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働くママの「本質美容」 「肌荒れ・くすみ・たるみ」から肌を守る、マスク対策の基本
Profile
皮膚科専門医/医学博士
皮膚科専門医/医学博士
皮膚科専門医、医学博士。アンチエイジングリサーチセンター研究員。2010年日本医科大学医学部卒業後名古屋大学皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了。同志社大学アンチエイジングセンターにて糖化と肌についての研究を行う。また、食事と健康に関してレシピや情報などを医学的な立場から発信するブランド「ドクターレシピ」を監修。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)、『おくすり朝ごはん - 皮膚科医が肌荒れしたら食べる - 』(ワニブックス)など。2016年長男、2019年次男をアメリカにて出産。
大好評につき連載延長!自身も子育て中の皮膚科専門医・小林智子先生が、忙しいママたちに贈る美容コラム連載。第5回のテーマは「コロナ禍でのマスク対策」。毎日のマスク生活で、思っているよりも肌は影響を受けているかもしれません。正しい知識を身につけ、健やかな肌を保ちましょう。
ここ1~2年、マスクによる肌トラブルで皮膚科を受診する患者さんが急増しています。
コロナ禍において、私たちの生活になくてはならなくなった「マスク」。
常時マスクをする生活にも慣れてきましたが、最近では「マスクを外したときの老け、肌荒れが気になる」と、患者さんの相談内容も少し変化しつつあります。
今回はそんなマスク対策をテーマにお話ししたいと思います。
マスクによる「皮脂の増加」「乾燥」「摩擦」で肌環境が変化
そもそも、マスクの着用によってなぜニキビや湿疹などの肌荒れを起こすのか。それはマスクによって肌環境が変化するためです。
まず、マスクによって皮脂の分泌量が増加します。これはマスク内の温度が関係してきます。
温度が1℃上がると皮脂の分泌量はおよそ10%程度増加するという報告もあり、一般的にマスクを着用することで「オイリー」な状態になりやすくなります。
皮脂の増加はメイクのよれやニキビの原因にもなってしまいます。
マスクの着脱も肌に負担を与えます。外すことでマスク内にこもっていた水分が一気に蒸発するため、肌の水分量もそれに伴い低下してしまいます。
さらに、マスクの着脱やサイズの合っていないマスクを着用することで、肌に摩擦が生まれます。
このような皮脂の増加や水分量の変化、摩擦は肌のバリア機能を低下させてしまいます。バリア機能が低下すると肌が敏感になりやすく、湿疹に発展したり、ニキビができたりとさまざまな肌トラブルを引き起こしてしまうわけです。
マスクをしていてもバリア機能を高めるにはどんなことに気をつけたらいいかと言うと、まずはご自分の顔のサイズに合ったマスクを選ぶ、ということです。
マスクは大きすぎても小さすぎても、口の動きなどによって摩擦を生み出します。
ちょうどいいマスクのサイズはこちらのサイト(一般社団法人 日本衛生材料工業連合会)が参考になります。
小さなお子さんの場合も同様です。
スキンケアは「摩擦レス洗顔」と、「バリア機能の修復」「抗炎症作用」のある保湿アイテムを選ぶ
スキンケアでは、「優しい洗顔」と「適切な保湿」がポイントとなってきます。
洗顔は、とにかく必要以上の摩擦を作らないように、しっかりと泡立てること。
そして保湿は、もし皮脂やニキビが気になるという方は「ノンコメドジェニック」とパッケージに表記された保湿アイテムを使うほうが無難です。
一方、セラミド、ヘパリン類似物質、ナイアシンアミドといった成分は、バリア機能を修復してくれる効果があるためマスクトラブルには非常に相性のいい成分です。
このような成分や、抗炎症成分が配合されている保湿アイテムはおすすめです。
肝斑にはセルフケアより受診を
他に、最近よく聞かれるマスクの肌悩みは「肝斑」と「たるみ」です。
肝斑というのは左右対称性に淡い茶色のぼんやりとしたくすみとして認めるシミのひとつで、さまざまな原因によって悪化するのが特徴です。
そのひとつに「摩擦」が関係していると言われます。もしマスクによって頬がくすんできたら、それは「マスク肝斑」かもしれません。
そのようなケースでは、まずは摩擦を減らすような適切なマスクサイズ、スキンケアを指導しますが、治療としては他にトラネキサム酸と呼ばれる内服薬や、ハイドロキノンという美白剤が処方されるケースもあります。
肝斑は厄介なシミで、治療も一筋縄にはいきません。あれやこれやとやみくもにご自分でケアするよりも、早いタイミングで一度皮膚科にて診断を受けることが大切です。
たるみケアのキーワードは「表情筋」と「生活習慣の見直し」
次に「たるみ」です。たるみ、というのは一般的に重力によって組織が下垂した状態のことを言います。
顔の中でも重力の影響を受けやすいのは下半分です。つまり、元々たるみはマスクを着用する顔の下半分にできやすいと言えます。
その代表的なサインとしてはほうれい線やマリオネットラインと呼ばれる口角から下に伸びる線、フェイスラインのもたつきなどがあります。
このたるみをマスクがさらに助長させてしまっている可能性があります。
その原因が「マスクによる無表情」です。筋肉は皮膚の下に存在していて複雑な表情を作ったり、咀嚼したりする際に重要な働きを担います。
その中でも特に口の周りにある「口輪筋」や「大頬骨筋」、「小頬骨筋」が顔の下半分のたるみやもたつきに関係しています。
これらの筋肉は口角を上げてニコッと笑顔を作るときに特に使われる筋肉ですが、マスク生活によって無表情の状態が続くとこれらの筋肉が使われなくなり、筋肉量が減り、結果的に皮膚が余ってたるみにつながります。
それだけでなく、口角を上げる筋肉量が減ると、相対的に口角を下方に引っ張る筋肉(これを下制筋と言います)が強くなり、フェイスラインのもたつきをもたらしてしまいます。
そのためこれらの表情筋を意識的に使うことが大切です。表情筋を鍛えるのに効果があると言われているのが「舌回し運動」です。舌を口の中でできるだけ大きく回すだけですが、たるみ予防に効果的です。
よく、「たるみにはマッサージを」と雑誌などで特集されることがありますが、マッサージはあくまでリンパや血液の流れを改善する目的として行います。
つまり、マッサージだけせっせと行っていてもたるみは進行してしまうのです。
たるみ防止にも、生活習慣の見直しが重要
たるみを悪化させないために他にも必要なことがあります。それは生活習慣の見直しです。
お話したように、たるみは皮膚より深部の骨、筋肉といった組織の変化も関係してくるため、これらのエイジングケアにはバランスの取れた食事、適度な運動など生活習慣が大切になってくるわけです。
特に身体をこまめに動かすことが重要です。
これまでマスクによって特に肌トラブルを認めていなくても、マスクとこれからもつき合っていくであろう以上、肝斑やたるみなどの予期せぬ肌悩みを引き起こす可能性はあります。
いつマスクを外しても問題がないように、日頃から正しいケアを行っていきましょう。
Profile
小林智子
皮膚科専門医、医学博士。アンチエイジングリサーチセンター研究員。2010年日本医科大学医学部卒業後名古屋大学皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了。同志社大学アンチエイジングセンターにて糖化と肌についての研究を行う。また、食事と健康に関してレシピや情報などを医学的な立場から発信するブランド「ドクターレシピ」を監修。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)、『おくすり朝ごはん - 皮膚科医が肌荒れしたら食べる - 』(ワニブックス)など。2016年長男、2019年次男をアメリカにて出産。
2022.04.01