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「二人目不妊にもロードマップを」23%の男性がパートナーの女性に不妊治療を勧めるクリニックの信念<後編>
渋谷区恵比寿にあるtorch clinic(トーチクリニック)院長の市山卓彦先生は、「テーマはOne more Baby。僕は少子化を止めたいのです」と話します。後編では、二人目不妊の治療方針や、患者さんの心のケア、会計時間0分の秘密、男性側から女性へ治療を勧める割合の高さについて探ります。
性交障害と卵巣機能低下…二人目不妊患者は多い
“二人目不妊”という言葉があるように、第二子、第三子不妊に悩んでいる方も決して少なくありません。torch clinicには二人目以降の不妊治療に訪れる方も多いのでしょうか。
市山先生
フルタイムで働いていると、頻回な受診が必要な体外受精にステップアップするのが難しいという声も……。
しかしtorch clinicでは、体外受精のために卵子を採取する(採卵術を行う)予定日から逆算し、月経の開始日をピルなどでコントロールすることで、通院日に上のお子さんを預けるなど、採卵までのスケジュールが立てやすくなると続けます。また、torch clinicでは子ども連れての受診もOKだそう。
常勤カウンセラーがメンタルのゆらぎに積極的干渉
社会的ペインの他、torch clinicが解消を目指すのは心身のペイン。体外受精などの高度な不妊治療を受ける女性の約半数が抑うつ症状に悩まされる不妊治療の「心」のペインに、torch clinicはどのように向き合っているのでしょう。
市山先生
torch clinicでは2名の常勤カウンセラーが在籍し、カウンセリングにかなり注力しています。
なぜかというと、妊娠することと同じくらい、不妊治療から離脱する患者さんを救うことも大事だと思っているからです。
来院前、患者さんに専用アプリでメンタルヘルスの状況を10段階スコアで入力してもらうことで、来院前に医療スタッフが心理情報を把握することで、診察中の表情や言動だけでなく、数字の変動によって心理的介入がしやすくなるそうです。
市山先生
例えば、この間までは「10」だったのに今回は「3」だ、何かあったのかもしれない……と、心理士の方から積極的に干渉を行います。torch clinicからの不妊治療離脱者が少ない理由はここにあると感じています。
会計待ち時間0分、アプリで後日決済
torch clinicの専用アプリでできることは、事前の問診だけではありません。
市山先生
患者さんにすごく好評なのはアプリによる後日決済。一般的なクリニックの会計待ちの15分が短縮できて喜ばれています。
専用アプリ上で治療計画を確認したり、AMHの数値や凍結胚の数を見たり、胚の写真を確認したり……これらの機能はまだ実装されていないものの、アプリに無限の可能性を感じていると市山先生。
患者さんに寄り添うためにDXを取り入れながら、カップルで受診、相談、意思決定ができるクリニックを目指しているといいます。
市山先生
最初の問診はアプリ上で行うのですが、性交渉の頻度や、希望する子どもの数、そしていつ望むのかという、直接医療者に伝えにくいこと、パートナーの前では話しにくいことなども聞いています。
「何人欲しいか」まで聞くクリニックを他に見たことがないのですが「One more Baby」が僕の中のテーマ。
今までの不妊治療は「まだ一人目もいないのに二人目を考えるなんて……」というイメージがあったかもしれませんが、そんなことはないんです。
アクションが早ければ早いほど、もっと欲張っていいと思っていますし、生殖医療医がそうしたプランニングを立てられれば、少子化は止まると思うんですよね。
日本では約4.4組に1組のカップルが不妊治療を受けている(※)ほど、不妊症は誰が抱えていても不思議ではありません。torch clinicでは不妊症の予防や早期発見、妊孕性教育を目的としたブライダルチェック、プレコンセプションケアにも力を入れているそうです。
23%の男性がパートナーの女性へ受診を勧める理由
心地よいBGMが流れ、木目調の壁とシンプルなインテリア。2022年に開業したばかりのtorch clinicの内装へのこだわりについて教えてもらいました。
市山先生
不妊治療は女性一人のものではなく、男性と女性によるもの。そのため、torch clinicはレディースクリニックと冠されていません。男性が来やすいよう、全体的にユニセックスな内観になるようこだわっています。
JR恵比寿駅から徒歩1分、一般企業が数多く入るオフィスビル内に位置するtorch clinicでは、男性が一人で訪れる割合が高いことも他院との違いの一つだそう。
女性からパートナーの男性に勧めることが多い不妊治療ですが、torch clinicでは男性からパートナーの女性に受診勧奨した割合が、一年間で23%に上るといいます。
torch clinicで受診した男性が先導して、女性に不妊治療を提案したいと思えるのはなぜでしょうか。
市山先生
やはり、まずは一般的なデータに基づいた妊孕性についての正しい理解、それから自身のフィジカルデータとライフスタイル、希望の挙児希望数を照らし合わせた上で、5年間の家族計画を立てること、ロードマップを見える化して納得いただくことですね。
家族計画が見えないまま、不妊治療を始めると不安を感じるのは当然です。パートナーも漠然とした説明では納得できません。納得がないまま選択をすれば後悔も生まれるでしょう。
理解し、納得した上での選択であれば人は絶対に後悔しない。たとえ時間がかかったとしても、僕たちが「妊孕性教育」と「家族計画の立案」に力を入れる理由はここにあります。
特に男性にはロードマップを描き、可視化することで納得や理解を得やすいと話す市山先生。
国内有数の不妊クリニックと大学病院で培った確かな技術、そして市山先生の「少子化を止めたい」という強い思い。一人目はもちろんのこと、二人目以降の不妊治療もデータに基づきしっかりとした家族計画を立てます。
torch clinicで相談すると、本当に叶えたい家族計画が描けるかもしれません。
一番多いのは一人目不妊ですが、フルタイムで働く方の二人目不妊はすごく多いです。
しかし、上の子どもを育てながら性交渉のタイミングを計るのは大変ですよね。実は日本の52%のカップルはセックスレスというデータがあります。さらに一人目の時よりも卵巣機能が下がっている。
そのため、まず今の二人のライフスタイルと妊孕性(妊娠する力)を知り、適切な治療計画、ロードマップを敷くことが重要です。例えば3、4回タイミング療法を試すのが正解なのか、早期に人工授精や体外受精を計画することが良いのか、患者さんとパートナーとの対話の上方針を決定しています。