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乳幼児のインフルエンザ。ワクチン接種の効果やコロナウイルスとの区別はどうするか
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医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
毎年、流行するインフルエンザ。今年はコロナウイルスとの同時流行も懸念されます。乳幼児のいる家庭では、流行時期や予防接種を受けるタイミング、ワクチンの効果が気になる方もいるでしょう。乳幼児のインフルエンザ対策として流行時期、コロナウイルスとインフルエンザの判断基準、ワクチンの効果について解説します。
今年のインフルエンザの流行傾向
子どもが感染してしまわないか、親から子へうつしてしまわないか、毎年寒い時期が近づくと心配になるインフルエンザ。今年の流行傾向や厚生労働省の見解についてご紹介します。
例年11月下旬から流行、今年の感染者数は減少傾向か?
インフルエンザは一般的に、空気が乾燥し、寒くなる11月下旬~12月上旬にかけて流行り始め、年末年始頃になるとさらに感染者は増え、1月下旬~2月上旬に流行のピークを迎えます。
今年は全国の医療機関から収集した発生状況をみると、10月23日までの1週間インフルエンザにかかった患者数は、20人。新型コロナウイルス対策で外出・移動自粛や手洗い、マスク着用の習慣が広がり、今年は感染者数が増加しない可能性も考えられます。
一方、予防接種の希望者数は増える見込み
厚生労働省では今年、新型コロナウイルスの影響で、インフルエンザ予防接種の希望者数が増える可能性があるという見解を明らかにしています。
そのための対策として、高齢者や重い持病のある方をのぞき、2020年10月26日以降に接種するよう呼びかけています。それに対し世間ではさまざまな意見が上がっています。
重症化しやすいリスクのある乳幼児については、例外が適用される場合もあります。自治体によって対応は異なるため、不安な点がある場合は、各地域の保健センターやかかりつけの医院へ早めに相談することが大切です。
コロナかインフル、迷ったら自己判断しない
もし、重い風邪のような症状が子どもに出た場合、新型コロナウイルスやインフルエンザ、どちらかに感染したのか判断に迷うことも。インフルエンザと新型コロナウィルス、それぞれの判断基準について解説します。
インフルエンザは突発的な症状が現れる
インフルエンザの主な特徴は、38℃以上の発熱、頭痛、全身倦怠感、関節痛といった症状が、急に現れるという点です。それとあわせて、咳や鼻水といった一般的な風邪の諸症状も見られます。
病院でインフルエンザか否か検査してもらう際は、ある程度のウイルスの量が必要になるため、発症後12時間〜48時間以内に検査をすることが推奨されています。
また、体内のインフルエンザウイルスは、症状が出てから48~72時間後に最も数が多くなります。ウイルスの増殖を妨いで重症化しないように使用する抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に服用すると、効果が期待できるため、受診は症状が出てから48時間以内がポイントになります。
インフルエンザになると、稀に急性脳症や肺炎などへ重症化してしまうケースもあります。普通の風邪とは違うということを意識し、特に免疫力が低い乳幼児の子どもや高齢者の方の場合は注意しましょう。
コロナウィルス感染症は相談目安を確認
新型コロナウイルスに感染している可能性が考えられるとき、以下のいずれかに該当する場合には、すぐに相談する必要があります。
・息苦しさや強い倦怠感がある
・38℃以上の高熱が出ている
・重症化しやすい呼吸器疾患や糖尿病などの基礎疾患があり、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある
・上記以外で、咳、37.5℃以上の発熱といった軽い風邪症状が4日以上続いている
乳幼児については、小児科医による診察が望ましく、各都道府県が設置している新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センターや、かかりつけ小児医療機関に電話などでも相談することができます。
小児は、中国やアメリカでも0.1~2%と報告があるように、ほとんどコロナにかからないというデータがあるだけでなく、コロナと診断されても無症状、もしくは軽度の風邪症状が多いと考えられています。そのため、医療機関毎によって考え方は異なりますが、発熱→かかりつけ医を受診、もしくはPCR検査できる施設へ紹介→陰性、重症でなければかかりつけ医でフォローという流れになるでしょう。
厚生労働省の発表によると、検査によっては鼻からの1度の採取で新型コロナウイルスとインフルエンザを同時に検査できるキットもあるようです。インフルエンザの方がコロナよりも感染能力が高く、小児に関しては重症になりやすい可能性が高いため、無理に自己判断はせずに、強い症状がみられる場合にはすぐに相談しましょう。
ワクチン効果はおよそ3~6カ月間
予防接種は、打てば必ず感染しないというものではなく、一定の割合で発病を予防したり、発病後の重症化を予防することを目的としています。
効き目は個人差があり、ワクチンに含まれる型と違う型のインフルエンザにかかった場合は、効果が下がることも。また、ワクチン接種の効果は、自然に感染した後に接種した方が抗体ができやすいため、乳幼児は大人と比べて効果は低くなるとされています。
厚生労働省の資料によると、乳幼児に対する国内のインフエルエンザワクチンの有効性は、20~60%という結果が出ています。13歳未満の子どもは2~4週開けて2回目の接種を行うことでより効果が高くなるといわれています。
ワクチンの効果があった場合に、その効き目が継続する期間は、接種後2週間から接種後およそ3~6カ月間と考えられています。接種して1~2週間後に抗体が上昇し、1カ月後にはピークに。3~4カ月後には少しずつ減少していきます。
インフルエンザの予防接種は、そのシーズンに流行予測されたウイルスを用いて製造されています。昨年接種したからといって、今年は不要というものではありません。できるだけ毎年、接種するようにしましょう。
ワクチン接種を希望する場合は早めに予約を
今年はコロナウイルスの流行に伴い、インフルエンザのワクチンを早い段階から接種したいと希望する方が増えています。
乳幼児(生後6 ヶ月以上)~小学校低学年(2年生)の場合は、10月26日(月)から接種が可能になるため、早めに予約をとりましょう。(医療機関によっては10月1日から接種を開始しているため、各々の受診予定の医療機関のHPなどを確認して下さい。)
乳幼児の子どもをインフルエンザの感染から守るためには、ワクチン接種に加え、家族など周囲の大人たちが予防を徹底することも重要です。子どもの免疫力が低下しないよう、食事や睡眠にも気を配り、日頃から免疫力を高める意識を持ちましょう。
監修:保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
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保科しほ
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。