8年もめた「静岡リニア問題」解決の絶好のチャンスが到来…JR東海が「ボタンの掛け違い」を解消する唯一の方法
静岡のせいで開業が遅れている」という姿勢は改めたほうがいい
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リニア中央新幹線の開業はなぜ遅れてしまったのか。ジャーナリストの小林一哉さんは「元凶とされている川勝前知事はそもそもリニア反対派ではなく、静岡県とJR東海の『ボタンの掛け違い』からこじれてしまった。これから始まる地域住民説明会は、それを解消する絶好のチャンスだ」という――。
大井川流域の住民向けに開かれるリニア説明会
JR東海は11月21日から来年1月31日にかけて、静岡県島田市を皮切りに、大井川流域の8市2町でリニア中央新幹線のトンネル工事に関する住民説明会を開催する。
大井川の水を守るための取り組みについて、JR東海の担当者がパネルや映像で紹介しながら、住民らの個々の疑問に答える形式で開かれる。ことし3、4月に開催した初の説明会に続いて2度目となる。

説明会は、県とJRの間に残された「対話を要する事項」28項目のうち、水資源に関連する6項目すべてが6月までに了解されたことに伴うものだ。かたちの上では大井川の水資源問題がすべて解決してから初めて開催されることになる。
JR東海に残された「根本的な課題」
静岡県は川勝平太前知事の時代から、工事中、工事後に流出する湧水の「全量戻し」を求めてきた。
これに対して、JR東海は毎秒2トンの県外流出については導水路を設置、ポンプアップすることで「全量戻し」を表明した。
県境付近の工事中の県外流出についても、川勝知事は水一滴の県外流出も許可しないと強い姿勢で臨んでいた。
県境付近の工事では、山梨県側から始まる掘削が静岡県側の先進坑とつながる約10カ月間に最大500万トンの湧水が山梨県側へ流出するとJR東海は試算しており、JRはこの対応策を示すよう県から求められていた。
2022年になって、JR東海は東京電力リニューアブルパワーの協力を得て、山梨県側への流出量と同量を大井川の東電・田代ダムで取水抑制を行ってもらい、大井川の流量を確保すると表明した。
県専門部会は、田代ダムで取水抑制できない状態が続いた場合の対応、渇水期を避けた施工の対応などを求め、ようやく田代ダム取水抑制案についてJR東海の説明を了承したのだ。

これで、静岡県が求めていた「全量戻し」すべてが解決したことになり、南アルプストンネル静岡工区着工への道筋がはっきりと見えた。
しかし、根本的な問題が解決されないまま残っている。
それは、地域住民への誠意ある説明だ。





























