水田はあるのに「主食のコメ」を作らせない…「コメの値段を下げたくない」農水省がこっそり続ける減反の実態
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コメの値段が上がり続けている。その原因はどこにあるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「減反政策によって生産量が減り、コメ不足に陥っていることが根本的な原因だ。だが、江藤拓農林水産大臣は『減反は廃止されている』と堂々とウソをついている」という――。
農水省は国民をバカにしている
今回のコメ不足や備蓄米の放出についてうんざりするのは、農水省が誰でも見破られるようなウソを平気でつき、それを簡単にマスコミや専門家と言われる人たちが信じて国民に伝えることである。国会質疑でも野党から農水相が主張の誤りを指摘されて立ち往生するようなことはない。
私が同省にいた頃なら怖くてつけないようなウソがまかり通る。私が入省した当時は10年も農水省記者クラブにいた人をはじめベテラン記者が多かった。かつては「草柳大蔵」や「屋山太郎」などの諸氏もこの記者クラブにいた。
役人が生半可な知識で説明すると、質問攻めに遭い立ち往生した。今は農水省をはじめ各省の記者クラブの人たちは1~2年で異動する。現在記者クラブで緊張感を持って記者に説明する役人は少ないのではないだろうか? 批判されないことをいいことに農水省は国民をなめているとしか思えないようになった。
農水省は、スーパーからコメがなくなった昨夏以降現在まで、一貫してコメの供給が不足していることを否定している。昨年夏には「卸売業者が売り惜しんでいる」とか、「新米が供給されると下がる」と言ったコメの値段が逆に高騰すると、「24年産米は18万トンも生産が増加していて不足していない。どこかの得体のしれない流通業者が21万ものコメを投機目的で生産者から買い集めため込んでいる」と主張している。このウソは農水省自身の調査で否定された。
こうしたウソについては、〈「消えたコメ」を探しても絶対に見つからない…「コメの値段は必ず下がる」と言い続けた農水省の“壮大なウソ”〉などの記事で詳しく書いてきた。
今回は、コメ騒動が起きた根本原因である減反政策にまつわるウソについて解説したい。どうか読者の皆さんは、農水省に騙されないでほしい。