教育熱心はどこまで?
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不安定な社会情勢やSNSなどを通じて得る過剰な教育情報によって、子どもの教育に奔走し、過干渉な子育てをする親が増加しています。行き過ぎた「教育熱心」が及ぼす危険性とは?そして子どもを疲弊させないために、親がどうあるべきか、各専門家に取材しました。
2021.06.01
読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は花まる学習会代表の高濱正伸先生が、教育に関するお悩みに答えます。お悩みはオンラインで随時受付中。
10歳は幼児期と思春期の境目。何歳になっても、なにかを好きになる出会いやチャンスはいくらでもあります。
相談者さんのお子さんは習い事をやめて、不安や警戒心が働いてしまっているのかもしれません。
よく見かけるのは、「もっとちゃんとやりなさい」「次はこれをやりなさい」「集中して」などとさんざん習い事に口出しして、親が思う正しい方向に持っていこうとするパターン。
そうすると子どもの警戒心はより一層強くなり、「なにもやりたくない」「熱中できるものがない」ということになります。
でも、本来、幼い子どもは積み木を高く積んでは崩す行為にずっと集中できるもの。つまり、夢中になることの原点は「本人が心から楽しいと思えること」なので、まずはそういうものを大事にしてあげましょう。
このときに、「剣道がいいって聞くからやらない?」というような提案をする親御さんも多いのですが、この聞き方では「やらない」「興味ない」と言われて終わってしまうので注意が必要です。
そうではなく、「おもしろいところに連れて行くから」「〇歳になったら行くことなってるから」と言って、いきなり剣道場に連れて行ってしまえばいいのです。
大抵のお稽古事はやってみれば面白いし、子どもは素直なので体を動かせば好きになって、また行きたくなります。
習い事を次から次へと変えることは「失敗経験が増えるのでは?」と心配する親御さんもいますが、むしろいろいろなことに挑戦することが、夢中になれるものが見つかる近道になるかもしれません。
その際、何をやるかは子ども自身に選ばせることも重要です。人は自分で選んだものを好きになるという習性があるため、たとえばサッカーと野球と水泳の体験に連れて行き、最終的な選択権は子どもに委ねてみましょう。
気をつけてほしいのは、「本当はこっちを選んでほしい」という親の思惑を匂わせて誘導したり、「じゃあこれもやったほうがいい」と欲を出したりするパターンです。
習い事にこだわらなくても、レゴでも絵でもギターでも、夢中になれるものがほかにあるならいいと思います。大切なのはその子の夢中になれるもの、熱中できることが何なのか親がしっかり理解して、そこを伸ばしてあげること。
親御さんからのアプローチ以外にも、いい方法があります。
思春期にさしかかった子どもの場合、お母さんからの提案ではなく、大好きないとこのお兄ちゃんやクラブや部活の先輩などからのおすすめの方が効果があることが多いのです。
親や先生ではない、ナナメの関係にある人や憧れの人から言われたことは素直に受け取れるのが思春期なので、そういう存在と出会わせてみるのもひとつの方法ですね。
Profile
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以前の習い事をやめてから、他の習い事をやりたがらず、学校から帰宅すると宿題のみをやって、大好きなゲームばかりしている小5の長男。
親から見て「夢中になれるものがない」ように感じられます。
子どもに無理強いをさせるのではなく、やりたいことをやらせてあげたいと思って子どもの自主性に任せているものの、いつまでたっても新しいことを始める様子はありません。
まだ選択肢を多く持っていないからこそ、親が新たな選択肢を示してあげるべきでしょうか。
また、その際どのような方法をとれば、子どものやりたい気持ちを引き出すことができますか。なにかアドバイスあればお願いします。