ダメな医者ほど「酒は控えめ」「タバコはNG」と言う…医師・和田秀樹「高齢者を不幸にする"引き算医療"の罪」
「高齢者こそ食べてほしい」スーパーに必ずある食材
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老後を元気に過ごすには、どうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「医者が“生活指導”と称し、食事や運動、お酒や喫煙などに口を出してきても気にしなくていい。素直に言うことを聞いているとヨボヨボ高齢者になってしまう」という――。(第1回) ※本稿は、和田秀樹『80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと』(興陽館)の一部を再編集したものです。
高齢者に“引き算の治療”は必要ない
年を重ねれば、体の機能や能力が衰えていくことは避けられません。若い頃ならば、健康診断で血圧やコレステロール値、血糖値が高いと指摘され、それを薬などで下げることで、命にかかわる病気を防ぐ意味はあるでしょう。ところが、それと同様の医療を高齢者におこなうと、元気や活力が奪われ、そのベースとなる免疫力にダメージを与えてしまうことになるのです。
あなたがこれまで元気に過ごしてきたとしても、80代になると、さすがに体のあちこちに異常を感じるようになります。そこで検査を受けてみると、血圧が高い、血糖値が高い、コレステロール値が高いなどと医者に言われ、あれやこれやの薬が出されて、それらの数値を「正常値」まで下げる、いわば“引き算”の治療をされることになります。
塩分の摂りすぎはダメだとか、糖質の摂りすぎはよくないとか、血糖値が高ければ下げましょう、血圧が高ければ下げましょう、コレステロール値が高ければ下げましょう、と言われるのです。
40~50代の中年世代までなら、異常値を正常値に戻すことは、病気の予防や改善に役立つかもしれません。しかし、これが高齢者になると、引き算は害になることが多いのです。
かえって体調が悪くなる
まずは、多剤併用の問題です。高齢者のほとんどは、検診を受けると、血圧や血糖値などいくつも異常が出ます。老いていっているのですから、当たり前です。それなのに、ヘボ医者は、異常値を正常値に戻すことだけを考え、モグラ叩きのように複数の薬を処方するようになります。
本書で記した通り、高齢者は若い頃と比べて、肝臓や腎臓の機能が落ちるぶん、薬が体内に残りやすくなります。それでも薬を飲み続けると、頭がぼーっとしたり、だるくなったりして、かえって体調が悪くなるのです。この一点からだけでも、私は数値を下げるだけの引き算医療に反対です。
たとえば、コレステロール値を下げる理由は、動脈硬化を予防して10年後、20年後の心筋梗塞や脳卒中を回避することにあります。ですが、年をとって動脈硬化がない人などまずいないということをお伝えしておきます。
私は、高齢者専門の浴風会病院で年間約100例の病理解剖に立ち会ってきました。その結果、80歳を過ぎて動脈硬化が進んでいない人はいませんでした。これは事実です。それなのに、高齢者に、何十年も先の予防を呼びかける意味があるのでしょうか。甚はなはだ疑問です。