「全員に2万円給付」はやっぱり無理でした…「一つも公約を守らない自民党」が国民より大事にする"超優先事項"
「ポスト石破」は80代の長老2人の権力争い次第
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参院選で争点となった物価高対策はどうなったのか。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「石破首相が選挙で大敗した責任をとって早期に退陣していれば、いまごろ大規模な経済対策に着手していただろうが、いまの自民党は『ポスト石破』をめぐる争いに必死だ」という――。
「あの選挙はいったい何だったのか」
酷暑の中、実施された参議院選挙から早いもので1カ月が過ぎた。日本列島は依然として酷暑が続いているが、物価高も、消費者物価指数が前年同月比で3%余り上昇する「酷高」状態にある。これに政治は全く手を打てていない。
「1人2万円給付(低所得者と子どもは4万円)」を掲げた自民党は選挙で大敗し、全国民への一律給付案は見直されるとの報道も出始めた。そして旗振り役だったはずの石破茂首相(総裁)は、近く退陣を余儀なくされる可能性が極めて高い。
一方、過半数を獲得した野党も、公約の柱にしてきた消費税減税で、「食料品をゼロに」「一律5%に」「いやいや全てをゼロに」とまとまらず、結局、給付も減税も見通しが立たないまま、自民党総裁選挙の実施によって政治的空白が生じるリスクが高まっている。
「あの選挙はいったい何だったのか……」
とは、石破首相に退陣を求めている自民党・旧安倍派の衆議院議員の弁だが、識者からも、何ら物価高対策が進まない現状に批判の声が聞かれる。
結局、トクをしたのは財務省だけ
◇荻原博子氏(経済ジャーナリスト)
「与党の過半数割れで2万円の給付はなくなり、消費税減税の話も野党でバラバラ。つまり、選挙で最大の争点だった物価高対策が、選挙後に飛んでしまったということです。肝心の自民党は総裁選挙モードで何の経済対策も打てていません。給付も減税もしなくて済む財務省だけが大喜びですよ。物価だけじゃなく、自動車保険とかも上がっているのに、と思うと、私だって、あの選挙は何だったの?と言いたくなりますよ」
◇加藤出氏(東短リサーチ社長・チーフエコノミスト)
「物価高対策は日銀が主導して対処すべき問題。対策に『打ち出の小槌』はなくて、低い金利を上げるしかないですが、そうなるとインフレを煽ることにもなりかねません。野党は『消費税を下げろ』と言っていますが、欧州の付加価値税を見ると、インフレを付加価値税減税で抑えた例はありません。自民党が訴えてきた給付も一時しのぎ。その自民党が総裁選挙に突入してしまいますと、公約も何も……ということになりますね」