【産婦人科医監修】年齢が不妊に与える影響は?男性不妊や対処法を解説

【産婦人科医監修】年齢が不妊に与える影響は?男性不妊や対処法を解説

2022.08.24

Profile

杉山太朗

杉山太朗

田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

不妊にはさまざまな原因がありますが、年齢もその中の一つ。女性の人生では、年齢と妊娠の関係を考える機会が多いものですが、もちろん男性も無関係ではありません。妊娠する・させる力(妊孕力)は男女を問わず加齢によって減少します。この記事では、年齢が不妊に与える影響、対処法、妊娠のための生活習慣などを解説します。

加齢は不妊の原因になる?

下の表は、母親が子どもを出産したときの年齢をグラフにしたものです。

 

1985年と2020年を比較すると、子どもを産む女性の総数は減っている一方、35歳以上で子どもを出産する女性の数は2倍以上増えています。

晩婚化などライフスタイルの変化がこの数字にあらわれていますが、一方で、年齢が上がるにつれて妊娠しにくくなるとも言われています。実際のところ、加齢と妊娠にはどのような関係があるのでしょうか。


卵子の数は年齢とともに減少する

 

卵子は胎児の段階で作られ、出生後には新しく作られることがありません。そのため、質も量も年齢の経過とともに減少し続け、妊娠しにくくなったり妊娠の異常が起きやすくなります。

次に、女性の年齢別の不妊治療における分娩率を見ていきましょう。

 

不妊治療の被治療者の年齢を見ると、30歳以降は年齢が上がるほど分娩率は低下し、45歳以上になると1%を下回ります。

加齢は男性不妊にも影響

女性の卵子だけではなく、男性の精子も加齢と無関係ではありません。

35歳頃から精子の質の低下が起こるとされ、男性の不妊の原因としては性機能障害、精子の数や運動率の低下などが挙げられます。

20代では、精子濃度、運動率、精液量がどれも高い傾向にあり、1射精あたりの活発な精子の数は1.88億個。それが40代になると、1.02億個にまで減少 します。

さらには「運動率が悪くて卵子まで到達できない」「DNAが損傷する」などの症状も見られ、精子も老化が進むことが明らかにされています。

出典:不妊原因の約50%は男性に。妊活で知っておきたい事実と対策法

不妊原因の約50%は男性に。妊活で知っておきたい事実と対策法

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早めに不妊治療の判断を

ここまで説明してきたように、年齢を重ねると男女ともに妊孕力が減少します。

自然妊娠がむずかしいとわかったときに検討するのが、不妊治療です。

1990年代には、「女性が40歳を過ぎている場合には治療しない」という暗黙のルールがあったそうですが、現在は生殖補助医療技術が発達し、40歳を過ぎても不妊治療を始めることができます。

年齢を重ねたカップルが不妊治療に臨む際は、妊娠する可能性の高い治療を取り入れる必要があります。

不妊治療と一言で言っても、ホルモン療法やタイミング法など初期に取り組むものから、子宮内に直接精子を送り込む人工授精、そして高度生殖医療 (ART)と呼ばれる体外受精 (IVF)、顕微授精(ICSI)などさまざまな段階があります。

高度生殖医療になると、体外受精で1回20~45万円、顕微授精1回25~55万円と高額の費用がかかります。初期段階の治療で妊娠しない場合に、どのくらいの期間で高度生殖医療に移行するか、あらかじめ決めていくのがよいでしょう。

生活習慣の改善は妊娠率アップにつながる?

妊孕力が高いと言えない年齢で妊娠を望む場合、生活習慣の改善だけで可能性を上げることはむずかしいかもしれません。

とはいえ、健康な体づくりは妊活の基礎です。

不妊治療を行いながら、下記のことに気を付けてみてください。


規則正しく生活する

規則正しい生活は健康な体づくりに欠かせません。

早寝早起き、3食のバランスよい食事を心がけましょう。

ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、軽めの運動も生活に取り入れてみてください。


体を冷やさない

体を冷やすと、さまざまなデメリットが生じます。

血行や代謝が下がり、免疫力が低くなる上、子宮環境にも悪影響が及びます。

暑い時期でもなるべく冷たい飲みもの、食べものは控えて、常温またはあたたかい飲みものを口にするよう心がけましょう。

また、シャワーで済まさずお風呂に浸かること、適度に運動することも体をあたためる効果があります。


適正体重をキープする

妊活中は、やせすぎにも太りすぎにも注意が必要です。

自分の適正体重は、BMI(Body Mass Index)でわかります。

<計算方法>BMI = 体重kg ÷ (身長m)2

 

計算の結果が、上の表で「低体重」や「肥満」に該当するようであれば、生活習慣を見直すのがよいでしょう。

健康の維持と不妊治療の検討を

 
※写真はイメージ(iStock.com/takasuu)

年齢が不妊に与える影響は、科学的に証明されているものの、高度生殖医療 (ART)の発達で、不妊治療による妊娠の可能性も広がっています。

まずは、自分とパートナーの年齢を鑑みて、日ごろから健康に気を配る生活を送り、不妊治療のステップをあらかじめ話し合っていくのがよいでしょう。

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杉山太朗

杉山太朗

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

2022.08.24

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