アタマジラミは幼児がかかりやすい子どもの感染症です。アタマジラミの感染経路やアタマジラミが増える原因や症状、流行時期などについて解説します。アタマジラミのときには皮膚科、小児科など何科を受診するか、またアタマジラミと診断されたときの登園やプールについて、駆除方法や家庭での対処法もご紹介します。
シラミは幼虫も成虫も皮膚から吸血して、かゆみや湿疹を起こします。
なかでも、アタマジラミ・ケジラミ・コロモジラミの3種は人間に寄生するシラミです。アタマジラミが、人の頭部に付着し血を吸うと、アタマジラミの唾液に対してアレルギー反応として炎症が起きます。
アタマジラミはなぜ発生するのでしょうか。アタマジラミの感染経路や原因、症状などを解説します。
アタマジラミは、「接触感染」でうつります。
保育園や幼稚園で子ども同士、頭を寄せあって遊ぶ場面もありますよね。髪と髪の接触時に感染したり、保育園では午睡の時間に感染する可能性もあります。ほかにも、帽子やタオルなどの貸し借りを介して、感染する場合もあります。
アタマジラミを含む、シラミは1匹だけ発生しても1日に5~6個程度の卵を産むので、どんどん増えていきます。アタマジラミは産卵から最初の成虫が孵化するまでの期間は大体10~14日です。
シラミというと清潔にしていないことが原因というイメージがあるかもしれませんが、実は清潔か不潔かは関係ありません。アタマジラミに接触しまったことで感染するのです。
アタマジラミは、髪の根元に卵が付着して発生します。卵は一見フケと似ていますが、軽いブラッシングでは取れません。シラミの成虫に刺されると、かゆみを伴う赤い丘疹ができる場合はあります。かくと化膿してしまうので、注意が必要です。
アタマジラミの症状として代表的なのは、かゆみです。子どもが頭をかゆがっている様子があるときには、注意深く頭皮を観察しましょう。一方、なかには全く無症状な子どもも少なくありません。髪の毛が十分に生えていない赤ちゃん場合も症状が出づらいため、周囲がアタマジラミの感染に気付けない、ということもあるようです。
アタマジラミは、夏に流行るという印象があるかもしれませんが、季節に関係なく1年中発生します
アタマジラミかもしれないときには、皮膚科を受診するのが望ましいでしょう。
診察では髪の毛の中の成虫、幼虫、毛髪についた卵を検出することで診断します。卵は後頭部、側頭部、耳後部に多くみられます。アタマジラミの卵は、アタマジラミの卵は毛髪に固くこびりついて簡単には取れません。毛を滑って取れるものはフケやヘアキャスト(毛鞘)である場合が多いです。
アタマジラミと診断されたときに感染を広げず、できるだけ早く駆除するためのホームケアをご紹介します。
市販されているフェノトリンがはいったシラミを駆除する専用のパウダーまたはシャンプーでアタマジラミを治療します。フェノトリン配合のアタマジラミ専用のシャンプーは、ドラッグストアでも売っているので、手軽に購入できます。
フェノトリンは卵の状態だと駆除の効果が薄く、卵が孵化して幼虫や成虫になってからのほうが、駆除効果は期待できます。シラミの成長速度にあわせて専用のシャンプーを3〜4日に1回、計4回の処置を行うことでシラミを全滅させることができます。
ただし地域によってフェノトリン抵抗性のアタマジラミが増加傾向にあります。その場合はのちに説明する丁寧なブラッシングが必要です。
アタマジラミの卵は、軽いブラッシングでは落ちないため、丁寧なブラッシングを心がけましょう。目の細かいクシや、シラミ用の梳き櫛を使用して、根元から毛先まで全体を丁寧にブラッシングして虫や卵を除去することが大切です。さらに温風のドライヤーでしっかり髪を乾かしましょう。
アタマジラミの卵や成虫は、55℃のお湯で10分熱湯消毒すると死滅します。衣類や枕カバー、シーツなどは熱湯消毒するとよいでしょう。他のものもクリーニングに出したり、アイロンがけをするなどして、熱処理を行うとより安心かもしれませんね。
カーペットや人形など洗濯機で洗えないものはポリ袋に入れて封をし、2週間程度そのまま置いておくと幼虫や成虫は餓死し、シラミの卵は駆除できます。
家族でアタマジラミに感染した人がいる場合は、感染の拡大により一層、注意が必要です。できるなら、洗濯物は分けるようにしましょう。
タオルやくしを介して感染する可能性もあります。家族間であっても、タオルやくしの共有は控えることが大切です。
アタマジラミは、登園停止が定められた感染症ではありません。駆除対策を開始していれば登園は可能です。しかし接触感染で感染を広げるため、アタマジラミの感染したことを保育園や幼稚園に伝え、集団行動の中で適切な対応をしていくことが大事です。女の子で髪の毛が長い場合は、髪の毛をまとめるようにしましょう。男の子は、帽子を被るなどして、髪の毛が外部に触れないように工夫する必要があります。
医師の診断と、園の方針に従って過ごすようにしましょう。
アタマジラミは髪の毛に強くつかまっているため、水の中に落ちることはないので、プールの水でうつることはありません。しかし、頭が触れあったり、着替えのときにタオルや衣服などが触れることで感染する可能性があります。
保育園や幼稚園でのプールは、通っている園に相談するようにしましょう。
アタマジラミは、流行時期や季節に関係なく、誰にでも起こりうる子どもの感染症です。毎日頭を洗っていても感染する可能性があります。アタマジラミにかかっても、保育園や幼稚園では出席停止期間は定められていませんが、ほかの子どもに触れないよう、髪や帽子を管理し、頭をよせて遊ばないように配慮をする必要があるでしょう。
はじめは1匹だけでも、日ごとに卵が増えていくので、アタマジラミかもしれないと思ったら早めの受診と治療が大切です。かゆみなどの症状があらわれたら、皮膚科を受診し、シラミや卵を駆除する専用のシャンプーで対処しましょう。
アタマジラミの原因のシラミを駆除することも大切ですが、不潔にしているとかかる感染症ではないので、年長くらいの子どもには、うつる理由を説明したり、子どもの心のケアも大切にしてくださいね。
加藤円香(mamaCLINIC 恵比寿mama)
医療法人社団mamaCLINIC 恵比寿mamaクリニック院長。
4児の子育てをしながら、恵比寿にお母さんと家族のための皮膚科、漢方内科を開院。こどものスキンケアから美容など、小さなことでも相談できる『家族みんなのかかりつけ医』として診察を行なっている。
2018年08月04日
子どもの急な発熱やのどの痛み、もしかしたら「溶連菌感染症」かもしれません。実際に自分の子どもがかかった経験がなければ、詳しい症状などを知らない人も多いのではないでしょうか。「猩紅熱(しょうこうねつ)」ともよばれる、溶連菌感染症の原因と症状、特に流行しやすい時期、検査方法、注意したい合併症、治療方法や家庭でできる対応、登園目安や予防法などを医師に伺いました。
眞々田容子(クローバーこどもクリニック)
保育園や幼稚園で冬場に集団流行しやすい病気のひとつ「おたふく風邪」は就学前の子どもがかかりやすい病気のひとつ。今回はおたふく風邪の流行時期や症状、そしてワクチンの重要性とホームケアや登園許可、予防法などについてご紹介します。
金髙太一(おひさまクリニック)
非常に強い感染力を持ち、空気、飛沫、接触など、人から人へとうつっていく麻疹(はしか)ウイルス。免疫を持っていなければ発症率はほぼ100%といわれています。今回は麻疹(はしか)と、混同されがちな風疹の症状や原因、感染経路や予防方法などについて解説します。
金髙太一(おひさまクリニック)
家庭内で過ごす時間が増えた今、子どもの猫背が気になることはありませんか。猫背は子どもの体にどのような影響を及ぼすのでしょう。今回の記事では、子どもの猫背で起こる影響や受診の目安、家庭でできる対処法について解説します。
千葉直樹(上高田ちば整形外科・小児科)
誤飲、口呼吸、歯並び、口内炎、口臭……こどもの口周りの悩みは意外と多いもの。そこで今回は医師監修のもと、口周りのトラブルの原因と対処法を解説した記事をピックアップしました。いざという時のため、長期的な子どもの健康のために、子どもに起こりやすい口周りのトラブルについて備えては。
トイレトレーニング(以下、トイトレ)は終わったのに、夜はおねしょが頻繁でまだオムツが手放せない…そんなお悩みはありませんか?そもそも何歳までおねしょをするものなのか、どこに相談していいのかも分かりませんよね。そこで今回は、おねしょと夜尿症の違いや、夜尿症の治療について解説します。
保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
中耳炎は幼児期の子どもがかかりやすい病気のひとつ。子どもが耳を痛がる場合は、もしかしたら中耳炎にかかっているかもしれません。今回は、中耳炎の症状や早期発見のポイント、治療法と予防について解説します。
金髙清佳(おひさまクリニック)
「男性不妊」「男性の妊活」という言葉が一般的になりましたが、具体的に何から始めればよいのか、病院でどんな検査や治療をおこなうのか不安…という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、厚生労働省の妊活に関わる調査結果、男性不妊の主な原因、病院での検査内容や治療の流れについて解説します。
杉山力一(杉山産婦人科)
WHOが2030年までに15歳以下の女子の接種率を9割まで高めることを新たな目標にし、注目されているHPVワクチン。しかし日本では、副反応に対する不安などから、ワクチン接種を控える保護者も多くいます。そこで今回は子宮頸がんの予防に有効なHPVワクチンの効果と、副反応について解説します。
保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
初めて子どものけいれんを目にした場合、多くの保護者が焦りでパニックに陥るもの。とくに乳幼児に多い熱性けいれんは何故起きるのか、原因と対処法についてご紹介します。
保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
子どもの便の量や頻度は人それぞれですが、子どもの便秘は放っておくと悪化して、治療が必要な慢性便秘症におちいることも。そこで今回は、子どもの便秘の原因と対策、さらには慢性便秘症になった場合の治療方法について解説します。
保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
「新しい生活様式」が呼びかけられ、長引くマスク生活。マスク着用により、子どもたちに影響はあるのでしょうか?マスク着用の習慣がもたらす健康被害と口呼吸の危険性、マスク選びのポイントやマスクの作り方をまとめました。