「最後まで免許更新に行くつもりだった」膵臓がんの59歳夫と要介護4老母を同時介護する50代女性の献身
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最愛の家族が突然、病気で要介護状態になった時、どう対処すればいいのか。現在50代前半の女性は20歳の頃から母親のケアをし、仕事と介護を両立させてきた。だが、伴侶の男性ががん闘病の末、亡くなってしまう。その悲しみの中、女性は要介護4の母親の在宅介護を継続。「大切に育ててもらったからこそ、今の私がある」「介護も自分の人生の経験値の一つ」と語る胸の内とは――。(後編/全2回)
【前編のあらすじ】四国地方在住の城崎幸乃さん(仮名・50代)の父親は「ザ・昭和の男」。対して母親は芯の強い肝っ玉母さんで、父親の体罰から身を挺して子どもを守った。商業高校卒業後、城崎さんは大手製造業の一般職の事務として働き始め、5歳上のシステムエンジニアの男性と交際が始まった。だが、成人式も終え人生を歩み始めた矢先、42歳の母親は脳梗塞を起こして救急搬送。左半身が動かなくなってしまう。そのことを知った交際相手とは別れることに。その後、介護は30年以上続くことになった――。
40代での結婚
建築会社で働いていた城崎幸乃さん(仮名、現在50代、四国地方在住)は、2013年1月頃、40歳の時に知人の紹介で、機械設計の仕事をする6歳年上の会社員の男性と知り合い、交際に発展していた。
しかし、城崎さんには20年前に脳梗塞で倒れ半身不随となった母親の介護があり、また、男性も高齢の母親と同居しており、結婚するにはお互いハードルが高い状況だった。
ところが同じ年、男性の母親が心筋梗塞で救急搬送され、病院で亡くなってしまう。それから5年経った2018年。男性が51歳、城崎さんが45歳のときに2人は結婚した。
当時の母親の介護度は要介護4。自分が実家を離れることで、母親の介護度がこれ以上増すことを心配した城崎さんのために、夫は城崎さんの実家の近くに新居を借り、「仕事を辞めて、通いで介護したら?」と提案してくれた。
「若い時なら、父は誰であろうとも結婚に反対していたと思いますが、もう40代だったので反対しませんでした。妹も、私たちが実家の近くに住むことを知っていたので、特に何も言わず祝福してくれました」
結婚後も城崎さんは、毎日朝から晩まで母親のトイレまでの手引き歩行や入浴介助、家事全般を担当。週に何度かは実家に泊まってトイレ介助をして、明け方に夫と暮らす家へ帰るという生活をし始めた。