ジムで体を鍛え、スキンケア・ヘアケアを徹底…「男磨き界隈」の男性がハマる軍隊的な自己啓発のカラクリ

ジムで体を鍛え、スキンケア・ヘアケアを徹底…「男磨き界隈」の男性がハマる軍隊的な自己啓発のカラクリ

「男磨き」の目的が「爆美女を抱くこと」という危うさ

「男らしさ」とは何か。『その〈男らしさ〉はどこからきたの? 広告で読み解く「デキる男」の現在地』(朝日新書)を上梓した小林美香さんは「たとえばインターネット上で展開される『男磨き界隈』は、男性の性的な能動性、集団としての振る舞い、さらにはその中で共有される女性のイメージについて考える上でも興味深い現象だ」という――。

透明化される性的主体としての男性イメージ

「デキる男」はテストステロン(男性ホルモン)値が高く、性欲が強く性的に活動的である、という捉え方は多くの場面で見受けられます。

そのような異性愛男性の視線や性欲の作動を前提として、「エロ」としての女性、すなわち性的対象=客体としての女性のイメージは際限なく作り出される一方で、それを見る側として設定される男性の存在は透明化されます。

性的主体としての男性個人の不可視化については、本書の序章で「コンプレックス訴求と顔のない男たち」として指摘しています。加齢に伴って身体が衰え、性的な能力が低下することは、男性にとって自尊の感情を保つことが困難になるために、男性の顔がない(顔の部分をトリミングする)、あるいは記号やイラストレーションを用いて抽象化・匿名化した上で、コンプレックス訴求がなされます。このような表現方法は、公共広報である痴漢防止ポスターの表現に生じる課題に通じるものがあります。

その課題とはすなわち、痴漢という性加害行為を批判・糾弾して、抑止する側を具体的に描くことはできても、加害する側、具体的な犯人像を描くことはできず、またそれがゆえに、啓発・注意喚起としての表現が説得力に欠けたものになるということです。

男性にとって、「性的な能動性」が魅力や活力と結びつけられることなく、他者(多くの場合は女性)に対して「加害的な力」を行使する存在として描写されることは、見る側にとっても耐えがたいほど不快に感じられ、心理的に負荷がかかるのでしょう。

氾濫する性的対象としての女性イメージ

「性的対象としての女性」のイメージには、実在する女性のみならず、いわゆる萌え絵、ゲームやマンガのキャラクター、アプリによる画像加工、AI画像など、イメージとしてのみ存在する女性像も含まれます。

スマートフォンの普及やAI技術によって、膨大な量の画像や映像を生産し、視聴する環境がもたらされました。情報環境の変化や画像技術の進歩が、性的なイメージの生産と受容のあり方をも大きく変えてきたのです。

性欲や性的な情動は極めて個人的なものです。しかしそれと同時に、「女性を性的対象として扱う態度や意識」は、集団的な振る舞いを通して、男性同士のホモソーシャルな関係の中で学習して身につけるものであり、社会的に形成される側面が強いことも事実です。

前回で紹介した「バカとエロの大縄跳び」になぞらえられていたのは、性の意識が個人的な経験としてだけではなく、男性同士で体験を示しあったり、セックスをした女性の数を競いあったりするような経験を通して表現されるものでもあるということです。その中で、女性のイメージは男性の間で共有物として扱われます。

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2025.09.06

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