相手の「学歴」や「給料」はこう聞くのが正解…コミュ力の高い人は知っている「感じのいい質問フレーズ」
「いい胸してるねえ」「グラマー」を上品に言い換えると…
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失言や不適切な言葉遣いを避けるにはどうすればいいのか。多摩大学名誉教授の樋口裕一さんは「ひと昔前であれば普通に使っていた言葉が問題視されることも多い。どのような言葉に問題があるのか、どう改めればよいのかを知ることが大切だ」という――。 ※本稿は、樋口裕一『その一言で信用を失うあぶない日本語』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。
相手のプライベートに踏み込むには…
相手のプライベートなことを尋ねるのは気を使う。少し前まで、誰もが「お年はおいくつですか?」「独身ですか?」「彼女、いないの?」「お子さん、まだなの?」と尋ねていた。だが、そうしたことは今ではぶしつけだとされる。しかも、年齢や結婚、子どもについてはジェンダーにかかわる。さまざまな性的指向、さまざまな価値観を考えると、かなり親しくなるまで、それを尋ねるのは難しい。
もう一つ、ビジネスシーンで微妙なのが学歴を尋ねることだ。
出身大学や出身高校は、人と知り合うためには大事な情報だ。たとえば同じ大学の出身であったりすると意気投合したり、時に同じ教員、同じ店、同じ校舎について話の糸口になって話が弾むだろう。同じ大学出身で年齢も同じくらいなのに、互いに学歴を聞けずによそよそしいままでいるといったこともあちこちで起こっているだろう。
学歴の場合、高卒か大卒か、難関校かそうでないかによって、優越感を持っていたり、劣等感を持っていたりする。自分がそのような意識とは無縁でも、もしかしたら相手はそうではないかもしれない。そう考えると、気軽にそれを口にできなくなる。相手との関係で、自分のほうが学歴が上であっても困ってしまう。そんなことを考えて口に出せない。
日本人は親しくなる機会を失っている
30年以上前のことだが、大先輩である今は亡きインド学者の松山俊太郎さんと同じ非常勤講師としてとある大学で毎週顔を合わせ、博学にして、辛辣で深い洞察にとんだお話を聞かせていただいていた。松山さんは、戦後すぐ、十代のころに事故にあって片腕をなくされており、着流し姿で過ごしておられたが、興味深いことを話しておられた。
松山さんは、インドに行って初対面の人に会うと、必ずと言っていいほど真っ先に「なぜ、片腕なのか」と尋ねられるという。だが、日本ではこれまで一度も直接に尋ねられたことがないというのだ。松山さんとしては、それを明かすのに少しもためらいはないものの、日本では尋ねられないので説明する機会もなく、曖昧な気持ちでいるのだということだった。
どうやら、日本人がプライベートなことを聞かないのは、近年に限ったことではないようだ。日本人は、少なくとも戦後には、おせっかいに他人のプライバシーに口出しするのを嫌うようになり、大事な情報でも尋ねようとしなくなったようだ。それを失礼だと考え、誰もが疑問に思ったままでいる。
それからかなりの時間がたって、ますますその傾向が強まったようだ。今では、先ほど述べた通り、年齢も生活状況も尋ねづらくなっている。
しかし、そうすることによって、時に誤解したり、理解しあえなかったり、せっかくの親しくなる機会を失っていると言えそうだ。

























