医師が警鐘「1クラスに最低1人いる」認知症が心配で脳ドックを受け「脳動脈瘤を幸い発見」した人を待つ"不幸"
破裂の心配から約3割が不安障害を、2割が抑うつ状態を経験
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【関連記事】「風邪は治ったのに咳だけ続く」を放置してはいけない…つらい「咳過敏症候群」に市販の咳止め並みに効く食材 万が一を考え、脳や心臓などのドック検査を受けるべきなのか。医師の谷本哲也さんは「脳ドックを受け、脳動脈瘤が偶然発見されることもある。早期発見・治療につながるケースもあるが、いつ破裂するのかと極度の不安症状に陥ってしまうケースも少なくない」という――。
100人中約3人にある脳動脈瘤…できやすい人の共通点
脳ドックなどの検査結果説明で「脳動脈瘤があります」と医師から伝えられると、少し驚かれる方が少なくありません。普段通りの日常の中で思いがけずそんな話を聞くと、誰でも少し戸惑うのは当然です。しかし、まずは深呼吸してください。この病名は確かに恐ろしく聞こえますが、実際はみなさんが想像するほど深刻ではないケースがほとんどなのです。
脳動脈瘤とは、脳の血管の壁にできる小さな膨らみ。例えるなら、庭のホースに水圧がかかって弱い部分が膨らんだような状況です。
研究によると、健康で無症状でも100人中約3人と意外に多くの方が脳動脈瘤を持っています。学校の1クラス33人とすれば、その中に1人はいる計算。けっこうな高い数字ですが、自覚症状がなく、気づかずに平穏に生活している人がほとんど、と聞くと少し安心できるかもしれません。
発見される経緯で多いのは、MRI検査などの画像検査です。「認知症が心配で脳ドックを受けた」「慢性的な頭痛の原因を調べるため」あるいは「交通事故などで頭部の打撲後」で脳のスキャンをすると、たまたま見つかったというケースです。
脳動脈瘤のリスク要因
「なぜ自分が脳動脈瘤になったのか」と診断を受けた人はそんな思いを抱きます。
脳動脈瘤の発生には、ある程度のパターンがあります。
喫煙は、最も重要な危険因子の一つです。たばこを吸うたびに血管の壁が傷つき、脳動脈瘤ができやすい状態になります。また、高血圧も大きな要因で、血管壁に常に強い圧力がかかることで、血管が弱くなって脳動脈瘤になりやすい。過度の飲酒も血管を劣化させ、同様の症状を招く可能性が高まります。
生まれ持った体質によるリスクも無視できません。家族に脳動脈瘤や脳出血を患った人がいる場合に遺伝的にリスクが高くなるほか、稀ですが、特定の遺伝的疾患(多発性嚢胞腎、エーラス・ダンロス症候群、モヤモヤ病など)によって、動脈瘤ができやすくなってしまう方もいます。
全般的に、女性は男性の2倍発症しやすく、特に50歳を過ぎるとリスクが高まります。年齢とともにリスクは上昇し、50代から60代でピークを迎えます。
こうしたリスクがある一方、定期的な運動やコレステロールを下げるスタチン系薬剤などの服用が脳動脈瘤の予防につながる可能性があるという報告もあります。