「オーガニックだから安全安心」は間違っている…「農薬は体に悪い」と信じる人に決定的に欠けている視点
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安全な食べ物はどうやって選べばいいのか。科学ジャーナリストの松永和紀さんの著書『食品の「これ、買うべき?」がわかる本』(大和書房)より、オーガニック食品と完全栄養食に関する箇所を紹介する――。(第1回)
「有機農作物は無農薬だから安全安心」とは言えない
有機農業で栽培された有機(オーガニック)農産物は、農薬を使わず栽培され安全安心……。そんなセールストークがひんぱんに聞かれますが、実は間違い。
有機だからといって無農薬とは限らず、ほかの農産物に比べて安全だともみなされていません。それでは、有機農業の意義はどこにあるのでしょう。私は、「環境負荷を低減する場合がある」ということだと考えています。
日本の法律では有機農業を「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義しています。
そんな有機農業においても、自然由来の40種類あまりの農薬は使えるため、無農薬とは言い切れません。そもそも、化学合成農薬が体に悪いという前提も考えなおす必要があります。
農薬取締法などに基づいて健康影響が出ないとされる量が用いられ、残留量もわずかで、科学的に見て健康影響は考えられません。作物は栽培中や収穫後の保管中にかびが増殖し、食品にかびが作る毒性物質(かび毒)が含まれる場合があります。適切に化学合成農薬を使用したほうが、食品トータルでの安全性は高くなる、と判断する科学者が少なくありません。
また、遺伝子組換え技術や、殺菌などを目的とした放射線照射も、有機農業では利用を禁じられています。しかし、これらの技術そのものは国際的に安全性を確認され問題なし、と判断され、他の食品では利用されています。