経営コンサルが「高配当にひかれて個別株を買うのは危険」と話すワケ…そしてシニアが選ぶべき金融商品とは

経営コンサルが「高配当にひかれて個別株を買うのは危険」と話すワケ…そしてシニアが選ぶべき金融商品とは

安定配当を謳う企業は期待できない

シニアが選ぶべき金融商品はなにか。経営コンサルタントの日沖健さんは「理論的には配当政策は株主価値に無関係だ。高配当株を出す会社は必ずしも成長企業ではないので、リスクがある。別の投資方法を探る方が賢明だ」という――。

株を選ぶときに「高配当」を基準に選んでいいのか

個人投資家に人気なのが高配当株(配当利回りの高い株式銘柄)への投資。「株価下落のリスクが小さく、安定収入を見込める」と言われますが、本当にそうでしょうか。最近の企業の配当政策を確認し、高配当株投資の問題点と個人投資家に相応しい投資スタイルについて考えてみましょう。

高配当株投資をしている投資家にとって気になるのが、企業の配当政策(配当方針)ではないでしょうか。ここ1~2年、DOEの目標を掲げる上場企業が増えており、ちょっとしたブームとなっています。DOE(Dividend On Equity、株主資本配当率)の計算式は次の通りです。

DOE(株主資本配当率)=配当金総額÷株主資本×100

株主の持ち分である株主資本に対して、配当をどのくらいの割合で支払ったかを示す指標です。

DOEがブームになる前、多くの日本企業が配当性向の目標を掲げていました。現在でもそれをもとにどの程度、株主還元するかを決める企業も多いです。配当性向の計算式は次の通りです。

配当性向=1株あたりの配当額÷1株あたりの当期純利益×100

こちらは、その年の当期純利益から配当金をどれくらいの割合で支払うかを示す指標です。

当期純利益が毎年大きく変動するのに対し、株主資本は過去からの蓄積なので増資などをしなければそんなに大きく増減しません。したがって、DOEでは配当性向よりも毎年の配当額が安定します。

「高配当株=株主価値が高い」ではない

つまり、DOEの目標を掲げる企業は、安定配当を目指していることを意味します。実際に株主総会や経済誌のインタビューなどで、多くの経営者が「当社は安定配当で株主に報いていく方針です」と表明しています。

この安定配当をさらに一歩進めた、累進配当を表明する企業も増えています。累進配当とは、企業が配当額を毎年増やすか、増やさなくとも減らさずに維持し続ける(=安定的に増やす)という配当政策です。

多くの日本企業が当たり前のように志向している安定配当・高配当ですが、ここに大きな問題があります。

まず理論から説明すると、経済学者のF.モディリアーニとM.ミラーは、税金や取引コストが存在しない完全市場では、配当政策は株主価値に無関係であることを示しました。これは「MM命題」と言われ、ノーベル経済学賞を受賞しています。

企業は株主のものなので、企業が生み出した当期純利益は、すべて株主のものです。仮に企業が100億円の当期純利益を計上し、すべて配当したら、株主の銀行口座に100億円が振り込まれます。配当ゼロなら、すべて内部留保され、株主資本が100億円増えます。株主資本は株主のものなので、100億円を将来いつでも配当できるのです。

つまり、当期純利益を配当金として還元しようが社内に内部留保にしようが、当期純利益の置き場所と配当を支払う時期が違うだけで、株主にとっては損も得もありません。理論的には、配当政策は「どうでもいい」わけです。

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2025.10.24

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