子どもを出産したいと思ったときに後悔しないように、今から知っておきたい妊娠・妊活の正しい知識。前編では、妊娠・妊活にまつわる誤解についてお伝えしました。後編では、結婚適齢期がなくなっても、妊娠適齢期は変わらずにある現状をテーマに、新しい不妊治療の技術などについてお伝えします。
近年、価値観やライフスタイルが多様化して「結婚適齢期」のような考え方は昔に比べるとなくなってきました。しかし、「妊娠適齢期」は今も昔も変わらないのが現状です。
――「妊娠適齢期」は何歳くらいなのでしょう?
「一般的には、20~35歳までが妊娠適齢期といわれています。
結婚適齢期はなくなっても、妊娠適齢期や分娩適齢期には、まったく変化がありません。平均寿命に関係なく、女性の生殖年齢は大昔からまったく変わっていないのです。
妊娠のリミットですが、閉経の10年前から妊娠できなくなると思っておくのがよいでしょう。だいたい51~52歳で閉経しますから、41~42歳が妊娠の限界のところです。
ただし、閉経も人によって10年ほどの幅があるので、妊娠可能の上限にも幅があります」
――20~35歳というと、ちょうど女性のキャリア形成期と重なりますよね…。
「そうですよね。でもだからこそ、この厳しい事実を知っておく必要があるのです。
妊娠適齢期(=生殖年齢)を延ばすことは、ドクターにも現代の医学にも超えられない壁です。
どんなに医療が進み、生殖医療が進んでも、医学でできること、できないことがあります。今の医学ではどうにもならないことが、妊娠の本質なのです」
――医学の力でできるのは、どのようなことでしょうか。
「高度生殖医療の進歩によって、体外受精や顕微授精など、これまでになかった選択肢が生まれています。
最近では、将来の妊娠に備えて卵子を未受精の状態で凍結保存する、「卵子凍結」という技術も知られるようになってきました」
――海外では、福利厚生制度の1つとして、卵子凍結を導入している企業もあると聞いたことがあります。
「そうなんです。日本では『妊活中の人がやるもの』というイメージがあるかもしれませんが、最近では、比較的若い方が卵子凍結に取り組まれるケースも増えています。
卵子凍結には、健康な状態でありながら将来に備えて卵子を凍結しておく「社会的適応」と、がんや白血病などの治療で将来卵子が採れなくなるリスクに備えて、前もって凍結しておく「医学的適応」の、2つの考え方があります。
卵子凍結はキャリア形成と出産を両立する選択肢にもなります。今はまだ妊娠のことは考えていない方も、将来子どもを授かりたいと思ったときのために知っておくとよいでしょう」
――最後に、これから妊娠・出産を考える人たちにメッセージをお願いします。
「繰り返しになりますが、妊娠・出産には適齢期があることを強く伝えたいですね。しかもこの適齢期は個人により大きく違います。
その知識と意識があるかないかでは、選択が大きく変わってくると思います。
ネガティブなイメージがある不妊治療ですが、不妊治療=人生をリデザインするために有効な選択肢だと、わたしは思っています。
不妊治療を不自然なものとして、『自然がいい』というドクターも確かにいます。不妊治療は長くかかるもの、気長に取り組むものだと思い込んでいる人もいます。
不妊治療をしたからといって必ず妊娠できるわけではありませんが、プロセスを大切にしたいか、結果を大事にしたいか、また"自然"とは何をいうのか、そこをよく考えて選択してほしいですね」
自分の意思だけではコントロールできない妊娠・出産。社会や医学が進化して結婚適齢期がなくなっても、妊娠適齢期(20~35歳)は変わらないのが現状です。
とはいえ、妊娠適齢期は、女性のキャリア形成期と重なる時期でもあります。その時期に妊娠・出産しても、キャリアアップの機会を失わないような社会づくりも大切なのかもしれません。
浅田義正(浅田レディースクリニック院長)
医学博士。日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医。日本生殖医学会認定 生殖医療専門医
長年にわたり、不妊治療に携わる。幸せな赤ちゃんの誕生、幸せな家庭を作る手助けをすることを理念に掲げ、結果を重視した治療を行う。
2020年08月04日
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