びについて教えてください。
探究学舎の授業の内容は40〜50と多岐にわたるので、「うちの子には何を受けさせた方がいいのか」と迷われる方が多いので今は、「広げるコース」と「深めるコース」というふたつのコースを設けています。
その理由は、次のような保護者の声です。
「うちの子は、ひとつのことには興味を示すのですが、ほっておくとそればかりになるのでできれば、いろんなことに興味を持ってほしいんです。」
そして、逆に「うちの子はいろんなことに興味を持つのですが、次々と興味が移って深めていかないんです。できればひとつのことを深く調べたり考えたりしてほしいのに。」と。
わかります?
すごくわかります。
つまり、親は「広く興味を持ってほしいし、深めてほしい」んです。
確かにそうです。
だから親の願いをそのままコース名の「興味を広げるコース」と「興味を深めるコース」にしました。
「興味を広げるコース」は、子どもの可能性を広げるためにまず出会ってほしいテーマを厳選。月毎に変わる固定された12のテーマをいつからでも始めることができ、興味が自然と広がる設計になっています。
また、「興味を深めるコース」は、お子さんが興味のあるテーマ、もっと深めたいテーマを選んで参加できる半年間のプログラムです。自分が極めたい、深めたい分野を選んで徹底的に深めます。
低学年のうちはいろんな世界を見聞きして、可能性の扉を広げたうえで、高学年では深めていくという設計です。
中でも、一番人気があるのが深めるコースの「算数」です。
算数が一番人気があるんですね。
史上最高の人気を誇っています。
算数や数学は「大事な知識なんだろうな」「身に着けていたら役にたっていたんだろうな」って思いますよね。
でも、学んでいるときには「何の役にたつの?」と、意味がわからなかったでしょ?だから学習意欲が折れませんした?
折れました。
でも、微分積分や三角関数のサイン、コサイン、タンジェントを学んでいるときに、理解が完全にできて「美しい」「素晴らしい」と思う感動体験ができる算数の授業だったら受けてみたいとは思いませんか。
思いますし、若き日に受けたかったです。
私は「知識を身に着けたらどんなところに跳んでいけるのだろう」「将来、どんなふうに役立てることができるだろう」という情報を「知識の翼」とよんでいます。
例えば、「微分積分をマスターしていたら、君はあらゆる仕事でそれを活かすことができる。具体的には、金融の世界では…、物理学の世界では…、建築の世界でも…。
なんなら動画編集の世界でも微分積分って役にたつんだよ、実は…で…で」と言われていたら微分積分ってすごいって思いません?
そう思います。確かに、学生のときにそういう話を聞いていたらもっときちんと学んでいたと思います。でも当時は、つながりがわからなかったです。
そうなんです。現代の数学教育は受験、テストの道具になっているんです。だから数学を学ぶことの利点は「テストの成績がとれる」「理系の進学先に進める」中高生だとそんな印象だと思います。
でも「それならいいや」「文系でいいや」ってなりますよね。実際、40歳の私も数学は受験の道具にしか見えなかったので、京大を受験するためだけに数学をやりました。そして、大学に行って「いらない」と思って捨てました。
ですが、大人になって数学を学び直してみると、数学にはしっかりと翼がはえていました。だから、子どもたちにはちゃんと翼をはやした状態で数学を教えてあげたいんです。
そして、私たちはもうひとつ、「知識の根っこ」であるルーツの物語も教えています。
つまり、「微分積分」にも「三角関数」のサインコサインタンジェントも必要に迫られて生み出しているんです。ちなみに、三角関数は古代ギリシャ時代に誕生し、測量をはじめ設計や建築のためであり、天文学のために生み出されています。
「数学がどこからきて、どこに向かっていくのものなのか」がわかるから、数学をもっと勉強したいな、って思うんです。そして、保護者の方も「知らなかった」と喜んでくれます。
親も子どもと共に感動を共有できることは素晴らしいと思います。
すごく喜ばれます。なぜなら40代で数学の翼を知ることはほとんどないからです。でも数学の翼を知って、あらためて数学を学び直す意欲を持って行うことで、もしかしたら50、60歳の仕事が変わっていくかもしれないんですよ。
確かに、そうですね。それに、数学が天文学で使われていると聞くと、とてもロマンチックにも思えてきます。
そうですよね。ちなみに数学は現代社会における学問の石垣なんです。
数学という石垣の上に、建築学とか物理学とか天文学とか情報工学とか金融学などのお城がたっているんです。
もし数学が崩れたら全部崩れます。しかも音楽やアートも数学が支えているんです。
数学的要素があるとは思いましたが、数学が土台になっているとは思わなかったです。
もっと決定的なことを言うと、音楽という学問を現代に切り開いた人物は、数学者です。しかも古代ギリシャ人です。その名はピタゴラス。
よく国語が重要だといま、言われていますが。
成人が身に着けるべきことで重要なのは言語力だと思います。全員が全員、数学を極める必要はないと思います。
でも、「数学と学問」との関係、「学問の石垣」である数学がどんなふうに社会を支えているかを知ることで、世界がもっと豊かに見えると思いませんか。
でも、苦手意識を持ちがちな教科ではありますよね。
それは、翼や根を授けずに「できるかできないか」「解けるか解けないか」だけで評価をしているからです。私たちは、できなくてもいいから好きになってほしいんです。
音楽だって全員が全員、音楽家になるわけではないし、全員が楽器を弾けなくてもいい。歌がうまくなくてもいいでしょ。でも音楽の豊かさを知った方が人生は豊かになると思います。
そこが興味開発とつながるということですね。子どもたちが夢中になる学びがお話を伺っていてよくわかりました。何より、私自身が「もっと知りたい」と思いました。
宝槻:そこがポイントです。(笑)
次回のKIDSNATALKは5/18(水)更新予定です。「子どもたちが持つ多種多様な可能性」と「保護者の方に気付いてほしいこと」についてお話いただきました。お楽しみに!
探究学舎さんは、「受験も勉強も教えない塾」とのことですが、どんなことをするのでしょうか。