「食事中むせる」「すぐつまづく」人は脂肪肝の疑い…肝臓外科医が40代から勧める「朝食に摂取すべき」食材の名前
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肝臓から脂肪を落とすにはどうしたらいいのか。肝臓外科医の尾形哲さんは「現代では成人の3分の1が、肝臓に5%以上の脂肪沈着が見られる病態“脂肪肝”を罹患していると推計されている。この原因は食べすぎや肥満だけではない」という――。 ※本稿は、尾形哲『肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
外見が変わらなくても「脂肪肝」は進行している
成人の約3分の1が「脂肪肝」といわれる昨今。若い頃と比べて体重が激増したとか、見た目がかなり大きくなったという変化がなくても、じわじわと肝臓に脂肪を蓄える人が増加中です。
「脂肪肝」とは、肝臓に5%以上の脂肪沈着が見られる病態のこと。脂肪肝を放置すれば、肝細胞に炎症が起こる「脂肪肝炎」を生じ、肝硬変や肝臓がんの引き金になることもあります。
しかし、残念ながら「脂肪肝」が進んでも自覚症状はほとんどなく、多くの人が見過ごしているのが現状です。
そもそも「脂肪肝は肥満の人がなる」と思われがちです。確かに、BMI25以上の肥満の人に脂肪肝が多いことは事実。肥満と指摘されている人は、脂肪肝のリスクがあることを自覚しておくべきでしょう。
一方で、BMI25未満でも、若い頃に比べて体重に大きな変化がない人でも、40歳以上の人はそれだけで脂肪肝のリスクが高いことが示されています。
なぜなら、“40代以降は勝手に筋肉量が減っていく”からです。最近つまずきやすくなった、瓶のフタが開けづらくなった、食事中にむせやすくなったという人は、筋肉が衰えているサイン。肝臓に脂肪がため込まれているかもしれません。
なぜ筋肉量が減ると肝臓が脂肪化するのか?
筋肉量が減ると、なぜ肝臓が脂肪化しやすくなるかを説明します。
食事をすると、エネルギー源である「ブドウ糖」は体の中に一定量蓄えられます。その保管場所が、「血中」と「筋肉」と「肝臓」の3つです。血中では、いわゆる「血糖」としてブドウ糖のまま存在しますが、貯めておくというよりは少量が流れているイメージです。それに対して筋肉と肝臓では、ブドウ糖を一時的に結合する「グリコーゲン」に形を変えて貯蔵しています。
ここで筋肉量が減るとどうなるでしょうか。
筋肉でのグリコーゲン貯蔵のキャパが減り、行き場を失うブドウ糖が生じます。血中に流れる糖は少量なので、その大半は肝臓で対処するしかありません。
とはいえ、肝臓でグリコーゲンを貯蔵できる量にも限界があります。ブドウ糖は、グリコーゲンでの貯蔵限度オーバーになると、インスリンというホルモンの作用で「中性脂肪」に形を変え、肝細胞に押し込むのです。これが「脂肪肝」です。本来、肝臓は脂肪を貯める場所ではないので、そこに脂肪がたまれば不具合が起きるのも当然でしょう。
筋肉量が減ると、肝臓に脂肪が増える理由はもう1つあります。
それは、“筋肉が減るとエネルギー消費が減る”ということ。体を動かすために筋肉が収縮するときには、大量のエネルギーが消費されます。事実、摂取したブドウ糖の7〜8割は筋肉で使われています。
しかしその筋肉が減れば、エネルギー消費量もダウン。エネルギーとして使われずに体にとどまるブドウ糖をどうにか保管するために肝臓に中性脂肪を増やし、「脂肪肝」がさらに進行していくわけです。