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【小児科医監修】赤ちゃん(0歳・1歳)が受ける予防接種
定期接種、任意接種の種類や同時接種について解説
Profile
上高田ちば整形外科・小児科 副院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 こどもの心相談医
上高田ちば整形外科・小児科 副院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 こどもの心相談医
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。
子どもを感染症から守るために、予防接種は大切です。しかし全てのワクチンを把握し、赤ちゃんの体調を考慮しながらスケジュールを立てるのは忙しいママには大変なことです。0歳、1歳の年齢別、接種の時期順に一覧でご紹介。同時接種や副反応についても小児科医千葉智子先生監修のもと解説します。
予防接種とは
ママのお腹の中にいるときに、へその緒を通してママの抗体が移行してくるため、生まれてきた赤ちゃんには病気に対する抵抗力、いわゆる免疫があります。しかし一般的に生後4、5カ月を過ぎると免疫が失われていき、病気にかかりやすくなります。
赤ちゃんを感染症から守り、重症化を予防するために行うのが「予防接種」です。
定期接種と任意接種
予防接種には、定期接種と任意接種があります。
定期接種は、予防接種法で定められ、一定の条件を満たした子どもは自己負担なしで接種ができます。任意接種は、全額自己負担で接種するワクチンがほとんどです。
定期接種と任意接種の詳しい接種条件については、各自治体によって違いがあるので、それぞれお住まいの地域の役所のホームページなどで確認してください。
予防接種のスケジューリングは大変
0~1歳の赤ちゃん期に予防接種法により接種が定められている定期接種ワクチンと一般的な任意接種ワクチンを合わせると10種類を超えます。このうちのほとんどが2回、3回と複数回の接種や追加接種を推奨されています。
病気にかかりやすい時期や、高い効果が得られる年齢などを考慮して、種類によって、接種する月齢、年齢や、回数、接種間隔が決められています。
予防接種はしっかりとスケジュールを立て、決められた時期に忘れず接種することが大切です。定期接種と任意接種のワクチンを接種時期の順にみていきましょう。
0歳から接種できるワクチン
0歳児での予防接種開始が推奨されているワクチンを接種開始の順に解説します。
Hib(定期接種)
Hibワクチンは、細菌性髄膜炎を引き起こすヒブ感染症を予防するワクチンです。細菌性髄膜炎にかかると、赤ちゃんに発熱や不機嫌、哺乳不良になるなどの症状が見られたあと、ぐったりします。けいれんや意識がなくなるなどの症状がみられることもあります。
Hibワクチンは、不活化ワクチンとなり皮下注射で接種します。生後2カ月から接種でき、接種は合計4回です。4~8週間隔で3回接種する場合が多いようです。3回目の接種から7カ月~13カ月以上あけ、追加で4回目を接種することが推奨されています。
初回接種が生後2カ月~7カ月に受けられなかった場合、接種間隔や回数の条件が変わってくるので確認が必要です。
肺炎球菌(定期接種)
肺炎球菌は、細菌性髄膜炎の原因となる細菌です。細菌性髄膜炎にかかると、発熱や不機嫌になるといった症状が現れたあとに、ぐったりする、けいれん、意識がなくなるなどの症状がみられます。初期症状が風邪に似ているため、早期発見が難しいです。
肺炎球菌のワクチンは、不活化ワクチンになり皮下注射で接種します。
接種回数は合計4回で、生後2カ月から接種ができます。4週間隔で3回接種するのが標準です。
3回目の接種から、90日以上の期間12~15カ月間をあけて1歳を迎えてから追加で4回目を接種するのが一般的です。
肺炎球菌ワクチンも、初回の接種の月齢や年齢によって接種の間隔や回数が変わってくるので注意が必要です。
B型肝炎(定期接種)
幼少期の子どもが感染すると、ウイルスを体内に保有したしているが症状は出ない「キャリア」の状態になりやすいといわれています。その後、慢性肝炎から肝硬変や肝臓がんに至ることもありますし、急性肝炎から劇症肝炎を起こし、死に至るケースもあります。
急性B型肝炎の症状は、「全身倦怠感」「食欲不振」「嘔吐」「褐色尿」「黄疸」などが特徴です。B型肝炎ワクチンは、不活化ワクチンで皮下注射で接種します。
接種回数は合計3回で、生後すぐでも接種が可能ですが、生後2カ月頃から生後9カ月までに接種するのが標準のようです。
1回目と2回目の接種は、27日以上の間隔をあけます。1回目の接種から139日以上(約5カ月)の間隔をあけて、3回目の接種をします。
ロタウイルス(任意接種)
ロタウイルス感染症を予防するワクチンです。ロタウイルスにかかると、「嘔吐」「下痢」などの症状をきたします。重症化すると、脱水症に至ったり、脳炎による痙攣をきたしたりすることもあります。ロタウイルス感染症の発症と重症化を防ぐためのワクチンです。
ロタウイルスワクチンは、生ワクチンで、経口(口から飲むタイプ)ワクチンを使用し、生後6週から接種が可能です。初回接種は、生後14週6日(3カ月半)までに済ませなければなりません。生後2カ月にHib、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎との同時接種がおすすめです。
ワクチンの種類で2回接種か3回接種が変わってくるので注意しましょう。
四種混合(DPT-IPV)(定期接種)
四種混合(DPT-IPV)ワクチンは、「ジフテリア」「百日せき」「破傷風」「ポリオ」を予防するワクチンです。
「ジフテリア」は、発熱や嘔吐、咳などの症状に始まり、首が大きく腫れるのが特徴の病気です。
「百日せき」は、初めは風邪のような症状がみられ、咳の症状がどんどん強くなったあと、短い咳が連続的に起こり、痰も出る、長期間呼吸器系の症状に悩まされる病気です。
「破傷風」は、傷から感染し、口があきづらい、首筋が張り、体が痛いなどの症状が見られます。
「ポリオ」は、症状が出ないことが多いですが、なかには、発熱、頭痛、のどの痛み、嘔吐、倦怠感、下肢の痛み、首の硬直などの症状があらわれることもあります。小児麻痺の原因ウイルスとして有名です。
四種混合(DPT-IPV)ワクチンの接種回数は、合計で4回。1回目の接種は、生後3カ月から可能です。
四種混合(DPT-IPV)ワクチンは不活化ワクチンです。3~8週間隔で3回続けて接種し、3回目の接種から、6カ月から1年後(1歳から1歳6カ月)の間に4回目を接種するのが一般的です。
BCG(定期接種)
BCGは、結核を予防するワクチンです。結核にかかると、「2週間以上続く咳」「血痰」「発熱」「体重が減る」「だるさが続く」などの症状が見られます。
BCGは、生ワクチンでスタンプ方式で接種が行われ、生後11カ月までに1回接種します。生後5カ月から8カ月での接種が推奨されています。1歳を過ぎると助成が効かなくなる自治体が多いので早めに打つように心がけましょう。
1歳以降に接種開始が推奨されるワクチン
1歳児で予防接種開始が勧められているワクチンを、接種開始の時期順に解説します。
麻しん風しん混合(MR)ワクチン(定期接種)
麻しん風しん混合(MR)ワクチンは、麻しん、風しんを予防するワクチンです。
麻しん(はしか)の症状は、「発熱」「発疹」「結膜炎症状」など「咳」「倦怠感」「結膜炎症状」「発疹」です。感染して約10日の潜伏期後に、症状が出てきます。発熱3~4日目から体に赤い発疹が出て、口の中に麻しん特有の「コプリック斑」と呼ばれる白いブツブツがみられますことがあります。高熱は7~10日間くらい続きます。乳幼児がかかると、「下痢」や「腹痛」を伴うことも少なくありません。
風しん(三日ばしか)は「発疹」「発熱」「首や耳の後ろのリンパ節が腫れる」などの症状が出る感染症です。
麻しん風しん混合(MR)は、生ワクチンになり皮下注射で接種します。1歳以上2歳未満の1期に、1回、小学校就学前の4月から3月31日までの1年間の2期に1回の合計2回接種します。1歳の誕生日を迎えたらすぐに接種するのがお勧めです。
水痘(定期接種)
水痘(水疱瘡)の主な症状は、「38℃前後の発熱」「赤い発疹」「発疹が水疱になる」です。水疱は全身にできるのが特徴で、のちにかゆみのある水疱に変わります。水痘ワクチンは、生ワクチンになり皮下注射で接種します。
接種回数は合計2回で、生後12カ月から生後36カ月(1歳から3歳)が対象になります。1回目から半年から1年あけて2回目を接種するのがお勧めです。
おたふくかぜ(任意接種)
おたふくかぜの正式名称は、「流行性耳下腺炎」と言います。ムンプスウイルスの感染により発症すると、おたふくかぜにかかると、頬やあごの下が腫れ、痛みを伴います。
おたふくかぜワクチンは、1歳から接種可能で、生ワクチンになり皮下注射で接種します。1回目の接種から2~6年で2回目を接種できますが、未就学児の年長の年齢に接種するケースが多いようです。2回接種をすると、しっかり免疫がつくとされています。
おたふくかぜワクチンは1歳を迎えたら、麻しん、風しん(MR)や水痘ワクチンとの同時接種が推奨されています。
日本脳炎(定期接種)
感染した豚の吸血をした蚊が人を吸血することにより感染します。発症率は少ないのですが、脳炎になると、「発熱」「頭痛」「嘔吐」などの症状が見られ、けいれんや意識障害がおこり、知的障がいや運動障がいなどの後遺症が残ることもあります。
日本脳炎のワクチンの推奨接種開始年齢は3歳です。生後6か月から受けることができますので、かかりつけ医と開始時期の相談をするとよいでしょう。
初回接種をした後、6~28日までの間隔をおいて2回目を接種し、2回目の接種から大体1年後に1回追加接種するのが一般的です。その後、9~10歳までの2期に1回接種します。
インフルエンザ(任意接種)
インフルエンザワクチンは、任意接種ですが、一部で小学生以下の子どもや赤ちゃんには助成金が出るところもあります。子どもには2回接種が推奨されていて、不活化ワクチンのため皮下注射で接種します。
1回目の接種と2回目の接種の間を2~4週間あけるのが一般的ですが、免疫効果を長期化させるために3~4週間あけて接種する場合もあるようです。
生後6カ月からの接種が可能ですが、乳児へのワクチンの効果ははっきりと証明されていなく、発症予防というより重症化症状を抑える役割が強いです。
同時接種とは?
赤ちゃん期に接種が定められているワクチンは何種類もあります。赤ちゃんの体調のよいときを狙って、予防接種の期間に何度も病院に行くのは大変ですよね。
種類が多いため、行政から届く予防接種のお知らせなどでは2種類以上のワクチンを同じ日に接種する「同時接種」が推奨されているでしょう。同時接種による安全性と効果は証明されていますが、同時接種の副反応が気になる場合には、どの組み合わせで同時接種をしてよいか、かかりつけ医と相談するとよいでしょう。
予防接種後の副反応と過ごし方
予防接種後の副反応が気になるママもいるでしょう。予防接種後の副反応と注意点についてご紹介します。
副反応とは
薬を飲んだときに、薬の効果以外の症状が出ることを薬の「副作用」といいます。ワクチンを接種したあとに、何かしら反応が出る場合は、ワクチンの「副反応」といいます。
予防接種の副反応では、「発熱」や「接種部位が赤みや腫れ、しこりのように硬くなる」などの症状が特に多く見られます。
特に、接種直後に起こりうる「全身が腫れる」「けいれん」「呼吸困難」などのアナフィラキシーの症状は、すぐに対処が必要なため、ワクチン接種直後は、医療機関にとどまり、よく様子をみることが必要です。
ほとんどの副反応は、2~3日で落ち着くことがほとんどですが、「熱が続く」「高熱」などの症状があらわれた場合には、すぐに受診しましょう。
ワクチン接種後は安静に
予防接種後に普段と変わった症状(副反応)が出たときには、すぐに病院でみてもらえるように予防接種を受けたあと30分程度は、受けた医療機関の近くにいるほうがよいでしょう。また、予防接種後にお風呂に入るのは問題ないですが、注射を打った箇所をこすったり、もんだり、ゴシゴシ洗うことは控え、安静を心がけましょう。
定期接種の予防接種予診票
定期接種の予防接種予診票は自治体から事前に届きます。任意接種のワクチンの場合は医療機関で予防接種を患者側が申し込む形になります。
予防接種申込書が届く時期
予防接種の予診票は、生後2カ月のワクチンデビュー前には各家庭に郵送で届くことがほとんどです。
転居して住所が変更になった場合は、接種票は使用できません。新しい住所の役所や保健所で、以前の居住先での予防接種歴を確認してもらい、新しい接種票を発行してもらいましょう。
予防接種予診票を紛失したとき
予防接種予診票をなくしてしまったときには、再交付の手続きが必要です。該当の地域の役所や保健所に予め連絡し、母子手帳など子どもの年齢とワクチンの接種歴が分かるものを持っていくと、再交付してもらえるでしょう。
再交付は無料ですが、予防接種予診票が届いたら時期を逃さず接種するためにもしっかり管理しておくことが必要です。
予防接種の予診票が届いたら
予約が必要なワクチンや同時接種で進めなければならない予防接種もあるので、スケジュールを含め、医師に相談するとよいでしょう。
時期を逃さず予防接種を受けよう
予防接種の種類は数多く、接種時期や接種回数など全て把握するのは大変ですよね。赤ちゃんや子どもの体調や予定を加味して予防接種のスケジュールを立てるのは大変です。しかし、予防接種は赤ちゃんを重症化しやすい病気から守るためにとても重要です。
予防接種には、予防接種法によって接種が定められている定期接種ワクチンと任意で接種する任意接種があり、ワクチンによって、0歳から接種できるものと1歳以降に接種が推奨させられているものがあります。
時期をしっかりと把握し、同時接種をしながら、それぞれの予防接種を受けるのに最もよいタイミングを逃さずに接種することが大切です。
予防接種で大切な子どもを病気から守りましょう。
監修:千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)
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千葉智子
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。