思い詰めた顔で「俺は長州を殺しに行く」…プロレス界の「破壊王」が同期に見せた"震えるほどの怒り"
直前、試合後の控室で殴られる音が響き渡っていた
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「破壊王」と謳われたプロレスラー・橋本真也の急逝から20年たつ。新日本プロレスの同期である蝶野正洋氏は「橋本選手は空気を読んで“乗っかる”場面での判断に優れていた。アントニオ猪木さんに手かざしをされて、ほかの選手が醒めた反応をする中で一人だけ全力で乗っかっていた」という――。(第2回/全2回) ※本稿は、小川直也・佐山聡・蝶野正洋ほか『証言 橋本真也 小川直也、佐山聡、蝶野正洋らが語る破壊王と「1・4事変」の真相』(宝島社)の一部を再編集したものです。
〈○橋本真也vs●武藤敬司〉新日本プロレス・日本武道館大会・IWGPヘビー級選手権・武藤のアキレス腱固め。1997年6月
プロレス界イチ顔が広かった先輩
期せずして新日本から大切にされるようになった橋本(真也)たち。そんななか、多くのタニマチを抱え、交友関係の広さでは、プロレス界一と謳われていたドン荒川は、橋本のことをかわいがり、酒の席や夜の街などに連れ回していたという。
「荒川さんがクルマで出かける時は、新弟子が二人呼ばれて、一人は運転手で、もう一人はボディーガード。荒川さんはいつも後部座席に座ってたね。この頃の新弟子のなかで運転免許を持っていたのは橋本、武藤(敬司)、蝶野(正洋)だけだったから、必然的にこの3人が呼ばれることが多かった。
荒川さんの席はとにかく飲むから、酒が強いヤツのほうが合ってる。橋本選手は『飲め!』『食え!』って言われて素直にガーッと行くタイプだったから、お呼びがかかる機会が多かった。武藤さんもかなり飲めるし、面白い付き合いもできるってことでその次。俺は酒が強くないから、3番手という感じだね。それを残念だなと思うこともあったけど、うまく逃げられたなっていうのもあるね(笑)」