思い通りにならないイライラはほとんど無意味だった…本当に頭を集中すべき「たった3つ」の分野
「考えるだけ時間のムダ」はこんなにも多い
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毎日イライラしたり、思い通りにいかない現実に悩まされるのはなぜか。ジャーナリストのブリジッド・ディレイニーさんは「私たちはコントロールできないことまで『できる』と思い込んで時間やエネルギーを無駄にしている。この事実を受け入れることで、自分が影響を与えられる分野だけに集中でき、実際に変化をもたらせる」という――。 ※本稿は、ブリジッド・ディレイニー著、鶴見 紀子訳『心穏やかに生きる哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・再編集したものです。
「コントロールできるもの」を見極める
当時私たちは知る由もありませんでしたが、2019年のあの夏に、劇的に私たちの生活を一変させ、環境破壊につながる一連の出来事が始まったのでした。火事、呼吸できないほど汚染された大気、パンデミック、洪水。世界が急に道を踏み外し、さらにコントロールが利かなくなったように思われる最中、生活の中で「自分がコントロールできるもの」を明らかにすることはきわめて重要でした。
ストア哲学を学んで私の人生が変わった理由はそこにあります。
世界が急速に劣化していく現実にどう立ち向かうか、こうした変化に直面しながらどうやって強靭な心を持ち続けるか、そして変化に対して自分が何をできるのかを、私に教えてくれたのです。
古代ストア派は現実について多くの主張がありました。人生と正面から向き合うこと、何のために人生があるのかを理解すること、そして現実を受け入れて行動することです。
ストア派が行動を起こす前に最初に行ったステップは、何でも基本的なテストに当てはめてみることでした。これは「コントロールテスト」または「コントロールの二分法」と呼ばれるものです。ストア派は、置かれた状況においてコントロールできることと、できないことを見極め、できることだけに専念しました。
コントロールできない悩みは時間の無駄
これは2019年の夏、マーティン・プレイスにあるアンドリューのオフィスで、私とアンドリューが勉強会を始めたときに最初に扱ったストア派の原則です。アンドリューはホワイトボードを用い、それから私たちは紙に書いて、コントロールテストがどういう風になるのかを分析しました。それは大体図表1のような感じでした。
ストア哲学の実践においてコントロールテストはきわめて重要なので、エピクテトスは『提要』の冒頭の一節で提示しました。
「自分でコントロールできるものもあれば、できないものもある。自分でコントロールできるのは意見を持つこと、物事を追求すること、欲望を抱くこと、反感を覚えること、つまり我々自身の行動に基づくすべてだ。コントロールできないものは自分の身体、財産、他人からの評判、命令を受けること、つまり自分の行動に基づかないすべてである」 |
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この一節はストア哲学の基盤であり、厳しい試練となるものです。自分でコントロールできるものを提示してくれていますが、私はそれを次のように解釈しました。自分の品性、他者への対応、そして自分の行動と反応です。その上でエピクテトスは、その他のことをコントロールしようとするのは忘れなさいと勧めます。時間とエネルギーを無駄にするだけだと。