6秒の「魔法の言葉」が子どもの心を守る!児童精神科看護師・こど看が解説

6秒の「魔法の言葉」が子どもの心を守る!児童精神科看護師・こど看が解説

育児や教育、夫婦関係にまつわる話題の最新書籍をKIDSNA STYLE編集部がピックアップする企画。今回は、『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)をご紹介します。「児童精神科の病棟看護師」として、児童精神科に入院する子どもたちと長年接してきた著者が、「壊れやすい子どもの心を守る。さらには親の心も守る」をテーマにした一冊です。後編では、保護者が子どもを傷つけないために気を付けたいポイント、そしてSOSに気づく方法を抜粋してご紹介します。

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▽▼▽記事前編はこちら▽▼▽

子どもの「イヤだ」「死にたい」は本心ではない?言葉の裏にある心理を精神科看護師・こど看が解説

子どもへのイライラがおさまる魔法の言葉

この仕事をしていると、よく「子どもにイライラすることってあるんですか?」と聞かれるのですが、私はその都度「3兆回くらいあります」と答えています。

朝の準備や夕飯づくりなどの忙しい時間に限って何度も話しかけてきたり、明日提出する保護者用のプリントを寝る直前に出してきたり、スマホばかり見て話をぜんぜん聞いていなかったり……。私も神様ではないので、こんな場面に出くわすともなれなくイライラしてしまいます。

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※写真はイメージ(iStock.com/takasuu)

そんな私が言うのもなんですが、イライラはけっして悪い感情ではありません。というのも、そもそも感情に「よい」「悪い」という区別はないからです。

ただし、不機嫌やイライラを怒りとして子どもに向けてしまうと、子どもが大人の顔色をうかがって行動するようになるなど、悪い影響を与えてしまうのは間違いありません。その上、自身が子どもに怒りを向けた自分を責めることにもなりかねません。そうならないためにも、子どもにイライラした場面で手軽に行えるイライラへの対処法を紹介します。

例えば、仕事から帰って夕食を用意し、子どもに夕食ができていることを伝えたとします。しかし、子どもはゲームに熱中していて、まったく耳を貸してくれません。このような状況でイライラをおさめて冷静になるには、まず物理的に距離を取ることです。子どもがゲームに熱中している姿を見ることでイライラしているので、イライラの対象である子どもが見えないところまで移動するのです。可能であれば、別の部屋に移った方がより効果的でしょう。

そしてここからが重要なステップです。子どもの姿が見えなくなったタイミングで、「心は鬼にしても、言葉は鬼にしない」と心の中で3回唱えてみてください。「なにそれ?」と思われるかもしれませんが、結構真面目に言っています。この「心は鬼にしても、言葉は鬼にしない」という言葉は、1回唱えるのに約2秒かかります。つまり、3回唱えると大体6秒以上は経過しているということになります。

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『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』89pより

この「たった6秒」が大切なのです。6秒であっても、「心は鬼にしても、言葉は鬼にしない」と唱えることで、強制的に自分の気持ちに意識を向けることができます。その結果、一時的ではありますが、子どもと精神的な距離を取ることができ、怒りが頂点に達しにくくなるのです。

この方法がどの状況でも必ず効果を発揮するとは言い切れませんが、私の経験上、子どもと衝突する回数は確実に減らせると実感しています。

言葉を鬼にして子どもとかかわると、子どもが萎縮してしまい、子どもの心に大きな傷を負わせてしまうかもしれません。「あのとき、あんな言葉を言ってしまった」と後悔して自分を責める結果にならないためにも、言葉を鬼にして子どもにぶつけることを避けられる、この方法をぜひ試してみてください。唱えるのに6秒かかる言葉であればほかの言葉でもかまいません。言葉を鬼にしたところで、残るのは大きな後悔と子どもとのぎくしゃくした関係だけなのですから。

子どもからのSOSに早く気付く方法

子どもは基本的に自分からSOSを出すことが難しいので、子どもの心を守るためには、大人から子どものSOSに気づき、声かけなどのアクションを起こすことは非常に重要です。

子どもからのSOSサインに気づくためには、日頃から子どもとかかわっている大人の、「いつもと違うな」という違和感が手がかりになります。

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『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』123pより

上記の図では、子どものSOSサインとして、「増える」「減る」「強くなる」「弱くなる」の4つのカテゴリーに分け、具体的にどのようなサインがあるのかを記載しています。

ただし、これらSOSのサインを知っているだけでは、子どものSOSに気づくことはできません。なぜなら、「SOSのサインを知っていること」と、「SOSに気づくこと」の間には、想像以上に深い溝があるからです。みなさんに知っておいてほしいことは、どうやって子どものSOSに気づくのかという考え方です。

今回示したSOS集は、具体例の先頭に「いつもより」をつけて考えることで、初めて意味を持ちます。「いつもより食事量が減っている」「いつもよりドアを閉める力が強くなっている」というように、子どもの様子を見て「やっぱりいつもと違うかも」と思ったのであれば、子どもがピンチな状態になっている可能性があるということです。

つまり、子どものいつもの状態を把握し、「いつもの状態との差」を利用することで、子どものSOSに気づくという方法です。子どものいつもの状態を知らないのであれば、「いつもの状態との差」を利用することができないので、子どものSOSに気づくことは難しいと言えるでしょう。

ここで私が言いたいのは、子どものSOSに気づくために、保護者のみなさんはもちろんのこと、子どもとかかわる方、子どもの支援者のみなさんにも、子どものいつもの状態を知っておいてほしいということです。

また、次の表にあるSOSのサインに該当していないからといって、「うちの子は大丈夫」と安心してはいけません。ここに挙げているのは、私の経験から得たほんの一例にすぎず、みなさんが普段かかわっているお子さんの状態を見てつくられたものではないからです。あくまでこの表は参考程度にしていただき、まずはお子さんの「いつもの状態」を知ることに注力しつつ、「いつもと違うな」と感じたときの違和感を大事にしていただきたいと願っています。

子どものSOSに早く気づくためには、子どもがどのような一日を過ごしているのかを、意識的に知っていく必要があります。日常生活の中でまずおさえておきたいポイントとしては、「食事」「睡眠」「清潔状態」「余暇の過ごし方」などです。これらに関する子どもの「いつもの状態」を知っているだけでも、子どものSOSに気づきやすくなります。

そして、SOSに気づいたら、声をかけ、ていねいに話を聞いてほしいと思います。

2023.12.08

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