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【天才の育て方】#02 牛田智大〜史上最年少ピアニストができるまで〜[後編]
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KIDSNA編集部の連載企画『天才の育て方』。#02は12歳でプロデビューを果たした史上最年少のピアニスト、牛田智大にインタビュー。後編では、ピアノへかける熱い思いから、ピアノを弾き続けさらに上を目指してゆく理由を紐解いていく。
ピアノに一生をかける理由
18年間、ピアノと共に生き、ピアノに没頭し続けられている理由とはどのようなものなのか、その思いに迫る。
変化する感覚が楽しい
ーーピアノを軸とした生活を続けていて、楽しいと感じられる瞬間は?
「常に、感性や好みが変わっていく自分を楽しんでいます。
小学生の頃はどちらかというとアグレッシブでエンターテインメント的な演奏が好きだったのですが、最近は派手でなくてもしっかり音楽と向き合い誠実に弾きたいと思うようになりました」
ーー毎日同じことを繰り返し続けてゆくためのモチベーションはどのように維持しているのでしょうか?
「理想とする演奏のイメージを持って『もっとこう弾きたい、もっとこう表現したい』という思いを持ち続けています。
音楽や絵画などの芸術はそれぞれの人が違う解釈や目標を持って、理想とする演奏や描き方を追いかけているのだと思います。時間の経過とともにその理想は変化するから、どこまでやったら正解とか完成するといったゴールもありません」
ゴールはなく、理想を追うことでさらなる理想を抱くようになる。だからこそ彼は、ピアノに魅了され続けているのかもしれない。
5年が勝負
「今がすごく大事な時期だと考えています。特に技術的、体力的な面、レパートリー作りにおいてこの5年で培ったものが一生に活きていくと思っているので、毎日ひとつづつ、同じことを丁寧に積み重ねています。それ以外は、学校に行くかピアノを弾くか、猫と遊ぶか眠るか、という生活ですね(笑)」
ーー「5年」がひとつの区切りなんですね。
「曲を仕上げるスパンというのは数カ月でできるものではなく、5年弾き続けてやっと自信を持って弾ける状態になると感じています。
なぜかというと、多くの作曲家は、30~40分の曲を5年や6年の年月をかけて作り上げています。それならば演奏家も同じくらいの時間とエネルギーをかけて曲に向き合わなければならない。時間をかけられればそれだけ、その曲の本当の意味や素晴らしさが理解できるようになると考えています」
ーー堂々と弾かれている印象でしたが、ご自身では「まだまだ」と思われているんですね。
「ピアノは同時にいろいろな音色を出すことができるので、他の楽器の作品に比べ音の数が必然的に多くなります。さらには、すべての音色に意味がある。それを理解し表現するためには、音の数が多ければ多いほど練習が必要になるので、自信を持って演奏できるようになるまでには時間がかかります」
天才ピアニストにきく、「天才」とは
コンサートやコンクールにおいては100%準備をしたつもりでいても、その力を出し切れない場合も多いという。それでも世界的コンクールで1位を受賞してきた彼は、やはり「天才ピアニスト」と思わずにはいられない。
本人は自分自身をどのように捉えているのだろうか。
牛田智大はなぜ天才なのか
ーーなぜ天才ピアニストになれたのか、ご自身ではどのように考えられていますか?
「僕は天才ではないです。だからこそ、天才と呼ばれる音楽家が残してきたものを学びたいと思いますし、天才ではないからこそ、天才にしか理解できないものを、聴き手の方々と同じ立場に立って理解していけると思っています」
天才が思う天才の人とは
ーー牛田さんが思う「天才」のイメージを教えてください。
「天才と聞くと、生まれつき何でもできて早熟といったイメージを僕自身は持っているのですが、天才と呼ばれる人の努力や意欲と、両親や先生など周りの人たちの協力などの条件が揃い、かつ運が良かった人が最終的に天才と呼ばれるのだと思います。
周りが協力してくれる、周りが引っ張ってくれるというのも、才能であり天才のひとつの定義だと思います」
編集後記
天才ピアニストとしての洗練された印象を持っていたが、実際に会って話をしてみると、 ピアノに対する熱い情熱の中にもシャイな部分を持ち合わせた、気取りのない青年だった。
<牛田智大コンサート情報>
『牛田智大ピアノ・リサイタル』
2019年3月21日(木・祝) 13:30開演/横浜みなとみらいホール
お問い合わせ先:ジャパン・アーツぴあ 03-5774-3040
KIDSNA編集部