なぜドイツ人はIKEAの家具をあまり買わないのか…節約精神が浸透したドイツの家にある家具のタイプ
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安いものを買って出費を抑える、または高いものを買って長く使う。「節約術」は大きく2パターンに分かれる。ドイツ人の生き方を紹介するサンドラ・ヘフェリンさんは「ドイツ人は現実主義者が多く、節約も徹底している。親が亡くなって実家じまいをするときも、全てを捨ててしまうことはない」という――。 ※本稿はサンドラ・ヘフェリン『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)の一部を再編集したものです。
金を溶かし曾祖父から曾孫へ、ドイツの「受け継ぐ」という節約術
ダグマールさんの祖父は90代。「セーターがほつれたりしても、おじいちゃんは何でも器用に自分でなおしちゃうの。服はほとんど買わない」とのことです。
片付けと節約を徹底している祖父は、孫のダグマールさんに娘が生まれた時も、新たに「お祝いの品」を買ったりはしませんでした。なんと、自分の金の指輪を溶かし、「曽孫のために」と、ハート形のネックレスを自ら作って贈ってくれたそうです。
金を溶かすには技術も必要で、なかなか真似はできませんが、ここまで徹底していると「お見事!」と言いたくなります。節約家のドイツ人は「無闇に物を捨てずに、いい物を親から子に大切に受け継いでいく」というポジティブな例も多いのです。
両親が他界し、食器と母のレシピを思い出と共に持ち帰った
アコーディオン奏者でカメラマンのホルガーさんは、両親が健在の時に「実家の片付け」について何か言うことはありませんでした。でも、数年前に父親が死亡し、親の物を処分しなくてはならない時が来ました。
日本在住のホルガーさんは、妻とともにドイツへ。ゆっくり片付けているわけにもいかないのでいとこ夫婦の手も借り、「きっかり1カ月」と期限を決めて家の片付けに取り掛かりました。幸い、父親は書類をきれいにファイルにまとめ、大事な書類は別に金庫に保管していたため、量は多かったものの整理がしやすかったとのこと。片付けの間の4週間はまるで仕事のように、朝7時半にみんなで朝ごはん、8時半から片付けを始め、ランチ以外はずっと夜まで作業を続ける、という生活だったといいます。
ホルガーさんは「何でも捨ててしまえばいい」と考えるタイプではありません。
「物は大事です。特に親とのつながりのある物は日本に持って帰りました」
かつて家族で使っていた食器の一部はホルガーさんが日本に持ち帰り、一部は一緒に片付けをしてくれたいとこや家族、親戚へ。ホルガーさんが譲り受けてよかったと感じている物の一つが「母親の手書きの料理レシピ」。母親はドイツのヌスクーヘン(Nusskuchen)〔註:クルミなどナッツを入れたケーキ〕やグーラッシュ(Gulasch)〔註:牛肉とパプリカや玉ネギを煮込んだシチュー。トマトペーストやクミンパウダーを使う。牛肉ではなく豚肉や鶏肉のものもある〕などの詳細な手書きレシピを残しており、ホルガーさんは日本でもたまに思い出の味を再現するそうです。