だから70億円稼ぐ新規事業をつくれた…明治製菓の伝説の社員が語る「チームワークなど存在しない」の深い意味
「自分株式会社」という最強の組織論
Profile
明治製菓は、1999年に業務用のチョコレート原料を企業に対して売る新規事業・カカオ事業部を始めた。 「明治製菓の辺境」とされた事業部は、10年後に売上70億円をたたき出す。そこにはどんなドラマがあったのか。事業部を率いた山本実之さんの著書『明治製菓カカオ事業部 逆境からの下剋上』(PHPビジネス新書)より、一部を紹介する――。(第3回)
なぜ私は「売上40億円」という合言葉を使ったのか
「最高のときにしよう」「孫に誇れる仕事をしよう」「俺たちはラッキーだ」
……あのころ繰り返し語った言葉は多々ありますが、その中で唯一、数字の入ったものがこちら。
「Go to market 40」
訳すと「行くぞ、売上40億!」と言ったところでしょうか。「マーケットイン」というメッセージも含まれています。自分たちがつくりたいものをつくるのではなく、お客様が求めるものは何かを理解し、提供しよう。その姿勢を貫きつつ、40億円を達成しよう……。
白状しますとこのフレーズ、私のオリジナルではありません。
海外の雑誌に、米国大手小売の「ウォルマート」が拡大戦略を語る記事が載っていて、そこから拝借したのです。
数字の部分だけ40に替え、仲間内の合言葉にしてしまいました。部内で非公式に交わし合う言葉だし、活字になるわけでもないし罰はあたるまい、と。
怒られはしませんでしたが、「えっ」という空気にはなりました。
そう、40億円という目標値に動揺したのです。
「無茶」が部下の本気に火をつけた
昨年度の部門の売上は、約28億円でした。
皆の表情からは「いくらなんでも……」という内心の声が聞こえるようでした。
目標設定は、低すぎると簡単すぎて意欲が出ないし、高すぎても挑戦する気力が失せてしまいます。ベストなのは、全力で頑張ってギリギリ届くレベル。これを「ストレッチ目標」と言いますが、本当に超えられるか否かの予測は、なかなか困難です。
最初のハードルを飛び越せば勢いがついて、次にもっと高い目標を掲げてもどんどん超えられるようになります。逆に言うと、最初でつまづくと士気はぐっと下がります。
ですからこれは、私にとっても賭けでした。
(高すぎるか? いや、彼らならきっと行ける!)
最後はそう信じました。
今でも、元部下たちに言われます。
「あのとき僕たち、『無茶だよ』『山本さん本気かよ』って言い合ったんですよ」でも、その言葉こそ本気ではなかったはず。なぜならその後、彼らは決して臆することはなかったからです。最初の動揺が過ぎたあと、彼らはただひたすら「40億」という数字に挑んでいきました。





























