習近平のまわりから次々と人が消えている…アメリカが震え上がった「中国最上層部の生と死のミステリー」
不審死を遂げた前首相が数カ月前に行っていたこと
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習近平の周囲では、近年、側近の失踪が相次いでいる。いったい何が起きているのか。イギリスのジャーナリストのマイケル・シェリダンさんの『紅い皇帝 習近平』(草思社)より、一部を紹介する――。(第3回) ※本稿は、マイケル・シェリダン(著)、田口 未和(訳)『紅い皇帝 習近平』(草思社)の一部を再編集したものです。
習近平のお気に入りの大臣が突然姿を消した
紅い皇帝は宮廷でのトラブルに見舞われていた。始まりは2022年後半、「ロケット部隊」――習近平が核兵器と従来型ミサイルを管理するために設立した部隊――の秘密計画がアメリカの手に渡ったことを中国の情報機関が突き止めた。
次の一撃は、調査官が部隊上層部に横領、無能、反逆の疑いがあると発見したことだった。指揮官は他の数人の上級士官とともに姿を消した。彼らは習近平が自分の創設した部隊を任せるために自ら選んだ者たちだった。彼の名声へのダメージは、軍のすべての階層に反響した。
次に倒れるドミノは、習近平が自ら外相に選んだ忠実な部下、秦剛だった。彼のそれまでの順調な昇進は、妻が習近平夫人と親しかったことも理由のひとつだ。
駐アメリカ大使という楽で好待遇の地位を手渡された秦剛は、そこで西側の衰退について傲慢な発言をして主人を出し抜き、テレビカメラに向かって歴史の流れや帝国の衰退などについて話して聡明なふりをした。
秦剛にとっては気の毒なことに、時代の波が彼を飲み込もうとしていた。2022年末にワシントンから呼び戻され、57歳で外相になったときには、外交部内で嫉妬と恨みを買い、秦がその肩書にふさわしい風格を見せても和らぐことはなかった。
2023年7月23日、彼はわずか200日ほどで、習近平が署名した通知により解雇され、共産党中国の歴史において最も短命な外相になった。
最後に外相として姿を見せたのは6月25日で、ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官との会談のときだった。その後、彼は姿を消した。