味方であるはずの夫婦がなぜ「対話」につまづき「対立」してしまう?あつたゆか『共働きのすごい対話術』

味方であるはずの夫婦がなぜ「対話」につまづき「対立」してしまう?あつたゆか『共働きのすごい対話術』

2022.12.22

KIDSNA STYLE編集部が選んだ、育児や教育、夫婦関係にまつわる話題の最新書籍を紹介する企画。今回は、あつたゆか『仕事も家庭もうまくいく! 共働きのすごい対話術』(クロスメディア・パブリッシング)をご紹介。パートナーシップの専門家が、夫婦ふたりの理想を叶える対話の方法を明かす本書を一部抜粋・再構成して、二回に分けてお送りします。

 
 

「逃げ恥」が教えてくれた「対話」することの大切さ

社会現象を起こしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』をご存じですか?

このドラマで、ともに暮らすみくりさんと平匡さんは、度々「会議」を開きます。

ふたりは向かい合ってテーブルにつき、差し迫った課題について、お互いの意見や要望を伝え合っていました。

たとえば、夫の平匡さんが転職に悩む回があります。

安定しているA社か、給与はいまの半分になるが新しい挑戦のできるB社か。

家計にも影響が出るため、パートナーに反対されてモメそうな悩みです。

ここでふたりは「経営責任会議」を開き、フラットに話し合います。

 
※写真はイメージ(iStock.com/Cunaplus_M.Faba)

結果、妻のみくりさんも働くことにして、その代わりに、家事も分担することに。

お互いに納得できる結論を導いていました。

ほかにも、お互いに大変なときには外部サービスを利用したり、スキンシップが足りないと感じたら「ハグの日」を制定したりなど、お互いに意思確認をしながら解決策を導いていきました。

「夫婦とはこうあるべき」にとらわれず、お互いの気持ちを知ること、伝えることを大切にして方針を決めていたのが特徴的です。

こんなふうに、「家族の経営会議」を開いてみてほしいと思います。

多くの人が対話に苦戦する「4つの要因」

「ふたりで話し合って、お互いに納得することが大事」

ここまでの話をまとめてしまうと、こんな単純なことではあります。

でも実際には、2020年の婚姻件数52万5507組に対して、離婚件数は19万3253組と、3組に1組は離婚しているのが現状です。

また、「話し合いが難しい」「言いたいことを言えない」という悩み相談は日々寄せられています。

なぜ、身近な人との対話はこんなにも難しいのでしょうか。

そこには大きく4つの要因があると感じています。


1.義務教育で対話や家庭運営を学ぶ機会がない

いちばん大きな要因だと考えているのが、日本の教育において、議論や話し合いのしかたを学ぶ機会がないということです。

たとえカップルであれ夫婦であれ、相手と自分は違う人間です。

どんなに頑張っても、相手をコントロールすることはできません。

それなのに、「他人を変えることはできない」「相手と違う意見を持っていい」といった対人関係の原則を学校で学ぶことはなく、私たちは大人になります。

そのため、いざ恋愛や結婚となると、

「相手と違う意見を持っていると知られたらどうしよう」

「意見を否定すると、相手を否定したと捉えられそうで怖い」

と悩んでしまうのです。

ここには「みんなと同じことが正しい」という風潮の弊害が出ていると感じます。

お互いを尊重しながら価値観の違う相手とどのように対話していけばいいのか。

建設的な対話をするためのメソッドがあるにもかかわらず、義務教育で学ぶことはありません。

 
※写真はイメージ(iStock.com/itakayuki)

2.「言わなくても察してくれる」ドラマや漫画の影響

義務教育でもパートナーシップを学ぶことができず、ロールモデルも自分の両親しかいないなか、人々が強く影響を受けるのは、ドラマや漫画などで描かれるパートナーシップの形です。

ケンカして「もう嫌!」と主人公が飛び出したら、パートナーが追いかけてギュっと抱きしめてくれる。

少女漫画やドラマで、こんなシーンをよく見かけませんか?

こんなふうに、日本の漫画やドラマでは「言わなくても察してくれる」という展開が多々あります。

 
※写真はイメージ(iStock.com/ferrantraite)

そんな物語を小さい頃から見て育った私たちは、つい現実世界に対しても「言わなくてもわかってくれる」「自分が不安になっても、あの主人公みたいにケアしてくれるはず」といった過剰な期待を抱いてしまうのです。

また、そういった物語の多くは、両思いになったり結婚したりと、「結ばれる」場面で完結します。

その先にどう関係を維持していくかも大切なのに、あたかも「付き合う」「結婚」がゴールであるかのように描かれがちです。

こういったフィクションの影響も、現実のパートナーシップに影響を与えていると感じます。


3.「ジェンダーロール」を押し付ける家庭運営アドバイス

「男性はプライドが高い生き物だから、とにかく褒めておだてましょう!」

「女性から結婚の話を切り出すのはNG」

こんなアドバイスをよく見かけませんか?

性別による思考の傾向は少なからずあるかもしれませんが、「男性」「女性」とひとくくりにしていては、パートナー個人とは向き合えません。

私のもとには日々「家庭運営やパートナーシップについて学ぼうと思ったけど、ネット記事は信用できなくて、本も良いのがなくて、誰にも相談できなかった」という声がたくさん届きます。

相手を理解しようとすることを避け、事を荒立てずにその場を穏便に済ませるだけでは、根本的な解決や関係改善にはなりません。

 
※写真はイメージ(iStock.com/monzenmachi)

4.軽視されがちな家庭内の「チームビルディング」

職場と比べて、家庭のチームビルディングは軽視されがちという背景もまた、対話に苦戦する要因のひとつではないかと思います。

仕事において、取引先や同僚と円滑な人間関係を築くことが多くのメリットをもたらすことは、みなさんも想像しやすいでしょう。

職場で良いチームワークが築けていると、トラブルがあったときも同僚が助けてくれますし、良好な関係を保っていれば、仕事や情報も集まってくるでしょう。

チームワークが重要なのは、家庭も同様です。

妊活や引っ越し、転職などのプロジェクトを遂行するため、パートナーと常に情報共有をし、対話の機会を定期的に設け、良い関係を築くことは大切です。

しかし、家庭内のプロジェクトを遂行しても、仕事と違って金銭的報酬や昇進が発生しないため、軽視しがちな人が多いと感じます。

実際に、会社では定期的に会議があるのに、家庭内でそのような会議を開いて対話の機会を設けている夫婦は本当に少ないと感じます。

このように、多くの人が身近な人との対話につまづいてしまうのには、さまざまな社会的背景があります。

だから、パートナーとの関係が悪かったとしても、落ち込む必要はありません。これから変えていけばいいのです。

***

後編では、具体的なお悩みを例に挙げながら、2人が対話で問題を解決に導く方法を紹介します!


後編はこちらから!

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