子育て×脳科学④ 地頭の良さやIQの高さは育むことができる【てぃ先生×瀧教授】
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子育てや教育テーマをお届けする動画記事コンテンツKIDSNA TALK。第5弾は、現役保育士のてぃ先生と脳科学者である瀧 靖之教授、KIDSNA編集長・加藤による対談が実現!今回は、「天才」「IQが高い」「地頭が良い」といわれる人の脳のしくみと変化についてお話を伺いました。また今、注目の「リビング学習」の効果を脳科学の視点から語っていただいています。
「脳を診れば人となりがわかるか」ですが、これは深い質問です。
例えば、一人一人の脳の画像を診て「あなたはこれに向いている」ということは、100%まったくありません。
顔に目や鼻などのパーツがあるように、脳も「ここに溝がある、ここには膨らみがある」といった大きな構造は共通していますが、細かい構造は人によって違います。つまり、個人差が大変あります。
ですから、「脳を診れば人となりがわかる」ということはありません。
よく昔は、「頭が良い人は脳のしわが多い」と言っていましたが、そんなことはありますか?
親に結構言われましたよね。「おまえ一本もシワがないだろう」とかね。笑
私も、子どもの頃はその言葉を普通に信じていましたが、そんなことはないです。
ツルツルということはないんですね。
ただ、一方で個人ではなく、群として比較すると色々な事が見えてきます。
例えば、楽器を弾く人の脳と弾かない人の脳を見ると、明らかに差があります。画像解析をすると、楽器を弾く人は脳の右と左をつなぐネットワークとか、運動をつなぐネットワークが発達していることがわかります。
つまり、経験を積むことで脳は特化して発達していきます。最初から特化して生まれてくることは少ないです。その点から考えても、「脳の特徴は、後天的なもの」です。
もちろん体格などの先天的な要因も多少はありますが、多くが後天的なものです。だから、勉強も運動も、芸術的才能もほとんどが後天的に培われたものです。
いわゆる「天才」「IQが高い」と呼ばれる人に脳の特徴はありますか?
「天才」の定義も難しいのですが、いわゆる「IQが高い人」を集めて研究をすると、通常、脳の発達は枝(シナプス)をたくさんはってその後、刈り込みをするのですが、IQの高い人は一気に枝(シナプス)を広げて、刈り込みを行うなどの差があると言います。
また、その他にも様々な研究があるのですが、覚えたことを別の形でアウトプットする「ワーキングメモリ」というテストが得意であるとも言われています。
「ギフテッド」(生まれつき突出した才能を授かった人という意味)というのはどうですか?
能力に関しては比較的一緒なのですが、先天的に脳のエフォート(活かし方)が違い、集中しやすいなどの個性があります。そういう方は「ギフテッド」として見られやすいと思います。
但し、「IQは生まれ持ったもの」と言われた時期が長かったのですが、脳には可塑性がありますから「後天的に変化もする」と言われています。
そういう意味では、「天才」の脳には明確なものがないというのが正しいと思います。
だから、「こういう脳に生まれてきたから、こうなんだ」ではなく、「こういうことをやってきたからこういう脳になった」というのが正しい言い方です。
しかも同じ人でも数年後には脳が違ってくるんですよね。
逆に脳が変化しない、ってよくないんですね。
その通りです。日々、脳も変わっていきます。そして使っていくことで、強化されていき不要なことは脳から削られていきます。
天才こそ遺伝かと思っていました。
いえ、環境要因もありますが、「天才こそが努力」です。
アインシュタインも、物理が好きで取り組んでいたことで結果として天才と呼ばれるようになったといいますよね。
これは私も気になっていることなんですが、「地頭が良い」というのは脳科学的にいうと、どういうことでしょうか。
「地頭」という言葉の定義が難しいのですが、私が見ている中で「地頭が良い人」というのは、好奇心が旺盛な人だと思います。
好奇心が旺盛だといろんなことにトライするので、コミュニケーション能力が高く柔軟な考えもできます。だから、結果的に重要な位置についています。
つまり、「地頭良い」と言っても生まれ持ったものではなく、子どものうちにできることと違うと思います。
そういう定義なら私は、地頭がいいや。 冗談ですけどね。笑
コミュニケーションをとることはとても頭を使うことです。だから、てぃ先生のように「コミュニケーション能力が高い人」は、常に頭の中で考えながら発言しているので、これこそ「地頭が良い」ということだと思います。
また、コミュニケーション能力が低いからといって「地頭が悪い」わけではなく、機会を増やせばいいだけです。そして、慣れていくことで、コミュニケーションも円滑にできるようになるわけですから、「地頭が良い=慣れ」とも言えます。
その慣れを作るために「好奇心旺盛で努力をすれば、自分も地頭が良くなれる」という考えを持つことが大事です。
そういう意味では、子どものうちにしか「発達できない脳の領域」はありますか?
これには二つの言い方があって、脳は3歳〜5歳なら「運動野」と呼ばれる領域が発達のピークを迎えます。
一方で、脳には可塑性があるので、子どものときだけに発達する脳の領域というのはありません。
しかし、自分と外世界の区別がつくようになる2歳〜3歳くらいには「好奇心」を促し、3〜5歳には「運動やスポーツ」「楽器演奏」などをさせることが、脳には効率がいいということはあります。
但し、そのときにやっていなかったからダメということではまったくありません。3歳ですぐに達成できることが、10歳からやるとちょっと努力が必要になるというだけです。
また、50歳になるともうちょっと努力が必要になりますが、ある程度のところまでは達成可能です。だからこの時期じゃなければダメ、ということはまったくありません。ただ、始める時点での効率の良さは多少あります。
やっておいた方がいいことはあるけれど、やっておかないとダメなことはないんですね。
子ども部屋はきれいなことよりも散らかっている方がアイディアが生まれるとかイメージが広がりやすいとかいいますが、どうですか?
つまり、整理整頓されていると何も生まれないが、ちょっと散らかっている方がいいと。
頭が良いと言われている人で私は両方見てきました。ただ、そこで言えることは、片付けが苦手な人はいろんなことに興味を持ってやるので、結果としてそうなっているということではないでしょうか。
つまり、散らかっていることで能力が伸びるのではなく、個人の特性として片づけることがちょっと苦手。しかし片付けの能力とは異なる場所で力を発揮される方が多いので、「散らかっている方がアイディアが生まれる」と言われる可能性が高い気がします。
メディアが大学教授にインタビューに行くと、たいてい部屋が汚いじゃないですか。だから「頭がいい人は汚いのかな」と思いました。
両方です。すごく整った教授室もあります。笑
結局、人それぞれなんですね。
その意味では、「子どもがご飯を食べながらテレビを見る」ことははよくないと言いますが、脳科学的にはどうなんでしょうか。
私たちが注意を向けることのできるリソースは限られています。だから音楽を聞きながら勉強するとか、テレビを見ながら何かすることで集中力が削がれることになります。
ただ、目的が何かということが大切です。「リラックスをしたい」「何か情報を得たい」などあって、行うのであればそれは否定することではないと思います。
ただ、食事の時間が家族のコミュニケーションの場である場合には、テレビをつけているとリソースをすべて取られてしまうのでよくないと思います。
また、今リビングで勉強することが主流になっている気がします。それは脳科学的にどうですか?
私はリビングで勉強する利点を2点、あげています。
ひとつは、「効率性」です。私たちは、ひとつのことが終わってから次のことに向けて動くとき、感情の切り替えに時間がかかります。この時間をリビングで勉強することでその無駄な時間が限りなくゼロになります。実際、私も息子もリビングで勉強や作業をしています。
もうひとつが、「どんな環境でも勉強ができる強じんな精神が養える」ということです。テレビがついても勉強に集中できるようになります。
この2つの理由から、私は個人的にリビングで勉強することを大変おすすめしています。もちろん、個室で勉強することを否定はしません。ですが、リビング勉強をやって悪いことは少なくともないと思います。
もちろん、お客さんがきたときに片づけないといけないことがありますが、一人でポツンとやる強じんな精神も大事ですが、子どもはそこまでできないので、リビングでの学習はとてもいいと思います。
リビングで勉強をしていると、自分が一生懸命やっていることを親が見てくれている、という安心もありますし、「今日もやっているね、偉いね」って言ってもらえると嬉しい気持ちになりますよね。
私は勉強も究極のコミュニケーションツールだと思っています。だからリビングで行っているとコミュニケーションが生まれます。
親の勉強に対する理解も深まりそうですね。
リビングで見ていることでやっていることもわかるし、「こういうところで悩んでいるんだ」ってことも見えてすごくいいですよね。何より、瀧教授がお子さんと一緒にリビングで作業をされていると聞いて、私も真似をしようと思いました。
次回のKIDSNATALKは3/2更新予定!お楽しみに!
16万人の脳を診てきた瀧先生にお聞きします。職業や得意領域によって脳の特徴は違うのでしょうか? また、その脳の特徴は後天的なものでしょうか?