「GMARCH」「関関同立」というくくりが消え失せる…大学激変期に私立一貫校が有望と言える「合格実績」以外の理由

「GMARCH」「関関同立」というくくりが消え失せる…大学激変期に私立一貫校が有望と言える「合格実績」以外の理由

2024年度の大学受験生総数は約64万人だったが、18年後は40万人を大きく割り込むと見られている。塾経営者の矢野耕平さんは「今は、中学受験する際に、その学校の大学合格実績が重視されているが、今後は他の尺度がチェックされるようになる」という――。 ※本稿は、矢野耕平『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

学問の入口としての中学受験①

「学歴観」が大きく変容する⁉

「私立中高一貫校 近年のトレンド」で触れましたが、国内の少子化が進行するなか、大学は相当な危機感を抱いています。

その証拠に、2024年度の大学入学者ですが、4年制の私立大学の中でどれくらいが定員割れ(入学者総数が大学の募集する定員に満たない状態)を引き起こしているのでしょうか? 正解は59.2%です。そして、驚くべきはたったの2年前、2022年度については47.3%でしたから、大学の学生募集状況が急速に冷え込んでいることがわかります。

日本全体の18歳人口は減少傾向にあり、残念ながらこの流れはいまのところ変化する兆しはありません。このままでいくと、定員割れの状態の大学の割合が6割、7割……あるいはそれ以上になっても何ら不思議ではありません。

追い打ちをかけるようですが、ショッキングなデータをもう一つお見せしましょう。

2024年度の日本の大学定員総数は約63.6万人に対して、大学受験生総数は約64.7万人、18歳の大学進学率は約59.1%です。

そして、2024年の日本の出生数は72万人程度です。現状の大学進学率に変化がなければ、18年後の大学受験生総数は約42万人となります。そうなると、日本の大学地図が激変することが考えられます。

いまの「GMARCH(学習院大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)」だったり、「関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)」だったり、「日東駒専(日本大学・東洋大学・駒澤大学・専修大学)」だったり……そういう括りそのものが消滅する可能性だって考えられます。

わたしはこれから先、従来の日本の「学歴観」が大きく変容するのではないかと考えています。いままではどのブランドの大学(学部)に入学したか、そればかりが重んじられる傾向にありました。しかし、大多数の大学が定員割れを起こす状況下、学士そのものの価値は軽くなり、「学士」より「修士」、「修士」より「博士」という「大学院」で何を専門に研究してきたかが問われる時代が到来するかもしれないのです。

つまり、「学校歴」ではなく、字義通り「学歴」に価値が置かれるようになるということです。実際、海外に目を向けるとこういう学歴観がもはや当たり前になっています。日本は否応なしにグローバルスタンダードに近づいていくのではないでしょうか。

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立教大学モリス館(写真=phosphor/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons)

中学受験は今後緩やかな世界になる?

さて、大学の危機的な状況をお伝えしましたが、もちろん少子化が中学受験におよぼす影響が数年後にははっきりと感じられるようになるだろうと睨んでいます。

少子化とはいえ、中学受験の盛んな首都圏、とりわけ都心部ではこれまで児童数は横ばい、あるいは、やや増加傾向にありました。しかし、東京都であってもあと数年経ったら、一気に児童数が減少すると予測されています。

たとえば、2024年3月に公立小学校を卒業する東京都の児童数は約9万8000人とされています。このあと3年間の東京都の小学校卒業生数は10万人前後で推移するとされていますが、この2025年4月に東京都の公立小学校に入学する児童数は約9万2000人とされていて、さらに、今年3歳児になる東京都在住の児童数は何と約7万8000人と予測されています。

こう考えると、いまは激戦が繰り広げられている首都圏の中学入試の様相が数年後には大きく変わる、すなわち緩やかな世界になっていくのかもしれません。

加えて、先の大学入試状況の話でもわかることですが、いわゆる「大学合格実績」の価値がいま以上に低下し、中高一貫校を選定する尺度として「弱く」なることだって考えられます。

それでは、今後どういう中高一貫校が好まれるようになるのでしょうか。

先に述べた「学歴観」の変容に対応した学校ということになるのかもしれません。中高時代にわが子が何かしらの分野において専門性を持つ、その礎を構築するような試みを講じる学校が人気を博すのではないでしょうか。そして、この点では多くの私立中高一貫校がすでにさまざまな試みをおこなっているのです。

それらの一端を次に説明していきましょう。

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法政大学市ヶ谷キャンパス(写真=Unagi special/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)
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2025.04.26

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