だから「のび太」はテストで0点を取り続けた…「ドラえもん」が50年前から伝えていた"ひみつ道具"の深い教え
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AIのある世界で生き残る人と、AIに淘汰される人の違いは何か。脳科学者の茂木健一郎さんは「AIはドラえもんに登場するひみつ道具だ。AIによって浮いた時間を無駄使いしていると、のび太のようにしっぺ返しを食らう」という――。 ※本稿は、茂木健一郎『脳はAIにできないことをする 5つの力で人工知能を使いこなす』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
AIと人間は「ドラえもん」と「のび太」
AIと人間については、ウサギとカメのたとえを出して説明しました。AIがカメで、人間はウサギです。
それよりももっと分かりやすい説明を思いついたので、ここでお話しすることにします。AIとは、ズバリ、「ドラえもん」です。
日本だけでなく、全世界で愛されるキャラクターとなったドラえもんをAIだと思えば、俄然、親しみも湧いてくるのではないでしょうか。「AIに対する見方が180度変わった」と言う人もいそうです。
AIがドラえもんとすれば、人間は野比のび太。こう言われて「うれしい!」と喜ぶ人は少なそうですが、実はこの両者の関係は人間とAIのかかわりを理解するうえで大いに役立つことなので、話を進めていきます。
人間はラクをしようとする生き物
改めて言うまでもなく、ドラえもんは22世紀から送られてきたネコ型ロボット。ドラえもんが住む世界では、AIは日常生活の至るところで使われているはずです。
そのドラえもんは、未来からやって来て、彼の持つポケットから取り出すさまざまな秘密道具でのび太を助けようとします。のび太はと言えば、勉強もスポーツもできないダメ小学生。一生懸命やれば、勉強もスポーツもできるようになるのかもしれませんが、「どうせうまくいかない」という負け犬根性がしみついたせいか、何ごとにも本気で取り組もうとしません。
そんなのび太にはずる賢いところがあって、宿題をやるにしても、ドラえもんにポケットから秘密道具を取り出すように懇願して、それを使おうとします。早い話が、ラクをして宿題をかたづけようとします。いかにも人間がやりそうなことです。