現役時代は「持ち家より賃貸」が合理的…お金のプロが指摘する「マイホーム購入の6つのリスク」
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「持ち家がいいか、それとも賃貸がいいか」は簡単に答えが出せない難問だ。ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんは「資産形成も年金も退職金も不確実な現役時代に、長期にわたる住宅ローン返済を確定させることはリスクが大きすぎる。働いている間は柔軟性の高い賃貸住まいを選ぶのが合理的だ」という――。
崩れ去った「マイホーム神話」
家を購入するとそれが資産になり、老後の安心を得られるというマイホーム神話の成立要件は、ことごとく崩壊しています。リタイア後の暮らしの安定、お金に困らない生活を重視するなら、「現役時代は賃貸」が最も合理的な選択だと考えます。
一般的には、家賃がかからない分、持ち家のほうがリタイア後の購買力が高まり、ゆとりある老後が送れると考えられています。このような考え方が定着したのは、マイホーム神話が誕生した高度経済成長期です。
ライフプランニングにおいて時代認識を間違うことは致命的なので、まずはこの点を確認しておきたいと思います。
高度経済成長期とは1955年から1973年ころまでを指します。農林水産業や自営業世帯が多数派だった時代から、企業に雇用される世帯が多数派になった時代です。地方の若者が大都市での就職を求めて大量に流入し、そのまま定住して結婚し、核家族(※1)化が進みます。
これらの人たちがこぞってマイホームを買い求めたため、住宅の供給不足が常態となり、地価は上昇していきました。
(※1)「夫婦のみの世帯」「夫婦と未婚の子のみの世帯」「ひとり親と未婚の子のみの世帯」
定年前にローン完済が普通だったが…
新たに勃興した住宅産業と、景気浮揚のための持ち家政策が相まって、人々の住宅取得を後押ししました。それを支えたのが日本型雇用慣行である終身雇用と年功序列賃金です。この時代の人々は、定年前に住宅ローンを払い終え、地価の上昇で含み益が発生したマイホームと退職金を手にしてリタイアを迎えたのです。
高度経済成長が終焉を迎えてもマイホーム神話が揺らぐことはありませんでした。1980年代後半のバブル景気による地価高騰にもかかわらず、人々はマイホームを求めて、通勤に2時間前後もかかる郊外に向かって移動していきました。
ところが、平成に入ってバブルは崩壊し、上がり続けると言われた地価も下落しました。そして、高額の住宅ローンだけが残ってしまったのです。
幸いにも、最も高い時で8%超だった住宅ローン金利(※2)が下落を続けた(この点でも現在とは大きく異なります)ため、多くの人は低い金利のローンに借り換えたり、繰上返済をするなどで完済にこぎつけます。しかし、地価が購入時の水準に戻ることはありませんでした。バブル景気前にマイホームを購入した人と、バブル景気の最中(とその余波の時期)に購入した人で明暗を分けた格好です。
(※2)住宅金融普及協会「金利について」