なぜアメリカ人は「くら寿司」に10時間も並ぶのか…現地社長が気づいた「日本では日常でも米国にはなかった要素」【2025年10月BEST】
サンフランシスコやニューヨークを見ていても米国はわからない
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2025年10月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。ビジネス部門の第2位は――。 ▼第1位 来客数「1日120人→250人」創業90年、荒川区の小さな銭湯がサウナを廃止して始めた超高付加価値サービス ▼第2位 なぜアメリカ人は「くら寿司」に10時間も並ぶのか…現地社長が気づいた「日本では日常でも米国にはなかった要素」 ▼第3位 羽田空港へのドル箱路線"が JR東日本に奪われる…東急・京急の"直通構想"がモタモタしているあいだに" くら寿司がアメリカで大人気となっている。日本経済新聞社記者の杜師康佑さんは「『ビッくらポン!』や回転レーンなどは残しつつ、寿司ネタは現地にあわせた。8割のグローバルスタンダードと2割のローカライズが成功の要因だ」という――。(第2回) ※本稿は、杜師康佑『超凡人の私がイノベーションを起こすには』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。
回転ずしを進化させてきた「くら寿司」の挑戦
米国でいま注目を集める外食チェーンがある。日本の回転ずし「くら寿司」だ。
くら寿司といえば、日本の回転ずしビジネスに数々のイノベーションを起こしてきたことで知られる。
もともと回転ずしは店内中央に職人が立ち、職人を囲むようにレーンが流れるカウンタータイプが一般的だった。くら寿司はこの内装を一変させ、アルファベットの「E」の字にレーンを配置して子連れでも座りやすくした「E型レーン」を1987年に導入した。1996年にはテーブルに配置したポケットに皿を投入すると水流に乗って皿が洗い場まで運ばれる「水回収システム」を取り入れた。
客席にあるポケットに5枚の皿を入れると抽選ゲームが始まり、当たりが出ると景品がもらえる「ビッくらポン!」は2000年にスタートし、今でもファミリー層に人気のコンテンツとなっている。回転ずしはもはや単に寿司を食べに行く場所ではなく、楽しい体験を組み合わせた「食×エンターテインメント」を提供する体験型アミューズメント施設として独自の進化を遂げている。
8時間から10時間待ちが当たり前
そんなくら寿司が米国に進出したのは2009年のことだ。カリフォルニア州に第1号店をオープンし、その10年後の2019年には日本の外食企業としては初めてナスダック市場に上場した。
カレーハウスCoCo壱番屋や一風堂など、ほかの外食チェーンも米国に進出するが、20店舗を超える多店舗展開の壁に苦しむ企業は少なくない。そんな中でくら寿司は2024年末時点でおよそ70店舗を米国に構え、ロードサイドの店舗では8時間から10時間待ちも当たり前。朝5時からテントを張ってオープンを待つ人もいるほどだ。くら寿司はどのようにして米国人のハートを握ったのか。
米国事業の立役者がくら寿司USAの姥一うばはじめ最高経営責任者(CEO)だ。
関西出身の姥さんは大学生の頃、友人と大阪府堺市にあるくら寿司の泉北店を訪れた。当時はまだ珍しい150席の大型店に溢れる活気に感動した。高校と大学で飲食店のアルバイトを経験していたこともあり、就活でも真っ先にくら寿司を選んで2000年に入社した。
「一番忙しくて、一番厳しい店長のいる店に配属してください」と志願し、大阪市にある加賀屋店で徹底的に仕事を叩きこまれた。同期で一番先に店長に昇格した後は複数の店を渡り歩き、レーンに流す寿司ネタをマイクパフォーマンスで来店客に知らせたり、チラシを配って集客したり、「くら寿司の成長とともに自分も成長してきた」と振り返る。





























