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増える「体外受精」という選択。「杉山産婦人科」が採用する受精率85%を超える最新医療<前編>
生殖医療に特化した「杉山産婦人科 新宿」では、受精率85%を超える新しい顕微授精法を採用しています。「顕微授精は受精率が高いですが、なかには治療を受けることに抵抗を感じられる方もいます」。こう話すのは院長の中川浩次先生。今回は、治療方法の決め方・進め方、体外受精・顕微授精の現状について聞きました。
制限がある中で「妊娠」という結果を出す
「杉山産婦人科 新宿」では、世田谷本院での10,000人以上の治療実績を活かして、不妊検査ドッグや内視鏡手術、体外受精などの生殖医療を中心に、一人ひとりの患者さんに合ったオーダーメイドの不妊治療を行っています。
今回お話を伺うのは、産婦人科医からキャリアをスタートし、長年、妊娠・出産の分野に携わってきた「杉山産婦人科 新宿」院長の中川先生です。
中川先生
中川先生
妊娠が成立するためには、射精から始まり着床までの全てのステップで条件を満たし、生理現象が正常に働くことが必要。
私たちは、排卵、卵管、子宮、精子など各ステップのどこに原因があるのか、見つけるための検査システムを確立させており、ほとんどのケースで原因を見つけ出すことができています。
原因を明確にする重要性は、不妊治療が保険適用となったことでより高まったといいます。
中川先生
不妊治療における胚移植に関しては、40歳未満の方は1子につき通算6回まで、40歳以上43歳未満の方は1子につき通算3回までが保険適用となります。
そのため、やみくもに保険適用の回数を消化することは、患者さんの精神的にも経済的にも負担がかかってしまいます。
この限られた回数の中で結果を出すためには、しっかりと原因に合った治療を進めることが大切です。
重視するのは「過程」か「目的」か
さまざまな治療方法がある中で、どのように治療を選択すればよいのでしょうか。
中川先生
検査の結果が出たら、原因と治療方法を系統立ててフィードバックします。当クリニックでは、あらゆる原因へ対策できるよう、最先端の医療機器や専門医をそろえており、最大の効果が得られるよう治療方法を提案しています。
治療方法の選択では、「何を優先して進めたいのか」を医師と患者さんはもちろん、パートナー同士で明確にすることが大切。
中川先生
例えば、男性の精子に原因があった場合、どういった原因であるかにもよりますが、選択肢としては体外受精の中でも受精率が高い顕微授精を提案します。
「子どもがほしい」という目的を達成するためには、現状の治療方法の中ですと顕微授精が最も近道と言えるからです。
しかしなかには「過程を大切にしたい」というお二人もいらっしゃるので、その場合は当クリニックの男性不妊専門の外来で治療を受けた後、タイミング療法を選ぶという選択肢もあることを伝えます。
妊娠・出産は大きなライフイベント。患者さんの気持ちに寄り沿った治療方法で進めていく方針である一方で、過程を重視する場合はリスクがあることを理解してほしいといいます。
中川先生
男性の精子が原因で不妊状態にある場合、精子の改善を待ってからタイミング療法を実施するとなると、1年以上時間がかかることがあります。例えば女性が35歳以上で高齢出産となる場合は、その時点から1年待つことはおすすめできません。
女性が持つ卵子の質や数は年齢の影響を直接受けるといわれています。卵子の質や数だけでなく、30代半ば頃から年齢が上がるにつれてさまざまなリスクが相対的に高くなり、妊娠・出産に至る確率が低くなっていくことが指摘されています。
中川先生
最近は、事前に理解をしたうえで病院にいらっしゃる方が多いですが、これは女性だけでなくパートナーである男性も理解すべき内容です。
また、不妊治療から妊娠、出産の過程では、どうしても女性側の身体的負担が大きい。パートナーである男性はこの点も考慮しながら、話し合いを進めてほしいですね。
双方がしっかりと理解した上で、お二人にとって納得のいく治療方法を選択してもらいたい。
私たちはお二人が「何を優先して進めたいのか」を決められるように、各治療方法におけるメリット・デメリットや不妊にまつわる身体の仕組みの話など、パンフレットや動画など視覚的にわかる資料も使いながら、丁寧に説明するようにしています。
受精率85%を超える新顕微授精法を採用
保険適用されたことから、患者さんから希望するケースも増えてきたという「体外受精」。「杉山産婦人科 新宿」では、積極的に体外受精を提案しているそうです。
中川先生
両側の卵管閉塞や精子の状態が非常に悪い場合は、体外受精が絶対適用となりますが、そのほかにも、人工授精をしてもなかなか妊娠しないなど原因不明の不妊症の場合も体外受精を推奨しています。
また、体外受精の中でも受精率の高い顕微授精は、精子や卵子の状態が思わしくない場合やこれまでの体外受精で受精障害があった場合などに適応します。
現在、日本における体外受精児の約60%は顕微授精による妊娠です。当クリニックでも、顕微授精の受精率の高さから、患者さん自ら希望するケースが増えています。
「杉山産婦人科 新宿」では、「Piezo(ピエゾ)顕微授精法」と呼ばれる新しい顕微授精法を採用しています。
「Piezo(ピエゾ)顕微授精法」では先端が平らなピペット(精子を注入する細い針)を使用することで、卵子へのダメージを減らせることから、従来の「顕微授精」の受精率が80%弱に対し、「Piezo(ピエゾ)顕微授精法」は受精率が85%を超えるといいます。
そのため、女性が高齢である場合や卵子の数が少ない場合は、精子の状態にかかわらず「Piezo(ピエゾ)顕微授精法」を推奨しているのだそうです。
<従来の顕微授精法>
<新しい顕微授精法>
受精率が高い顕微授精ですが、なかには治療を受けることに不安や抵抗を感じる方もいるのだとか。
中川先生
顕微授精は、なるべく形や運動性がよく採取しやすい精子を選び卵子に注入するわけですが、「人間が精子を選ぶ」という解釈で抵抗を感じられる方がいらっしゃいます。ですが、最終的に受精するかどうかは卵子と精子の問題。顕微授精は、その確率を上げるための手段でしかないのです。
顕微授精に対して抵抗を感じるのは、男性が多いように思います。女性の場合は月経があることで、多少なりとも妊娠することにリアリティを感じられます。
顕微授精に抵抗を感じている場合も、治療方法を選択いただくときと同じように、「何を優先させるか」というのを考えられるようにアプローチしていますね。
また、体外授精では、40歳未満の⽅が良好な受精卵(胚)を4回以上移植した場合、80%以上の⽅が妊娠するといわれていますが、良好な胚を4個以上かつ3回以上移植しても妊娠しない場合を「難治性(反復)着床不全」といいます。
中川先生
3回目までに妊娠せずに「難治性(反復)着床不全」という診断に至った場合は、保険診療では対応できないより高度な検査や治療が必要となります。しかし、保険診療と自費診療の混合診療は認められていません。
限られた治療方法の中で何ができるのか、医療の質を保ちながら保険診療で治療を行っていくためのシステムづくりがこれからの課題といえます。
「杉山産婦人科 新宿」では、以前は着床不全や不育症(※注)の原因検索を行う「難治性着床不全および不育症専門外来」を設けていたそうです。
保険診療の関係上、現在は窓口を設けていないそうですが、引き続き「難治性(反復)着床不全」の専門知識を持つ医師が在籍しているので、保険診療の範囲での効果的なアプローチも実施しています。
また、治療方法とは異なる選択肢として、最近増えているというのが卵子凍結。近年の卵子凍結には、大きな可能性を感じていると中川先生はいいます。
後編では、卵子凍結の現状や不妊治療を続けるためにポイントとなる仕事や子育てとの両立、費用について詳しくお話していただきます。
(※注)「不育症」とは、妊娠はするものの2回以上の流産や死産または生後1週間以内の死亡により、赤ちゃんが得られない病気です。流産を繰り返す「反復流産」や「習慣流産」も不育症に含まれます。
不妊症は一般の病気とは異なり、子どもができないという状態のほかに身体的に明確な症状がない場合が多く、一般の病気のように症状をもとに検査を行い原因を見つけるということができません。
そのため、不妊症ではあらゆる可能性を考え、基本的な検査を順序立てて行なっていくことが治療の第一歩となります。