出会いから"たった4カ月"のスピード婚…「ばけばけ」小泉八雲が"女中のセツ"に急速に惹かれた本当の理由
「救われたい男」と「救わずにはいられない女」が結ばれた必然
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NHK「ばけばけ」では、ヒロインのトキ(髙石あかり)が、小泉八雲をモデルにしたヘブン(トミー・バストウ)のもとで女中として奮闘している。史実では、八雲は女中のセツと結婚する。なぜ2人は結ばれたのか。ルポライターの昼間たかしさんが、文献などから史実を読み解く――。 (※本稿は一部にネタバレを含む場合があります)
4カ月で“実質的な夫婦”になった
NHK朝の連続テレビ小説「ばけばけ」は、ヒロインの松野トキ(髙石あかり)が、小泉八雲をモデルにしたレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)の女中として働き始めた。登場人物たちの心の揺れ動きがていねいに描かれているが、どれも様々な歴史資料をもとにした史実ベースの脚色だ。そんな中でも、視聴者がやはり気になるのは、この後、女中に雇われたトキがどうしてヘブンと結婚することになったかではないだろうか。
そもそも、史実の八雲とセツの結婚はなにが決め手になったのか……?
まず、最初に言っておきたいのは、これは偶然の恋ではないということだ。覚悟と誤解が、たった数カ月で二人を夫婦にしてしまった物語と言える。
セツが八雲のもとに「女中」として紹介されたのは1891年2月。しかし、わずか4カ月後の6月には、二人そろって北堀町(松江城の北の堀沿い)の武家屋敷に移り住んでいる。形式こそ雇い主と使用人だが、その暮らしぶりは実質的に夫婦だったと見てよい。
長谷川洋二『小泉八雲の妻』(松江今井書店、1988年)も「2月頃、セツがハーン(注:八雲)の家に入り、のちに結婚するに至った」と記す。
「セツの哀れな境遇への同情」があったのではないか
けれど、実際の時系列を追えば、その関係の変化はあまりにも早い。出会ってから半年も経たぬうちに、二人の関係は雇い主と女中から夫婦に変化したのである。冷静に見ると、これはとてつもないスピード婚である。
長谷川は、直接的な証言が残っていないこの時期について、いくつかの資料を照合しながらこう推察している。
セツの哀れな境遇への同情が、幼い時の離別以来、心の奥で慕い続けて来た、ギリシャの不幸な母ローザへの同情と重なったのではないかと想像されること、さらには、折しも、独り身で患った苦い経験の直後のことであり、心の奥底で生涯の伴侶を求めていたかもしれない、といったことを考え合わせると、セツがハーンの家に入って間もない段階で、住み込み女中とは違った扱いを、ハーンから受けるようになったと考えるのが、自然かと思われる。 |
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長谷川洋二は、二人が「出会ってから結婚に至った」と淡々と書く。だが細部を追えば、そのスピードは常識外れだ。
1891年2月、セツが八雲の家に入る。そのわずか4カ月後の6月、二人は北堀町の武家屋敷へ移る……形式は雇い主と女中、しかし実態はほぼ夫婦と思いきや、これより前に八雲はセツとは別の女中を新たに雇っているのだ。





























